ISSCC 2004におけるインフィニオンの技術発表

2004/02/16 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、電子回路とシステム・オン・チップ技術に関する世界フォーラムである国際固体素子回路会議(ISSCC 2004)において、7件の論文を発表します。同 会議は2004年2月14日~19日に米国のサンフランシスコで開催されます。

  • 電子式DNAセンサ・チップ技術の進展
  • RFID技術に適用される新しい回路、システムおよびパッケージ方式:視覚的バーコードを代替するために必要な1セント・チップの実現に向けて
  • 革新的設計による超低消費電力の高速A/Dコンバータ:90nm技術で実現された最初の実用的アナログ回路
  • 有線および無線通信向けの新しいCMOS回路に関する4件の論文(低電力4チャネルADSL2+アナログフロントエンド、ADSL用の電力最適化デルタ・シグマ変調器、完全集積13GHz-PLL、新 アルゴリズムを採用した無線LAN用の高性能10ビットADC)

以下に、各論文の表題と要約をご発表します。

新しい電子式DNAセンサ・チップ
128個の検出点および付属A/D変換機能を備えた完全電子式DNAセンサ(論文788)

インフィニオンは、先に達成した128個の検出点を持つ完全電子式DNAセンサ・アレイの成果を基に、各センサ・ピクセルごとにADC(アナログ/デジタル変換)機能を備えた増強版チップを開発しました。1 6×8構成の CMOSセンサ・アレイは、ターゲット分子が存在する時に発生される微弱な電流を測定できます。これにより、生命工学や薬理研究で幅広い応用の可能性を持つ頑丈なプラットフォームが提供されます。 < /p>

インフィニオンは、DNAサンプルを検出するための完全電子式アプローチの開発を進めています。その目的は、現 在市販されている光学式システムよりも使用が容易で安価な診断用システムの基盤を創出することです。今回の設計では、128個のセンサ・ピクセルはそれぞれ、センサ電極電圧の制御回路と、セ ンサ電流を増幅して出力する回路とで構成されています。ADC回路を集積する利点として、センサ回路の応答均一性の向上、ピクセル内デジタル・データ・サンプリング、堅牢性の向上、全 センサの同時並列読み取りなどがあげられます。

超低コストのRFIDソリューション
1セントRFIDタグ実現に向けた交流動作回路と側壁電極型パッケージング(論文1068)

小売り製品のメーカーや販売業者は、バーコードをRFID方式に置き換える試みに率先して取り組んでいます。RFIDによって、究 極的に消費者サービスの向上につながる電子データ管理手法が提供されるからです。この技術が利用されるアプリケーションの数や量を増やすには、RFIDの低コスト化が鍵となります。

インフィニオンは、交流から直接給電される回路を用いた、RFIDチップ設計の新しいアプローチを発表します。この方法は、大きなチップ面積を占めるAC/DC変換ブロック(整流器、バッファ・キ ャパシタンス、クロック発生器、パワーアップ回路など)を不要にするものです。インフィニオンはこの発想に基づく論理素子をすでに開発し、新型回路を用いた動作システムの実演を行う予定です。業界のEPC( 電子製品コード)仕様による96ビット・メモリのチップを設計する場合、この交流動作回路(AC-only driven Circuit)では、0 .13μm-CMOSプロセス適用時のシリコン所要面積が0.1平方ミリメートル以下となります。インフィニオンはさらに、組立プロセスを容易にする、側壁電極(Side-Wall Contact)型 の新しいパッケージング技術も報告します。交流動作回路、単純なコード化スキーム、側壁電極型パッケージングを併用すると、価格1セント程度のRFIDタグが現実のものとして見えてきます。

90nmチップによるイノベーション
90nm-CMOS技術による消費電力10mWの6ビット/500MHz ADCアレイ(論文935)

省電力で高性能のA/D(アナログ/デジタル)変換は、携帯機器をはじめとした多くのアプリケーションで鍵となっています。インフィニオンは当論文で、単純なADC構造を並列レイアウトすることにより、高 速化だけでなく、電力効率の大幅向上も達成できることを示します。この設計では、8個の逐次近似型ADCを並列化して、非常に低い消費電流で高いスループットを得ています。

今回発表するA/Dコンバータは、90nm-CMOS技術で作成された最初の実用的アナログ回路です。インフィニオンの研究陣は、わずか10mWの消費電力で600MHzのサンプリング速度を達成しました。 この革新的なADC設計の性能指数(FoM:損失電力、有効ビット数、入力周波数を基に計算される指数)は、最近のISSCC出版物で公表された値のなかで最高の値を示しています。

高速通信回路の論文4件
ASDL2+交換局向けの0.13μm-CMOS技術による4チャネル・アナログ・フロントエンド回路(論文996)

インフィニオンは当論文で、ADSL2+標準をサポートするAFE(アナログフロントエンド)を発表します。ADSL2+は、実績あるADSL有線通信標準の増強版です。A DSL2+は下り方向で周波数レンジ2.2MHzで動作し、オプションとして周波数レンジを4MHz以上まで拡張できます。短距離ループでデータ速度を高めることも、長距離に対応することも可能なので、新 しい応用を可能にします。

インフィニオンのAFE設計では、0.13μm-CMOS技術を適用し、性能、消費電力、チップ占有面積の最適化が図られています。このAFEは4チャネルを備え、各チャネルには、ア ナログおよびデジタルの全コーデック機能、フィルタ、14ビットのA/DおよびD/Aコンバータが集積されています。消費電力はチャネルあたり75mWです。この値は、これまでに報告された他のADSL AFEと比較して約半分です。リニアリティは全動作モードで80dBc以上、送信チャネルでは75dBcという極めて競争力のあるMTPR(Minimum Total Transmission Power Routing)値が測定されています。

ADSL交換局向けの0.13μm-CMOS技術によるスイッチトキャパシタ型14ビット・デルタ・シグマ変調器(論文998)
DSL(デジタル加入者線)アプリケーションでは、高解像度で広帯域のA/Dコンバータが必要です。他方で、クロストークの問題は別として、高 密度ADSLラインカードの設計で大きな制約要因の一つにあげられるのが損失電力です。

インフィニオンの研究陣は当論文で、0.13μm-CMOS技術で実現された、基準電圧バッファ内蔵のスイッチトキャパシタ型マルチビット・デルタ・シグマADCについて発表します。こ のシングルループ3ビット変調器は、信号帯域幅276kHzにおいて14ビット、1.5MHzにおいて13ビットのダイナミックレンジを持っています。電源電圧1.5V、動作クロック105 MHzにおける損失電力8mWという値は、これまでに文献で報告されたなかで最良です。この頑丈で安価なADCは、量産向けをターゲットとしています。

無線LAN向けの0.13μm-CMOS技術による完全集積13GHzデルタ・シグマFractional-NPLL(論文738)

インフィニオンが今回発表する回路設計は、動作周波数が13GHzに達する初のCMOS 完全集積PLLです。この13GHz-PLLは、1 7GHzのISMバンドで動作する将来の高速無線LANシステムを狙いとしています。この高集積チップには、差動的に同調されたLC-VCO、IQデバイダ、低電力プリスケーラ、差動位相周波数検出器、チ ャージポンプ、ループフィルタ、ノイズ・シェーピング変調器など、関連機能がすべて内蔵されています。電源電圧1.5Vで動作し、全消費電力は60mW です。この研究でインフィニオンの研究陣は、将 来の無線LANシステムのための完全集積CMOSシステム・オン・チップ(SoC)へ向けた、レンジ10GHz以上の周波数シンセサイザが実現可能なことを立証しました。

無線LAN向けの10ビット/80MHzパイプライン型ADC(論文1046)

新しい無線LAN標準(IEEE802.11x)へ向けたベースバンド・プロセッサには、CMOS技術による高性能のA/Dコンバータが必要です。携帯型の安価なアプリケーションでは、低 消費電力でチップ占有面積の小さな純粋デジタルCMOSであることが必要条件となります。当論文では、電 源電圧1.5Vで動作する消費電力がわずか22mAの10ビット/80MHzのパイプライン型ADCについて発表します。消費電力値は、これまでに発表された設計と比較して2分の1に低減されています。0 .13μm-CMOS技術による全回路のチップ占有面積はわずか0.3平方ミリメートルです。この飛躍的な性能向上は、在来の1.5ビット・パイプライン型アーキテクチャをベースに、2つの新しいアルゴリズム( DRD=Dynamic Range-Doubling、DRS=Dynamic Reference Selection)を採用して達成されました。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCPR200402.035