さまざまな社会課題に直面する日本を持続可能な未来へ。
日独の専門家が脱炭素化とデジタル化を加速する知恵を提言。

2022 年 10 月 18 日、日本で2回目となる「日独オクトーバー技術交流会 2022」が在日ドイツ商工会議所の主催で開催されました。東京大学 伊藤国際学術研究センターに300名以上の来賓が集い、さらにオンラインで参加者が視聴する中、脱炭素化とデジタル化を加速する方法、持続可能な未来の実現に向けた日本のユニークなイノベーションを取り上げ、日独両国30人以上の専門家が議論を深めていきました。昨年に引き続き企画事務局を担当したインフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)が本交流会の模様をレポートします。

開催概要

■開催日時:2022年10月18日(火)12:30~18:25

■会  場:東京大学 伊藤国際学術研究センター

■主  催:在日ドイツ商工会議所

■後  援:総務省、デジタル庁、ドイツ連邦共和国大使館、トロンフォーラム、

                              一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会

■特別協力:アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社、J-Startup

■企画事務局:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社

開会の辞・来賓ご挨拶

開催に先駆け、主催である在日ドイツ商工会議所 Marcus Schürmann氏(専務理事・駐日ドイツ商工特別代表 写真:左上 ) が登壇、本交流会は日独経済関係の強化への招待状と開会の辞を述べました。

続いて来賓挨拶では、幼少期に加え外交官としてもドイツで過ごした衆議院議員の城内 実氏 (沖縄及び北方問題に関する特別委員会筆頭理事、外務委員会委員 写真:右上) がビデオメッセージを通じて、現在、世界が直面する課題はドイツと日本がリードする脱炭素化、デジタル化の進展なしには解決しないと語りました。さらに総務省の北神 裕氏 (国際戦略局 国際経済課 課長 写真:左下) が、ドイツは日本にとって頼りになるパートナーと述べ、ICT分野においては30年以上にわたり定期協議を行うなど、お互いに懐の深さを活かし、本音で語り合える関係にあると日独連携の重要性に触れました。

インフィニオンからは代表取締役社長の川崎郁也(写真:右下)が壇上に。現在の日本が直面する高齢化社会、労働力不足、自然災害の増加といった喫緊の課題の解決、持続可能な未来に向けて、すでにインフィニオンは脱炭素化、デジタル化の取り組みを強力に推進していると語りました。

ダイジェスト映像

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基調講演

基調講演では Andreas Urschitz (CMO, Infineon Technologies AG 写真:右)が登壇し、地球の脱炭素化、デジタル化は私たちの世代に課せられたチャレンジだと提言。「日本はドイツ同様に素晴らしい技術の立ち位置にあり、互いの国や企業がエコシステムとして一丸となってコラボレーションし、技術をリアルなソリューションにすることで、素晴らしい未来がつくられていくでしょう」と、喫緊の社会課題である脱炭素化、デジタル化のカギはここにあると力説しました。

続いて、渋谷区 グローバル拠点都市推進室 室長の田坂克郎氏(写真:左)が壇上に上がり、インフィニオン本社の渋谷移転を歓迎。日本最大のエコシステムを基盤に国際競争力の高いスタートアップを生み出し、育てていく渋谷区のスタートアップ政策を解説しました。

パネルディスカッション - Accelerating innovation in the Japanese market

 

パネリスト:

  • 渋谷区副区長CIO 澤田伸氏(写真:左上)
  • 株式会社NTTドコモ アライアンス推進室 室長 忍足大介氏(写真:右下)
  • 株式会社エイトノット 代表取締役 CEO / 共同創業者 木村裕人氏(写真:右上)
  • Executive Vice President Distribution and EMS, Infineon Technologies AG Pierre-Yves Ferrard (写真左下)

モデレーター:

  • NHKワールドJAPANキャスター 福島優子氏(写真:左)

 

 

 

「Accelerating innovation in the Japanese market」と題したパネルディスカッションでは、日本のイノベーションエコシステムを取り巻く現状、課題をテーマに各分野の専門家による活発なディスカッションを展開。最先端の脱炭素化、デジタル化のアプローチを具体的な事例を交え、さまざまな角度から掘り下げていきました。日本の抱えるさまざまな課題を、日本の強みであるイノベーションのタネで解決することができれば、世界に打って出ることも夢ではないと結びました。

インフィニオンの Pierre-Yves Ferrard は「国や地域に限定することなく世界中のどこでもイノベーションは起こせます。グローバルで事業を展開するインフィニオンでは、お客さまの脱炭素化、デジタル化を達成する夢を実現、アイデアを現実にするために物理の世界とデジタルの世界を結び、ハードウェアとソフトウェアの柔軟に組み合わせたソリューションを提供しています」と述べています。

日独連携に向けた取り組み紹介

渋谷区がスタートアップエコシステムのさらなる発展のために設立した「渋谷コンソーシアム~Shibuya Startup Deck(シブデック) ~」に加盟し、活動拠点を渋谷に移したインフィニオンの Andreas Urschitz から、渋谷区副区長CIO 澤田伸氏へ渋谷区との連携の証となる文書の授与式が行われました。渋谷区のグローバル化の取り組みは、ここからさらに加速していくでしょう。

パネル ディスカッション  - Making the most of the AI opportunity

 

パネリスト:

  • 将棋棋士 九段 森内俊之氏(写真:右上)
  • 東京大学 次世代知能科学研究センター 教授 松原仁氏(写真:左下)
  • 株式会社アールティ 代表取締役 中川友紀子氏(写真:右中央)
  • コネクテッドロボティクス株式会社 取締役 COO 佐藤泰樹氏(写真:右下)
  • Division President, Power & Sensor Systems, Infineon Technologies AG Adam White (写真:下中央)

モデレーター:

  • NHKワールドJAPANキャスター 福島優子氏

 

 

 

 

 

AIは人間の味方であり、便利な道具です。AIのテクノロジ―の将来像とはなにか。どのように人間社会はテクノロジーと向き合い活用すべきなのか。日本のユニークなユースケースとして「プロ棋士の棋力を高める」将棋界のAI活用事例、「人手不足などの社会課題を解決にもつながる」AI×ロボティクス向け活用事例などを紹介しつつ、さまざまな分野の専門家たちが熱い議論を交わしました。

インフィニオンの Adam White は「インフィニオンにはAIの進展、社会実装に欠かせない2つの研究開発に注力しています。まずはパワーマネジメントの技術、たとえばAIが活用されるメタバースの世界ではmいまより1,000倍のコンピューティングパワーが必要になると予測されています。そのカギを握るのがパワーマネジメントに優れた半導体です。もうひとつはセンサー技術、たとえば食品業界では品質管理などでセンサーが重要な役割を果たします。センサーから取り込んだデータをAIが分析するといった、リアルとデジタルの世界を橋渡しするためには欠かせない技術です」と語りました。

コーヒーブレイク セッション

コーヒーなどのソフトドリンク、クッキーなどの軽食が用意されたコーヒーブレイク中に2つのセッションを開催。女流棋士 四段 香川愛生氏(写真:上)によるスペシャルトーク「将棋とAI」には、森内九段も飛び入りし、将棋界の発展にAIが不可欠であることを語りました。さらにugo株式会社 ロボティクスエンジニア 樋詰剛氏(写真:下)のTech talk 「ロボティクス」では、介護施設、ビル警備などでの最新の活用例を交えたロボティクスの「いま」をわかりやすく解説しました。

パネルディスカッション - How can we accelerate decarbonization?

パネリスト:

  • ダイキン工業株式会社 グローバル調達本部 開発調達部長 飯田政和氏(写真:左上)
  • オムロンソーシアルソリューションズ株式会社 エネルギーソリューション事業本部 事業開発部 部長 大橋勝己氏(写真:上中央)
  • シャープセミコンダクターイノベーション株式会社 代表取締役社長 President & Chief Executive Officer 藤野宏晃氏(写真:右上)

ゲストコメンテーター:

  • Vice President, Device Authentication, Connected Secure Systems, Infineon Technologies AG Cristina DeLera (写真:下中央)
  • Executive Vice President, Strategy, Mergers & Acquisitions, Infineon Technologies AG Andreas Schumacher (写真:左下)

モデレーター:

  • アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社 パートナー 三ツ谷翔太氏(写真:右下)

 

 

持続可能な社会の実現に向けて、いかに脱炭素の取り組みを加速するか。炭素排出への影響が比較的大きい各分野から、日本を代表する3つの企業が誇るユニークな脱炭素ソリューションを紹介しつつ活発な議論を展開。システムと半導体の連携、住宅とクルマといった異業種の連携、そしてグローバルでの連携といった、いろいろなレイヤでのコネクトが脱炭素化では重要になるということが浮き彫りとなったセッションとなりました。

インフィニオンの Cristina DeLera は「半導体のコネクティビティにより世界の脱炭素化は加速します。たとえば、空調機がネットワークにつながることで故障を予測したメンテナンスができるようになります。これにより、エネルギー消費量の削減に加え、日本の社会課題になっている人材不足に対しても最小限の人材、稼働で効果を上げることができるようになるでしょう」と解説しました。

続いてインフィニオンの Andreas Schumacher は「私たちはグローバルな半導体サプライヤーとして、パワー半導体やコネクティビティのリーダーとして、世界で事業を展開するお客さまと一緒になって脱炭素化を推進し、グローバル経済に貢献できる力になります」と展望を語りました。

コーヒーブレイクセッション

この日2回目となるコーヒーブレイクセッションでは、イノベーションピッチと題して「あらゆる水上モビリティをロボティクスとAIで自律化する」株式会社エイトノット 代表取締役 CEO / 共同創業者 木村裕人氏、「東南アジアを中心に電気自動車の量産普及を目指す」株式会社 FOMM 代表取締役CEO 鶴巻 日出夫氏、「革新的なデジタルテクノロジーにいち早く触れ、精通する」株式会社マクニカ テクスターカンパニー 技術統括部 第1部 部長 恩賀崇氏が、それぞれの取り組みを語りました。さらにTech talkと題したセッションでは、株式会社QunaSysのCOO 松岡智代氏が量子コンピュータを活用したソフトウェア開発の最前線を解説しました。

パネルディスカッション - Challenges for a sustainable future

パネリスト:

  • 株式会社圓窓 代表取締役 / 株式会社 日立製作所 Lumada Innovation Evangelist Representative Director 澤円氏
  • ミュンヘン再保険会社日本支店 損害再保険事業部 特約再保険部 部長 兼 グリーンテックソリューションズ ビジネスディベロップメント 奈良橋はるか氏
  • 株式会社 FOMM 代表取締役CEO 鶴巻日出夫氏
  • ugo株式会社 代表取締役CEO 松井健氏(写真右上)
  • Executive Vice President and CMO Automotive, Infineon Technologies AG Peter Schaefer (写真右下)

ゲストコメンテーター:

  • 経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 総括補佐 岡本英樹氏 (写真左上)

モデレーター:

  • アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社 パートナー 三ツ谷翔太氏

 

 

脱炭素化、デジタル化を加速し、いかに持続可能な未来を創造するか。人手不足、インフラ老朽化、自然災害増加などの社会課題と向き合う日本やグローバルの現状を整理し、課題解決に向けたさまざまなイノベーションのアプローチを解説。日本の強みとなる領域、イノベーション加速に向けた課題、今後に向けたチャレンジをグローバルの各分野の専門家が展望しました。社会課題を自分事としてとらえ、国や地域を超え、業界の壁を取り除き、周囲と緊密に連携しながら推進することが脱炭素化、デジタル化といった社会課題の解決には欠かさないことが明らかになったセッションでした。

インフィニオンの Peter Schaefer は「社会課題を解決するイノベーションの実現には、中核となるシステムの信頼性を高める半導体が不可欠です。私たちインフィニオンは、安全性、可用性、堅牢性の高い価値ある製品を提供脱炭素化、デジタル化を世界に広めていこうとしています。さらに世界を取り巻く社会課題の解決には、さまざまな見解、提案をエコシステムで柔軟に受け入れるダイバシティの観点から推し進めることが大切です。インフィニオンは日本とドイツはもとより、継続してグローバル連携に取り組んでいきます」とセッションを締めくくりました。

特別講演

東洋大学 INIAD(情報連携学部)学部長の坂村健氏が登壇し、自身が代表を務める「Open Smart UR 研究会」の取り組みを解説。「ハウジング」というサービスを包括的に展開するHaaSコンセプトには、さまざまな半導体が重要な役割を担っていることを語りました。

閉会の辞

インフィニオンの最高財務責任者の高畑勲が登壇。今回取り上げたAI、量子コンピューティング、ロボット、モビリティ、そして半導体といったテクノロジーを、社会課題を解決するイノベーションにつなぐためにはクローバルなコラボレーションが必須であること、そして、インフィニオンもグローバルな半導体サプライヤーとしてイノベーションの実現、連携に貢献していく決意を表明しました。

イノベーション企業展示

■ブース:株式会社アールティ、株式会社FOMM、ugo株式会社、株式会社マクニカ、ユーシーテクノロジ株式会社

■ポスター:株式会社エイノット、株式会社QunaSys、株式会社QuantumCore、ユーシーテクノロジ株式会社、navel robotics GmbH、Robotise AG

■特別展示:公益社団法人日本将棋連盟