今知っておきたい、IoT(モノのインターネット)について

ロボット掃除機のアプリ制御、ウェアラブルを使ったスポーツのトラッキング、SiriやAlexaなどの音声アシスタントを介した音楽再生。モノのインターネット (IoT) はすでに日常生活やさまざまな領域の一部になっています。しかし、IoTの理論と現実はどのようなものなのでしょうか。メリットと課題は何でしょうか。1990年にオフィスのトースターから始まったとはどういうことなのでしょうか。

IoTと共の毎日

毎朝、指定した時刻にシャッターが開き、自動で洗面所に暖房のスイッチが入ります。コーヒーメーカーはすでに1杯目を準備し始めています。出勤するときは自動で車庫のドアが開き、車が出ると施錠します。警報システムも自動でオンになります。職場に向かって走行していると、コネクテッド カーが渋滞情報を受信し、新しい経路を提案します。会社に到着すると、生産設備が受注システムや物流システムと直接通信して、その情報を基に製品が生産されます。このように接続されたスマートなデバイスや機械は、すべてモノのインターネット、略してIoTの一部なのです。

IoTの定義: モノのインターネットとは

モノのインターネット (IoT) とは物理的なモノと仮想的な世界を結びつけるものです。インテリジェントなデバイスと機械は互いにつながり、インターネットにデジタルで接続しています。テクノロジーの働きにより、周辺環境の関連情報を収集、分析、紐づけします。その情報を基に、デバイスが所定のタスクを実行するのです。たとえば、センサーが屋外の気温を計測し、そのセンサーを装備したスマートデバイスがそれに反応して暖房の温度を上げます。すべてが自動で行われるので、ユーザーは何もする必要がありません。ユーザーが望むなら、スマートフォンのアプリなどでIoTデバイスを遠隔操作することもできます。

これを実現しているのはマイクロ コントローラ、センサー、アクチュエータなどの接続されたコンポーネントの相互連携です。これらのコンポーネントは電気信号を圧力、動作、温度、その他の機械的パラメータに変換します。IoTシステムは複雑です。個々のデバイス、データベース、ゲートウェイが組み合わされており、それらは複数のネットワークを結びつけています。さらに、大半は無線インタフェースを通じてインターネットに接続されており、データを送信する一方でコマンドを受信します。送受信中はバックグラウンドでセキュリティ ソリューションが機密データを保護し、セキュリティを確保しています。

インフィニオンはテクノロジー パートナーとして、産業やデバイスメーカーなど、各分野にカスタマイズしたIoTソリューションを提供しています。

感知: センサーが環境からさまざまな情報を収集し、その情報はデジタル データに変換されます。
コンピューティング: デジタル データはマイクロコントローラによって処理され、その結果を基にコントロール信号が生成されます。
作動: アクチュエータがコントロール信号を理解し、それを基に作動します。
接続: 接続コンポーネントがIoTデバイス間、クラウド システムを接続します。
セキュリティ: セキュリティ コンポーネントが機密データを不正なアクセスから保護し、セキュリティを確保します。

IoTにおいてセンサーが重要な理由

IoTにおいてセンサーが重要な理由

人間は五感を使って環境を認識できますが、同じことを機械がするには複数のセンサーが必要です。センサーは人間の感覚器官の働きをするからこそ、モノのインターネット全体にデータを供給するという重要な役割を担っているのです。センサーと一口に言ってもさまざまな種類があります。その検知対象は温度、湿度、動作、光、機械的な圧力、CO2濃度、超音波、気圧など多岐にわたります。モノに取り付けられたセンサーが環境の状態を計測し、収集されたデータをシステム内のマイクロコントローラが処理します。処理されたデータはネットワークを介してソフトウェアに送られます。センサーをBluetooth経由でスマートフォン アプリにペアリングすれば、ユーザーがアプリからデータを確認できます。あるいは、その情報をインターネット経由でクラウド プラットフォームに送り、そこで分析することも可能です。たとえば、スマート ホームの場合、外が暗くなってきたという情報がセンサーから送られてきたら、シャッターが閉じられます。産業の場合、スマート工場で加熱バルブや冷却バルブを正確に制御するために温度センサーが使われます。部屋やホールがどの程度暑いか、寒いかを計測し、その結果に応じてバルブが自動的に動作するようになっているのです。

1990年から始まったIoTの進化-すべての発端はトースター

IoTは2000年代に技術インフラとして出現しました。もちろん、それ以前にも状態に関する情報を無線で送信できる生活用品は存在していました。たとえば、1982年、米国のピッツバーグでコンピューター サイエンスの学生が自動販売機内の在庫レベルをモニタリングすることに成功しました。これはインターネットの先駆けといえます。World Wide Web黎明期の1990年にはネットに接続された家電製品が初めて登場しました。ウェブサイトが誕生する1991年より前の出来事です。米国のソフトウェア/ネットワーク専門家ジョン ロムキーと、オーストラリアのコンピュータサイエンス学者サイモン ハケットが、会議中にトースターをインターネットに接続し、オンラインでスイッチをオン/オフしました。今では、このトースターが史上初のIoT機器であるとみなされています。

「IoT」は、英国の研究者ケビン アシュトン氏が1991年に作った言葉です。アシュトン氏は、マサチューセッツ工科大学のセンサー/識別技術の専門家で、パッシブ型のRFIDタグを説明するのにこの言葉を使いました。RFID (無線周波数識別装置) とは機器が非接触方式で無線ラベル (タグ) のデータを読み書きできる技術のことです。この場合も、狭い範囲であるものの、物理的なモノが仮想世界につながっています。それから少し経った2000年には電子機器メーカーのLG社が、インターネット冷蔵庫というコンセプトを発表しました。冷蔵庫内のチーズ、バター、卵がなくなると、所有者に通知するしくみです。

その後、ネット接続は大幅に発展しました。ネットワーク専門企業Cisco社のホワイト ペーパー「How the Next Evolution of the Internet Is Changing Everything (インターネットの次の進化がすべてを変える)」によると、2008年の時点ですでにインターネットに接続されたデバイス数が世界人口を超えました。その中にはスマートフォンやコンピュータだけでなく、あらゆる種類のモノが含まれています。今後、デバイスのスマート化はさらに進むでしょう。2025年には世界で約750億個の機器がインターネットに接続されると予想されています。

IoTのメリットとアプリケーション分野

IoTはすでに私たちの生活に深く根付いています。今や、インテリジェントな「スマート デバイス」は住宅や工場、自動車、医療施設、都市の至るところで見られるようになりました。それも当然です。なぜなら、IoTを使うことには多くのメリットがあるからです。IoTは日常生活の利便性を高め、時間とコストの削減によって生産プロセスを向上し、効率化を通じて電力とエネルギーの消費を抑え、同時に環境の保護に役立ちます。スマート デバイスは交通流の最適化や巨大都市における生活の簡素化にも役立っています。ここで、IoTのアプリケーション分野を5つ紹介しましょう。

インダストリー4.0におけるIoT

インダストリー4.0とは第四次産業革命のことです。蒸気エンジン (インダストリー1.0)、電気エネルギー (インダストリー2.0)、生産のコンピューター化 (インダストリー3.0) の後、機械、製品、工場がスマートにつながった時代にあたります。バリューチェーン全体がデジタル化され、効率化とスマート化が進みました。そのため、産業界では産業用モノのインターネット (IIoT) と呼ばれています。たとえば、大規模に自動化されたプロセスでは製品が機器と通信して、製品自体が次の生産工程をスタートさせることができます。故障が発生すれば、機械が自動で認識し、保守作業のリクエストを出します。製造ロボットや運搬車両は自動的に倉庫内物流システムと情報をやり取りします。その結果、効率だけでなく作業員の安全性も向上します。フォークリフトや機械がセンサーを備えていれば、周辺環境を認識して、事故が発生する前に停止することができます。データの収集と分析を行うようになった結果、まったく新しいサービスやビジネス分野も登場しています。同様に、企業はモノのインターネットを使用して製品ポートフォリオの柔軟性を高め、新しいサービスを提供することができるようになりました。

インダストリー4.0の接続されたインフラではプロセスの計画が容易になり、製品の生産スピードが上がります。その結果、時間と在庫コストの節減につながりますが、それに伴うデジタル化とテクノロジーで電力コストも上昇します。VDI社が実施した調査「Ressourceneffizienz durch Industrie 4.0 (インダストリー4.0による資源効率化)」ではデジタル化によってリソースの効率は上がっているという見方をしています。IoTソリューションはリソースの効率的な消費を実現し、エネルギー効率の高いコンポーネントは持続可能性に寄与、すなわち環境への影響を低減します。もう1つ、生産における持続可能性を高める可能性を秘めているのが未来の高速モバイル ネットワーク、5Gです。なぜなら、トランスミッタが受信デバイスを探し、必要な時のみ送信するからです。接続は不要になると解除されます。

スマート ホームにおけるIoT

今やスマート ホームの時代です。夜になると照明のスイッチが自動的にオン/オフし、スマート電気メーターが消費電力を記録して調節します。スマートホームではコーヒーメーカー、洗濯機、冷蔵庫、サーモスタット、照明スイッチなどの生活用品がネットに接続されます。さまざまな機器がハブまたはゲートウェイと呼ばれる中央制御ユニットで連結され、さらにインターネットに接続されています。スマートホームにおけるIoTデバイスは利便性とエネルギー効率だけでなく、セキュリティも向上させます。たとえば、ネットに接続された監視カメラや煙探知器は、ユーザーのモバイル機器に自動で情報を送信し、さらに必要があれば、緊急サービスに直接通報します。また、ユーザーがデジタル アシスタントに音声で指示して、照明や音楽をコントロールしたり、天気予報やニュースを流したり、オンラインで商品を注文したりすることもできます。

eヘルスにおけるIoT

モノのインターネットは医療にも変化をもたらしました。フィットネス リストバンド、スマートウォッチ、フィットネス トラッカーなどのウェアラブル機器は、身体に装着して、脈拍や血圧などの健康データを記録できます。そのデータはアプリで分析して、わかりやすい図表やグラフィックで表示することも可能です。eヘルス分野ではペースメーカーや血糖値モニターのように、すでに利用されているスマート医療機器もあります。問題を検出すると、直ちにユーザーや緊急サービスに警報を発します。このように、eヘルス機器のおかげで高齢者や患者は自宅で安全な生活を送ることができます。また、患者が薬を服用したかどうかを確認するスマートピルボックスや、人が転倒したことを検出する転倒検出センサーを備えたカーペットも使用されています。コネクテッド医療機器は病院でも使われつつあります。たとえば、スマートベッドから収集した病床使用率が試験結果や各種機器の計測値と組み合わされ、自動的かつ一元的に記録されています。

スマートカーにおけるIoT-コネクテッド カー

自動車でもスマート化は進んでいます。スマートカーに搭載されているコントロール ユニットや、レーダー センサーをはじめとする半導体部品が速度や距離を計測し、その情報が対象物や歩行者にどれだけ接近しているのかを判定するのに使われます。EUでは2018年4月以降、事故発生後に自動で組込みSIMカードを通じて救助を要請することができる緊急通報システム「eCall」の搭載がすべての新車に義務付けられています。コネクテッド カーは、WiFiやモバイル通信経由でも接続されており、たとえば運転者に交通渋滞の通知を行います。自動車のソフトウェアはインターネット接続やOTA (Over-The-Air) アップデートを通じてすばやく管理されるので、自動車を整備工場に持って行く必要がありません。

また、将来のコネクテッド カー自動運転になるでしょう。そのためにはIoTコンポーネントとして、さまざまなセンサーが必要になります。障害物を識別する超音波センサー、他の道路利用者を検出してその速度と位置を計測するレーダー センサー、追加情報を提供するビデオ センサーなどです。コネクテッド カーでは特に安全性の向上が重視されています。ボッシュ社の調査「Connected Car Effect 2025 (2025年におけるコネクテッド カーによる影響)」によると、ドイツ、米国、中国だけでも26万件の負傷事故が安全システムとクラウド ベースの機能で防げるとしています。

スマート シティにおけるIoT

現代は「都市の時代」です。ドイツ連邦経済協力・開発省によると、世界人口の50%が都市で生活しています。しかもその傾向は強まりつつあり、2050年には都市で生活する人の割合が80%にまで上昇すると推測されています。人口1,000万人以上の巨大都市の数も増えています。一方で、開発によってインフラや大気汚染の問題も生じるでしょう。人々の生活の質を上げるためには今後の都市や巨大都市の持続可能性と安全性を高めなくてはなりません。「スマート シティ」というバズワードにはコネクテッド技術によってそれをサポートしようとするアイデアや概念が含まれています。この技術は、エネルギー、モビリティ、都市計画、行政、通信など、さまざまな分野から生まれています。こうしたアイデアや概念の例を4つ紹介しましょう。

• 消防車やバスが近づくと必要な車線で青に切り替える信号
• 必要に応じて自動的にオン/オフし、内蔵カメラで安全性が向上する街灯
• 公共交通機関、水道、下水、リサイクルシステムのインフラを制御するデジタル システム
• 時間と紙の節約になるオンライン行政サービス

産業におけるIoTデバイスの相互通信

モノのインターネットで産業プロセスを自動化するにはデバイス同士が人間の介入なしで通信できなくてはなりません。マシン ツー マシン (M2M) インフラによって、自動車、システム、機械、自動販売機コンテナ、電気/ガス/水道メーター、ロボットが相互に、あるいはコントロールセンターとの間で、情報を交換できるようになります。M2Mでは同時に1つのデータエンドポイント (DEP) が必要であり、デバイスや機械がその役割を担います。また、通信ネットワークとデータ インテグレーション ポイント (DIP) となるもの、たとえばサーバーも必要です。実際の例を示しましょう。工場では製品が生産され、数量や原料のデータがWi-Fi経由でサーバーに送られます。サーバーは機械にメンテナンスや原料の追加が必要かどうかをリモートで監視します。デバイスにはセンサーだけでなく、通信用トランスミッタが備わっており、それを使って携帯回線、Wi-Fi、固定回線、Bluetooth、衛星無線、RFIDなどの通信ネットワークを通じてデータが送信されます。受信するのはサーバーなどのコントロール センターです。そこで情報が収集、処理され、結果に応じて措置が取られます。

ロボットによるモノのインターネット (IoRT)

IIoT (産業用モノのインターネット) に続いて、IoRT (ロボットによるモノのインターネット) という言葉も次第に定着しつつあります。IoRT とはIoTの拡張版で、テクノロジーの応用によって独力で認識、連動能力を持ったロボットが含まれます。IoRTは次世代のロボット工学とされています。デジタル ネットワークの中で、ロボットは相互に通信、学習します。特筆すべきはロボットが自発的に相互学習する能力を持っており、人間があらゆる想定シナリオを前もってプログラムする必要がない点です。

 

医療分野のモノのインターネット (IoMT)

医療分野のモノのインターネット (IoMT) とは患者や医療従事者を含め、医療分野のシステムやサービスをスマートに接続することを指し、今後大きな成長が見込まれる分野の1つです。医療技術企業にとっては、そこで生成される膨大なデータの分析が医療におけるコスト削減や連携強化の機会になります。コロナ禍の影響で特に成長した分野があります。それはテレメディスンとテレヘルスの2つです。コロナ禍に伴う規制の影響で、予約をオンラインで行い、ビデオ チャットで診断するケースが増えています。この傾向は今後も強まり、コロナ禍収束後も勢いを増していくでしょう。たとえば、アプリを通じた学習コンテンツを活用した、場所にとらわれないオンライン セラピーも普及すると思われます。こうした医療の主なメリットとしては柔軟性の高さ、オンライン ツールを通じた予約の容易さ、関係者全員の時間節約が挙げられます。

IoTの課題

IoTのメリットは枚挙にいとまがありません。IoTのスマート デバイスは日常生活を便利にしてくれます。利便性、コミュニケーション、生活の質、ビジネスの効率を高める機会と可能性を広げているのです。一方で、デジタル時代のデータ セキュリティなど、見過ごしてはならない数々の課題もあります。

ビッグデータとIoTにおけるセキュリティ

世界で収集されているデータの量は、飛躍的に増加しています。市場調査会社のIDCによれば、2016年には16.1ゼタバイトでしたが、2025年には10倍の163ゼタバイトになると予測されています。ウェアラブル機器やスマート スピーカーなどの個人デバイスに加え、産業用のIoTデバイスもこの上昇傾向に貢献しています。こうしたデバイスは膨大な量のデータを収集しています。その結果、データ保護やデータ セキュリティの課題も発生しています。なお、データ セキュリティとはデータへの不正アクセスの防止、データ保護とはプライバシーの保護を指します。

基本的に、データはIoTの基盤です。日常生活をスマートにするために、データの評価と分析は欠かせません。しかし、デバイスがインターネットに接続されると、攻撃に対する脆弱性も発生します。サイバー犯罪者が制御権を奪い、データを盗んだり工場の生産を妨害したりする可能性があります。2015年には侵入の容易さを示すことを目的に、2人の攻撃者がコネクテッドカーのインフォテインメントシステムに侵入し、エンジンを切ったり、ラジオをつけたりしました。最悪の場合、犯罪者が地域や国全体のインフラを麻痺させることも考えられます。実際、2016年末にリベリアでインターネットが利用できなくなる事態が発生しました。報道によると、ハッカーが何百万ものIoTデバイスを接続してボットネットを形成し、分散型サービス妨害 (DDoS) 攻撃を実行したとのことです。「DDoS」攻撃とは多数のデバイスから標的のサーバーにリクエストを一斉送信させ、サーバーに過剰な負荷をかけて応答不能にさせる攻撃のことです。監視カメラの制御を奪ってユーザーをひそかに監視したり、データ送信を停止したりする攻撃もあります。スマート ホームで使われるウェアラブル機器やスマート スピーカーなどのIoTデバイスは標準的なセキュリティ基準が存在しないために保護が不十分な場合が多いのが実情です。もし犯罪者がスマート マシンを麻痺させ、機密データを盗めば、インダストリー4.0における企業は生産停止に追い込まれる恐れがあります。

 

データ保護についても、データの処理方法と保管先に関する新たな課題が生まれています。たとえば、フィットネス トラッカーのメーカーが収集した情報を基に正確なユーザー プロファイルを作成し、他のデータに紐づけたとします。産業におけるオペレーションでも同様ですが、こうした情報は不正アクセスから確実に保護しなくてはなりません。さもなければデータが盗まれるだけでなく、一般ユーザーや特定の従業員へのなりすまし、銀行口座やメールへの不正アクセスが発生するリスクもあります。

そうした攻撃はどうすれば防げるのでしょうか。まずはデバイスとサーバー間の通信をセキュアにすることが不可欠です。セキュリティ認証による信頼性の高いアクセス管理、および通信データの暗号化も効果的です。データ盗難、詐欺、改ざん、その他の攻撃を確実に防ぐにはスマート デバイス、コネクテッド カー、インダストリー4.0システムを保護する必要があるのです。

互換性の問題と高まる一方の性能向上ニーズ

IoTデバイス メーカーが抱えるもう1つの課題はデバイスやプラットフォームに依存しないアプリケーションの開発です。最近のセンサー、プラットフォーム、OSが動作するのは特定のシステム上に限定されています。従って、デバイスを構成する個々の部品に対する要件が統一されていません。理想的には複数プラットフォームに対応したハードウェアとソフトウェアのソリューションがあり、同時に特定用途のソフトウェアもあればよいのですが実情は異なります。デバイスに対する要求水準も高まっており、メーカーにとって新たな課題となっています。センサーや半導体には高性能化、スマート化、高セキュリティ、低遅延や環境負荷と消費電力の低減、小型化、目立たないデザインなども求められています。

持続可能性に寄与するIoT

IoTは個人の生活においても産業においてもデジタル化、簡素化、プロセスの効率化などさまざまな機会を提供してくれます。生産コスト削減などの経済的なメリットに加え、特に産業界ではより持続可能で環境に優しい未来をもたらす大きな可能性を秘めています。世界経済フォーラムの調査によると、IoTソリューションの84%は国連の持続可能性目標に寄与する可能性を持っています。

1. 原材料とリソースの使用量の削減
私たちにとって身近な日常生活の例で説明すると、デジタル プロセスとシステム連携によって紙の消費量を減らすことができます。かつてはすべてのドキュメントを印刷してフォルダに分類、保存していましたが、サーバーとクラウド システムの登場でそのスペースを他のものに使えるようになりました。もちろんIoTソリューションのデジタル プロセスによって完全なクライメイト ニュートラル(気候中立)が実現するわけではありません。しかしそこで発生する排出量を補うためにグリーン エネルギーや気候中立ビジネスを重視する企業が増えています。

2. IoTによるエネルギー効率化
スマート ビルやスマート ホームに共通するのはエネルギー消費量を測定し、節減できそうな要素を特定してエネルギー コストを削減できる点です。たとえば、照明の自動点灯/消灯、開いている窓の検知、アプリを通じたシステムの常時監視/制御が可能です。同様に、エネルギー産業におけるIoTアプリケーションはエネルギー効率の鍵を握っています。特に、インフィニオンの半導体ソリューションはさまざまな分野でエネルギー効率に寄与しています。効率化の範囲はエネルギーの生成、運搬、貯蔵、消費のすべてに及んでいます。グリーン エネルギーの実現におけるインフィニオンの貢献については「Energy efficiency – Making green energy happen (省エネ - グリーン エネルギーの実現)」をご覧ください。

IoT: インフィニオンの貢献

IoTにおいてはネットワーク化されたデバイスがスマートでエネルギー効率が高く、セキュアであることが非常に重要です。それが実現できたのはインフィニオンをはじめとする半導体企業が開拓し、開発し続けてきた技術があるからです。たとえば、センサーは周辺環境から重要なデータを収集するというIoTの根幹を成しています。パワー半導体はデータを電気信号に逆変換し、マイクロコントローラはシステム全体を制御するという役割を担っています。こうしたシステムの接続性、セキュリティ、不正アクセスからの防御も高性能半導体によって実現されています。インフィニオンの製品とソリューションは世界のさまざまなIoT分野で使用されています。

• 中でもインテリジェントな都市 (スマート シティ) の業務用照明システムはインフィニオン傘下の企業が提供しているLED技術を使って動作します。
• センサーとマイクロコントローラはスマートなインフラや交通システムだけでなく、インテリジェントな家 (スマート ホーム) にも活用されています。
• インフィニオンが提供するWi-FiやBluetoothなどの無線ネットワーク技術はデバイスやシステムのスマート ネットワーク化 (スマート接続) に不可欠な要素となっています。
• インダストリー4.0 (スマート工場) では特殊なセンサー、マイクロコントローラ、パワー モジュールに加え、セキュリティ チップも産業の高い要求水準をクリアしています。こうした半導体はスマート工場内のシステムやデバイスを攻撃者から守るのに役立っています。
• インフィニオンはコネクテッド カー (スマート カー) に搭載するレーダー センサーなども提供しています。インフィニオンの半導体技術は認証や暗号データ送信の分野にも使用されています。

インフィニオンが使用している革新的な素材の中でもシリコン カーバイド (SiC) は高い負荷と電圧に耐えることができ、消費電力が低いので、持続可能性の点においても優れています。IoTにおけるインフィニオンの貢献と半導体が果たす役割について詳しくは「Unleashing the power of IoT (IoTの可能性を引き出す)」をご覧ください。

今後のIoTの展望

一点、明確に言えることがあります。それはIoTが今後も成長し続けるということです。将来は、コネクテッド カー (スマート カー) が最も早くて安全な経路を探してくれるようになります。コネクテッド街灯は、交通、安全、照明だけでなく、スマート シティーの一部として大気質に関するデータも収集するようになるでしょう。コネクテッド エアタクシーが、市内のA地点からB地点まで人を乗せて移動するようになるでしょう。IoTは組み込み型の「サービスとしてのソフトウェア (SaaS)」のような新たなビジネス モデルの登場も促します。SaaSでは広範なアプリケーション分野に完全なIoTソリューションを提供することを目指しています。同様に、Product-as-a-Service (PaaS) という、製品の遠隔利用サービスも人気が出てきています。要するにデバイスを遠隔利用できる権利を企業に貸し出すサービスです。IoTの開発はさまざまな分野で進んでいます。

  1. その一例が新しい高速モバイル ネットワーク「5G」の拡大です。5Gはデータ通信の速度と安定性を向上させます。相互接続するデバイス数とデータ量が増大するため、5Gは必須の技術になります。5Gモバイル ネットワーク規格はデータの激流に対応し、クラウドでの処理を可能にします。
  2. 今後はエッジ コンピューティングも重要性が高まるでしょう。IoTデバイスは生成したデータを直接デバイス上で処理できるようになります。たとえば、データの分析はクラウド内よりもコネクテッド カーの中のほうが速く処理できます。
  3. 人工知能 (AI) もIoTの促進に一役買っています。コンピューターとアルゴリズムは独力で問題を処理し、その能力を高めていくでしょう (機械学習)。PwC社の「Digital Product Development 2025 (2025年におけるデジタル製品開発)」によると、すでに10社に4社の割合でデジタル製品の開発にデータ分析とAIが使用されています。それを踏まえると、AIを連動させたときに初めてIoTが真価を発揮するといえるでしょう。確かに企業の間ではデータ分析を通じた製品の改善方法を習得しつつあります。しかし、機械とアルゴリズムに自動でパターン認識させることができるようになれば、その傾向はさらに強まるでしょう。

IoTの最新情報を知りたい方はIoTを話題にしたインフィニオンのポッドキャスト「#MakeIoTwork」と「IoT Newsroom (IoTニュース ルーム)」をご確認ください。インフィニオンが提供するIoTの世界についての興味深いコンテンツが満載です。

 

IoTの最重要点に関するQ&A

IoT(モノのインターネット)は、物理的なモノと仮想世界とを統合したものです。スマートなデバイスや機械が相互に接続され、またインターネットとも接続されます。センサーの助けを借りて、周囲の環境に関する情報を収集し、さらに分析し、結合して、ネットワークで利用できるようにします。デバイスは、このデータに基づいて何らかのタスクを実行します。

スマートホームの生活用品、さらには、コネクテッドカー、健康データを記録する医療機器は、モノのインターネットの一部を構成しています。IoTは、スマートシティの概念も含みます。製造設備や機械が生産および事業活動においてネットに接続されているということを表す用語が、インダストリー4.0またはインダストリアルIoT(IIoT)です。

IoTは、生産性を向上し、生活全般をより便利で効率的にすることを目的としています。コネクテッドデバイスおよび機械は、関連するデータを環境から自動的に収集し、分析します。ユーザーおよび企業は、これによって新しい情報を取得して、時間を節約し費用を削減できます。デバイスは、スマートホームで暖房や照明をオン/オフすることから、インダストリー4.0における製品をジャストインタイムで生産するに至るまで、さまざまなタスクを自動的に実行します。

デバイスや機械がインターネットに接続されると、ウェブからの攻撃を受ける可能性があります。したがって、個人ユーザーや企業は、犯罪者がデバイスの制御権を奪ってデータを盗んだり生産を妨害したりしないように、保護する必要があります。また、デバイスは、きわめて大量のデータを収集します。これを保管する際には保護が必要です。しかし、現時点では、IoTデバイスのための一貫性のあるセキュリティ規格、あるいはその互換性に関する規格がありません。センサーは、さらに強力でスマートでセキュアになると同時に、できるだけ少ないエネルギーで動作することを期待されています。

将来は、ますます多くのデバイスや機械が、ネットに接続されるようになるでしょう。次世代のモバイル通信である5G、および人工知能の進歩によって、モノのインターネットはさらに発展するでしょう。その結果として、企業は、改良された新製品を開発することができます。また、多くのユーザーの日常生活は、より便利で安全になります。

更新:2022年8月