未来のロボットへのエネルギー供給

製造業の世界は変化しています。100年前には、工場を動かすエネルギーの大部分は、従業員の筋力によるものでした。今日では、工場は、大量の電力を消費しています。その電力は、コンピュータ、自動化機器、ロボットに供給され、工場の効率化に役立っています。しかし、電気エネルギーは、無限に得られるわけではありません。では、このエネルギーを効率的に利用するために、どのような対策が行われているのでしょうか。

電気機器の効率はどれくらいなのでしょうか。

工場では、私たちが毎日購入したり利用したりする製品を作るために電力を必要とします。大量の電力が必要です。小さな工場でも、一般家庭で1ヵ月に使うのと同じくらいのエネルギーを1週間で使ってしまいます。大きな工場では、それだけのエネルギーを1日で、あるいは数時間で使うこともあります。私たちが消費する製品が手の届く価格を維持できるようにするために、工場のオートメーションでは、ロボットの採用など、さまざまな改善が行われています。そこで使われる機械は、電気エネルギーを効率的に利用する必要があります。

その実現には、電子業界の中でも、部品や材料の研究、設計、開発を担当する科学者や技術者が重要な役割を果たしています。現在の家電製品がどれだけ進歩したかを把握するには、1980年代のオーディオシステムを振り返ってみればよいでしょう。当時のオーディオシステムでは、アンプの電力効率は約50~60%でした。すなわち、電力のおよそ半分は、無駄になっていたということです。失われたエネルギーの大部分は、熱として放出されていました。洗濯機、冷蔵庫、冷凍庫、テレビでも同様です。

電子工学が効率化にどのように貢献したのでしょうか。

電子回路に関する効率向上には、二つのアプローチがあります。

第1のアプローチは、コンポーネントそのものです。

コンポーネントは、しだいに小型で高効率になっています。また、新しい材料の出現によって、従来よりもコンポーネントの小型化と高性能化が進んでいます。このような研究が行われているのは、より効率的なコンポーネントや電子回路の構造ブロックを顧客が要求しているからです。

第2のアプローチは、電気回路に電子コンポーネントを使うという方策です。

1980年代には、アンプを構築するアプローチは限られていました。その一因として、コンポーネントの限界がありました。しかし、それ以外の原因として、莫大なコストをかけても、回路の効率をごくわずかしか改善できないということもありました。性能改善とそのコストが釣り合っていないのです。

しかし、技術者たちは、適切な電子デバイスがあれば、きわめて巧妙なアプローチを使って、非常に効率的な電子回路を作れることがわかっていました。

さらなる変化の一つが、デジタル技術の発展です。何年も前であれば、アナログ信号を扱うもの、たとえばアンプは、アナログ回路だけを使って作られていました。今では、強力で小型、高効率のアンプは、アナログ技術とデジタル技術の両方の長所を結合したものになっています。テレビや、サラウンドサウンドのホームシアターでも同様です。家庭用オーディオのニーズに適合した、小型で強力、高効率のオーディオアンプが実現されます。

電力供給のタイミングが重要

もう一つの困難な課題は、電子回路への電力供給です。壁のコンセントから得られる電気は、交流です。電源装置を使って、交流を直流に変換します。直流は、携帯電話の充電、その他の大小さまざまな家電機器で使用する電気の形態です。電源装置に接続された家電機器は、あるときには大量の電力を必要としますし、電力をほとんど必要としないときもあります。場合によっては、まったく不要なこともあります。一般的には、一定量の電力を供給することは比較的容易であり、高効率で実現できます。電力の需要が変化する場合には、課題が発生します。この状況を専門用語で「負荷変動」と言います。

これは、技術者が電源装置を設計製作する際に対応しなければならない課題です。それはパズルを解くのに少し似ています。少量の電力供給のためにすぐれたソリューションがあっても、大量の電力供給には別のソリューションが最適である、という場合が多いのです。しかし、効率の低い動作モードになったときでも、並以上の良好な状態になるように回路を設計するのは、実に難しいことです。

見識に基づく判断

多くの技術者は、設計中の電子回路について、計画されたユースケースに関する情報を知りたがっています。工場でロボットに電力を供給する電源装置を構築する場合であれば、いつ、どれだけの電力を使用するのかを知りたいでしょう。たとえば、ロボットが物を持ち上げるときには、多くの電力が必要です。物を置いてしまうと、電力消費はごくわずかになります。常に高速で動作する必要があるロボットアームは、低速で動作するロボットよりも多くのエネルギーを使います。

しかし、ロボットは、さまざまな種類の作業を実行する多機能ツールです。重い自動車部品を持ち上げるときにロボットが使うエネルギーは、オフィス家具を作るときとは異なっているでしょう。

このようにエネルギー消費量が異なる機器が、相互に通信し、エネルギー消費を調節して最適化できれば、すばらしいことではないでしょうか。

インダストリー4.0:マシンツーマシン通信による電力効率化

そこで、インダストリー4.0などの構想の出番です。この言葉の定義はさまざまですが、一般的には、産業革命の新たな時代であると理解されています。それは、相互通信の時代です。ロボットその他の製造設備が相互に、さらには人間の操作員とも通信し、工場での製品の生産をより効率化します。

効率向上の一つの分野が、電力消費です。機械が相互に調整することができれば、エネルギー消費を平準化し、電力需要が急変する回数を低減できます。先に述べたように、これによって、エネルギー利用を効率化できます。

当然ながら、それが常にうまく行くとは限りません。ベルトコンベア上の部品を取り上げて箱に入れる場合には、時間の制約を守らなければなりません。しかし、機械が相互に通信していれば、全体としてより効率的で、かつ電力消費変動が少ない作業順序を見つけることができます。

省エネルギーに対するインフィニオンの貢献

インフィニオンは、電源電子回路用のさまざまな製品を提供しています。最近までは、このようなコンポーネントの圧倒的多数は、純粋シリコン基板上に作られていました。シリコンチップは、このような材料でできています。しかし、材料科学の進歩に伴って、パワーエレクトロニクスに最適な代替材料が見つかりました。重要性が高まっているその材料は、シリコンカーバイド、SiCです。

SiCは、かなり前から電子回路で使われていましたが、この10年のうちにパワーエレクトロニクス向けに製品化されました。その長所は、電流密度が大きいことであり、高電圧大電流の電源装置に最適です。

わずかな改善でも効果がある産業用途では、インフィニオンのCoolSiCTMショットキーダイオード は、技術者が電源装置の効率をさらに1~2%向上させるのに役立っています。少ないと思われるかもしれませんが、今では通常90%を超える効率を達成している産業用途では、これでも大きな影響があります。

効率向上は、今まで熱として消失していた無駄なエネルギーの削減にもなります。その結果として、設計の軽量化と小型化を実現し、さらに放熱のための部品も削減できます(一般的には、銅の放熱部品およびファン)。

したがって、このような高効率コンポーネントと、相互に通信するインダストリー4.0対応機器を組み合わせれば、電源装置はきわめて高い効率を達成して、無駄を削減できます。同時に、電力供給先および周囲の機械の負荷変動がわかることによって、それに応じて、最も適切で効率的なモードで動作することができます。

結論

私たちは、将来の工場は、限りのある資源をできるだけ効率的に利用するものにしたいと思っています。その実現に向けて、科学者集団の努力によって、材料のすばらしい特性が解明されつつあります。また、その実現に向けて、有能な技術者の力によって、材料や見識が、省エネルギーソリューションやコンポーネントに形を変えています。

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