エピソード5: インフィニオンの新しいModusToolbox™ Machine LearningがいかにAIoTを実現するか

「エッジで生成されたすべてのデータを分析し機械学習用にクラウドに転送するだけという当初のパラダイムでは、プライバシーや信頼性、レイテンシーという3つの基本的な障壁がありました。これらのアルゴリズムをエッジで効率的に実行することで、この障壁を取り除き、AIoT製品をより迅速に拡張することができます」と、本エピソードのゲストであるSree Harsha Angara (スリー ハーシャ アンガラ) は話しています。

本エピソードでは次について解説します。

  • AIoTとマシンラーニングの開発について
  • 基本的な障壁と課題について
  • 新しいModusToolbox™ MLがどのような役割を果たすのか

ModusToolbox™ MLの詳細



トランスクリプト (日本語訳)

ゲスト: Sree Harsha Angara (スリー ハーシャ アンガラ)
配信開始日: 2021年6月16日

モデレーター:

モノのインターネットの可能性はよく知られています。しかし、実際にはどのように導入すればよいのでしょうか。人々や企業はどのようにしてその恩恵を受けることができるのでしょうか。このポッドキャストでは、インフィニオンやパートナー、ユーザー企業からエキスパートをお迎えして、IoTがどのように機能するのか、IoTを機能させるためには何が必要なのかについてお話をお伺いします。
私はモデレーターのThomas Reinhardt (トーマス ラインハルト) です。このポッドキャストを皆さんにお届けできることをうれしく思っています。

消費者は快適性や利便性を向上させたいと考え、企業は新しいサービスを提供することで新たな価値や収益源を生み出したいと考えています。このため、接続されるデバイスの数は増え続けています。

今後は、さまざまなキートレンドによって形成された、より高性能なスマートデバイスが登場してきます。重要なトレンドのひとつとして、AIとIoTをエッジで組み合わせたAIoT (Artificial Intelligence of Things) と呼ばれるテクノロジーが注目されており、これはコネクテッド デバイスに機械学習機能を提供します。本日は、Sree Harsha Angara (スリー ハーシャ アンガラ) さんと、AIoT、機械学習、そしてインフィニオンの新しいModusToolbox™ Machine Learningについてお話を伺います。
ようこそSree Harshaさん、本日はご参加いただきありがとうございます。

Angara:

こちらこそ、よろしくお願いします。お招きいただきありがとうございます。

モデレーター:  

前回のエピソードでは、Vikram Gupta (ヴィクラム グプタ) さんと、AIoTがトレンドであり、IoTに大きな影響を与えていることについて話しました。しかし、AIoTとは何を意味するのでしょうか。また、特にAIoTの場合、革新的で、スマートで、コネクテッドで、セキュリティが確保された未来のIoTデバイスを開発するための課題はなんでしょうか。

Angara:

機械学習は、データ駆動型の設計原理を用いて歴史的に困難な問題を解決できる新しいディープラーニング (深層学習) アルゴリズムによって、急速に進歩しています。これは、接続されたデバイスの急激な増加により、エッジで生成されるデータの量が爆発的に増加しているIoTにおいて、特にエキサイティングなことです。

これらの新しいアルゴリズムは、IoT革命の次の段階を進める上で重要な役割を果たしています。このAIとIoTの組み合わせは、AIoT (Artificial Intelligence of Things) と呼ばれ、コネクテッド デバイスに機械学習機能を提供し、インテリジェントなタスクの実行を可能にします。Markets and Markets社によると、AIoT市場は、2019年の51億米ドルから2024年には162億米ドルに増加し、年平均成長率は26%になると予想されています。

エッジで生成されたすべてのデータを単純にクラウドに移して分析や機械学習を行うという当初のパラダイムは、プライバシー、信頼性、レイテンシーという3つの根本的な障壁に直面しています。人々がたどり着いた自然な答えは、通常はクラウド上で実行されるMLアルゴリズムをエッジに移行することです。

モデレーター:

プライバシー、信頼性、そしてレイテンシーという3つの障壁があるのですね。レイテンシーは明確ですが、これらの障壁について、もう少し詳しく説明していただけますか。

Angara:

もちろんです。音声ベースのスマート アシスタントはその代表例です。第一に、アシスタントと対話する際、回答を得るために往復する時間は、人間にとって自然な対話方法ではないため、一般的にユーザー エクスペリエンスの低下につながります。第二に、スマートウォッチなどのウェアラブル デバイス上で動作するアシスタントのことを考えると、インターネット接続の信頼性と帯域幅も重要です。クラウドへの接続が常に完璧で信頼できるとは限りません。第三に、これらのアシスタントは幅広く普及しているため、プライバシーは常に最重要事項であり、サービス プロバイダーにとっては機密性の高い音声データを確保することが常に課題となっています。

これらのアルゴリズムをエッジで効率的に実行することで、これらの障壁を取り除き、AIoT製品をより迅速に拡張することができます。
さて、AIoT製品向けのMLアルゴリズムを開発する上での大きな課題のひとつは、データ サイエンティストから組み込みファームウェアの開発者まで、さまざまな技術チームを横断する必要があることです。データ サイエンティストがアルゴリズムを開発する際に使用する開発ツールやワークフローは一般的にIoT向けのものではなく、これらのワークフローをより大きな組み込みソフトウェア スタックに効率的に統合する作業は、ファームウェア開発者に多大な労力を必要とします。

モデレーター:

それはとても難しいことのように聞こえます。しかし、私たちインフィニオンは、高価値で高品質な未来のデバイスを市場に投入する際に、どのようにして市場投入までの時間を短縮し、必要な費用を削減するのでしょうか。

Angara:

インフィニオンは長年にわたり、ModusToolbox™を提供してきました。ModusToolbox™は、直感的で使いやすいライブラリ、ソフトウェア、ツールのコレクションで、環境 (Linux、macOS、Windows) を問わず互換性があり、ソフトウェア開発者はセキュアで包括的な開発環境で組み込み製品やIoT製品の開発に集中することが可能です。オープンソースのシステムをベースにした最新のソフトウェア開発アプローチを提供しており、あらかじめ組み込まれたツールやサードパーティ製ツールともシームレスに統合されているため、開発者は必要なツールを使用して最高の製品を開発することができます。また、Mbed OS、Amazon FreeRTOS、AliOS Things、Zephyrなど、IoTに特化した広く使用されている開発フレームワークを活用することが可能です。これらを組み合わせることで、MCUとワイヤレスを融合したシステム開発を行うエンジニアに包括的な開発体験を提供します。

モデレーター:

その具体的なメリットはなんでしょうか。

Angara:

ModusToolbox™は、Wi-FiやBluetooth/Bluetooth Low Energyを搭載したIoT製品と、PSoC™ファミリーなどのRTOSシステム マイクロコントローラーを組み合わせたIoT製品の開発を大幅に簡素化します。開発者は、統合されたミドルウェアとコード サンプルを使用して、IoT製品を主要なクラウド ソフトウェア プラットフォームや独自のクラウド サービスに簡単に接続することができます。

ModusToolbox™には、Pelion Cloud ManagementやMbed OS、Amazon Web Services (AWS) IoTやFreeRTOS SDK、インフィニオンのAnyCloud IoTなど、一般的なエコシステムやクラウド管理ツールをサポートするソリューションも含まれています。
さらに、低消費電力アシスタント、マルチラジオのスマートな共存、セキュアな認証、Over-the-Airアップデートなどの具体的なツールを提供することで、高価値で高品質な製品をすばやく市場投入できるよう開発工数と費用の削減を可能にします。

このようにインフィニオンは、未来のスマート デバイスを作るために、柔軟で使いやすいツールやソリューションをすでに提供しています。

モデレーター:

このModusToolbox™では、AIoT向けに新しい機能を提供しているのですか。

Angara:

はい、ModusToolbox™ Machine Learningは、ModusToolbox™ Software and Toolsの新機能です。ModusToolbox™ Machine Learning (ML) は、インフィニオンのPSoC™マイクロコントローラー (MCU) 上でディープラーニング ベースのワークロードを実現します。設計者がディープラーニング ベースのMLモデルを評価 展開するためのミドルウェア、ソフトウェア ライブラリ、特別なツールを提供します。この機能により、ModusToolbox™で利用可能な既存のフレームワークとシームレスに統合できるため、MLワークロードを安全なAIoTシステムに統合することができます。

モデレーター:

なるほど、ModusToolbox™ MLでAIoTを実現することができるのですね。

Angara:

はい、お客様に多くのメリットをもたらしますが、特に、統一されたソフトウェア フローを提供することで、データ サイエンティストと組み込み開発者の間のギャップを埋めることに重点を置いています。

ModusToolbox™ MLにより、開発者はTensorFlowなどの好みのディープラーニング フレームワークを使用して、PSoC™ MCUに直接実装することができます。さらにこのツールは、量子化などのさまざまな技術を用いてサイズや複雑さを軽減したり、組み込みプラットフォーム向けにモデルを最適化したりすることで設計者を支援します。

このツールセットのもう一つの重要な機能は、これらの最適化技術がモデルのパフォーマンスにどのような影響を与えるかを視覚化することで、サイズおよび複雑さとパフォーマンスとの間で適切なトレードオフを行い、PSoC™ MCU上で効率的に実行させることができます。
また、コード サンプルやIoTに特化した開発キットが利用可能で、AIoTアプリケーションを開発する際にシステム開発者が直面する複雑さを軽減し、スムーズな開発体験を提供します。AIoT開発には一般的に、コンピュート、コネクティビティ、クラウド ドメインとともに、シームレスな機械学習ワークロードの統合を必要とします。ModusToolbox™ MLでは、既存のクラウドやコネクティビティ デザインにドロップするだけで統合が可能です。

このように、インフィニオンのModusToolbox™ MLはAIoTを実現させるために役立つ素晴らしい機能を利用することができます。さらに、ユーザー エクスペリエンスの向上こそが私たちの最優先事項で、今後リリースする製品およびソリューションのすべてのバージョンで継続的に強化していきます。

 

モデレーター:

素晴らしいですね。ModusToolbox™は、開発の障壁を取り除き、高品質な製品をより早く市場投入できるよう支援することで、生活をより便利で効率的なものにするために作られたのですね。リスナーのみなさんがModusToolbox™を使用するにはどうしたらよいですか。

Angara:

ModusToolbox™をダウンロードするためのリンクやMLソリューションの詳細を知るためのリンクは、ポッドキャストのトランスクリプトに記載されています。

  • ModusToolbox™の GitHubリポジトリでコード サンプルを入手
  • インフィニオンの Developer Communityに参加し、オンライン ドキュメント、オンライン ビデオ、定期的なライブ デベロッパー トレーニングを利用

モデレーター:

どうもありがとうございました。これで今回のエピソードは終了です。Sree Harshaさん、エキサイティングな洞察をありがとうございました。自己学習型のIoTデバイスがより多く販売されIoTを実現していくことを楽しみにしています。

リスナーのみなさん、さらに詳しい情報は infineon.io/jpをご覧ください。次のエピソードは近日中に公開する予定です。次のポッドキャストでまたお会いしましょう。