Eluminocity – 街路灯により都市をスマートに

周囲の状況に適応する街路照明、電気自動車の充電スタンド、環境や交通量データの計測設備など、エルミノシティ(eluminocity)のインテリジェント街路灯には、数多くの実用的な機能を結合することができます。いわゆるスマートシティのバックボーンとして、より快適な都市生活を人々に提供するとともに、切迫した都市部の人口増加による負の影響を軽減します。

2010年には、世界の人口は、都市部と農村部とでほぼ同数に二分されていました。そして2050年には、WHO世界保健機関(英語)の予測によれば、全人類の70パーセントが都市部に住むようになります。

19世紀は帝国の時代、20世紀は国民国家の時代だった。21世紀は都市の時代になるだろう。

前デンバー市長Wellington Webb

絶え間ない人口の増加は、都市とその住民に根本的な課題をもたらします。

  •      交通需要の増加
  •      大気汚染の深刻化
  •      化石燃料の枯渇

スマートシティ – 人々の生活の質を向上

専門家、市場調査会社ガートナーの Bettina Tratz-Ryan氏は、いわゆるスマートシティがこのような問題の解決策になると考えています。欧州連合の定義によれば、スマートシティとは、住民およびその要求に適合する都市である、ということです。目標は、人々の生活の質の向上です。

この目標を達成するために、スマートシティでは、広範囲にわたる情報技術のインフラを利用します。インテリジェント街路灯は、通信ネットワークを増強して、一つの照明に複数の機能を結合します。街路灯は単に明りを提供するだけのものではなく、個々の環境条件に適応して、より効率的なエネルギー利用を実現します。さらに、電気自動車の充電スタンドとして、あるいは大気汚染や交通規制のための計測設備としての役割も果たします。

eluminocity - 明日の街路灯

ドイツ、ミュンヘンにあるスタートアップ企業エルミノシティ(eluminocity:英語)は、インフィニオンおよびインテルと協力して、スマートシティの人々向けにスマートなアプリケーションを提供します。そのアプリケーションの制御には、インフィニオンの半導体が使用されています。

多彩な機能を備えていますが、そのスマート街路灯の主要な役割は、街路の照明です。このスマート街路灯は、一般的な街路灯とは違って、従来のナトリウムランプではなく、発光ダイオードLEDを使っています。第一にLEDの使用により消費電力が少なくなります。さらに、LEDはナトリウムランプの6倍長持ちします。すなわち、廃棄物の削減を実現し、ここでも消費電力を低減できます。これにより、自治体は街路照明に直接要する費用(英語)の4分の3を削減可能です。

このスマート街路灯は、そこからさらに一歩進めて、半径150メートル以内の環境条件に適応するように照明を調整して、エネルギー消費を抑制します。インフィニオンの24GHzレーダチップにより、歩行者または自動車などの物体が街路灯に接近してくるかどうか、さらにその速度までも検出します。そのデータの評価は、インフィニオンのXMC™マイクロコントローラファミリーで管理されます。

レーダの働きは?

レーダの働きは?

レーダは、マイクロ波を使って物体を検出するシステムであり、物体の距離、方向、速度を計測できます。レーダシステムでは、電磁波を発生させて、一方のアンテナから送信し、もう一つのアンテナで受信します。

インフィニオンの照明コントローラXDPL8220は、LEDに供給する電気を安定化します。レーダチップと照明コントローラの組み合わせにより、街路灯の周囲に物体を検知すると、選択的に街路灯を点灯します。物体が街路灯から離れていくと、LEDは暗くなります。また、この半導体により、照明を現在の気象条件に適応させることも可能です。雪や雨が降っているときには、夕暮れ時よりも、LEDをかなり明るく点灯させます。

電気自動車向け充電スタンド

スマート街路灯の追加機能として、電気自動車向けの充電モジュールがあります。ドイツ自動車工業会(VDA)の調査“Elektromobilität”(ドイツ語)によれば、2015年末には、46,000台の電気自動車がドイツ国内で走っていました。2016年7月に、ドイツ連邦政府は電気自動車の購入に補助金を給付すると公表しており、専門家は車両数が引き続き増加するだろうと予測しています。

街路灯と一体化した充電スタンドによって、電気自動車を充電できます(写真提供: エルミノシティ)

しかし、電気自動車の需要については、大きな課題が一つあります。今のところ、大規模な充電スタンドのネットワークがないことです。2011年には充電スタンド1基あたりの車両数は2台の割合でしたが、2015年には、7台になりました。VDAの予測では、将来は、充電スタンド1基あたり電気自動車10台の割合になると想定しています。

エルミノシティは、充電スタンドと一体化したインテリジェント街路灯を、ミュンヘン、シカゴ、オックスフォード、アイントホーフェンなど多くの都市にすでに設置しています。同社によれば、今後もさらに多くの充電スタンドを設置する予定とのことです。

充電の手順は、意外に簡単です。電気自動車のバッテリー容量がなくなったら、最大22kWの出力で再充電が可能です。運転者は、身分証明用のQRコードを充電スタンドでスキャンします。するとソケットの保護カバーが開き、運転者は、充電用ケーブルを接続して、自分の自動車のバッテリーを充電します。代金は、スマートフォンアプリを使って、キャッシュレスで手軽に決済できます。

深呼吸

内燃機関の自動車と違って、電気自動車は二酸化炭素(CO2)を直接には排出しません。そのため、深刻化する都市部の大気汚染を緩和する効果があります。現在の都市から、世界のCO2 排出量の75%(英語)を排出しています。

電気自動車が内燃機関の自動車に完全に取って代わるまでは、汚染物質排出量を計測する必要があります。その数値が高すぎる場合には、速度制限など、適切な対策を取れるようにするためです。インテリジェント街路灯は、さまざまな場所で大気の状況を計測し、そのデータをインターネット経由で担当の役所に送信します。排出量が許容値を超えている場合には、適切に対応できるように街路灯は地元の役所に警告を発します。そうなれば、高額な管理費用のかかる複雑な計測は、過去のものとなるでしょう。

駐車場をさがしているとき、車の増加と駐車場不足が重なって、ストレスの多い状況になるかもしれませんが、その場合でも自動車の運転者は、ゆっくりと深呼吸することができます。スマート街路灯には、駐車場の空きをさがして、クラウド経由でその情報を付近の自動車に送信する機能があります。これにより、エネルギーや時間を節約し、さらに精神衛生にも役立ちます。

データ通信における最先端のセキュリティ

モノのインターネット(IoT)では、さまざまなデバイスがデータを通信していますが、その中には機密情報も含まれています。たとえば、エネルギー、交通、あるいは、個人やビジネスに関するデータがあります。インテルの内蔵モデムにより、クラウドとのデータ通信に必要なインフラが実現しています。

このデータが悪人の手に渡るのを防ぐために、エルミノシティの開発者は、インフィニオンのセキュリティチップOPTIGA™ファミリを使っています。このチップでは、最新のハードウェアセキュリティと暗号アルゴリズムの組み合わせにより、ソフトウェアベースのシステムと比べて強力なセキュリティを実現しています。

エルミノシティは、インフィニオンおよびインテルと協力して、単なる街路灯という考え方を多目的のネット接続ポイントに生まれ変わらせました。スマートシティのバックボーンとして、インテリジェント街路灯は、たとえば、柔軟性の高い照明、電気自動車の充電スタンドネットワーク、大気状況計測センサなど、都市部に必要な様々な機能を実現します。インテリジェント街路灯は、人々に便益をもたらすだけでなく、技術者にとっても、さまざまな機能のためのプラットフォームを提供するという利点があります。実現可能な機能の範囲は、広がっています。

 

更新:2017年2月