IoT製品におけるWi-Fi規格の留意点

発行日: 2021年11月8日

著者: インフィニオン マーケティング担当副社長、シド ショー (Sid Shaw)

「Wi-Fi 6E ushers in the next 20 years of Wi-Fi (Wi-Fi 6EはWi-Fiの次の20年を切り拓く)」では、Wi-Fi Allianceが「Wi-Fi 6E」認証プログラムの提供開始を2021年1月に開始したことをアナウンスしています。Broadcom社のIoT事業を2016年に買収したサイプレス セミコンダクタ社を2020年に買収したインフィニオン テクノロジーズは、Wi-Fiの開発および実装において、その初期段階から重要な役割を担っています。インフィニオンは20年近くにわたるWi-Fi市場のリーダーとして、業界標準の開発と進歩において技術的指導を行い、30億個以上のIoTチップを出荷しながら製品リーダーシップを発揮し続けています。

Wi-Fiの重要な基準についてはホワイトペーパーでも解説していますが、製品およびユーザー エクスペリエンスがドライバーとなる以下が挙げられます。

  • 信頼性: Wi-Fi 6Eは、6 GHz帯を開放することにより家庭でのRF干渉を低減するとしています。
  • 通信範囲/混雑: Wi-Fi 6規格は、IoT製品にとって重要な通信距離と通信混雑の問題に対処する多くの機能を備えています。
  • Wi-Fi 6対応ルーターの導入: Wi-Fi 6の機能の多くは、Wi-Fi 6ルーターを使用すると利用可能になります。
  • コスト: Wi-Fi規格のバージョンを選択する際、コストを検討するのは重要です。コストとして考慮すべきは、チップやソリューション、実装にかかるコストなど、複数の側面があります。
  • セキュリティ: Wi-Fi規格は、すべてのWi-Fi 6製品で必須となるWPA3の導入など、セキュリティ向上に向けて進化し続けています。
  • 消費電力: バッテリー駆動または消費電力に敏感な多くのIoT製品にとって、Wi-Fi 6は画期的な低消費電力化を実現します。

IoT製品向けWi-Fi規格の検討ポイント

表1: IEEEおよびWi-Fi規格の変遷
2列目はよく使われる用語の変遷を示す

一般家庭で現在サポートされているWi-Fi技術はどれでしょう。近い将来それらはどのように変化していくのでしょうか。表1は、Wi-Fiの歴史とIEEE (米国電気電子学会) 802.11規格との関係を示したものです。IEEEはワイヤレスなど多くの規格を開発しており、Wi-Fi AllianceはIEEEが開発したWi-Fi規格について認証などをサポートし、各国政府は使用できる周波数を割り当てています。

10年も前のルーターが使用されていることは珍しくありません。現在の最新規格はIEEE 802.11axでWi-Fi 6と呼ばれていますが、それはIEEE 802.11 a/b/g/nのルーターで使用できます。対象となる消費者が最新技術のルーターを使用していない場合 (ほとんどのWi-Fiチップは後方互換性を提供しています)、それらのWi-Fiチップの最新機能を利用することはできません。最近では、Wi-Fi 6および6Eのインフラと採用率が向上しています。パート3では、この点についてより詳しく紹介します。

Wi-Fi 6および6Eを利用できると、大きなパフォーマンス上のメリットを享受できます。これも重要な検討事項です。IoT機器にとってWi-Fiの重要性が増し、家庭でもIoT機器が増えるにつれて、混雑の課題が現実に増えてきています。Wi-Fi Allianceはこうした課題を認識し、長年にわたってその解決に取り組んできました。インフィニオンをはじめとする半導体企業の協力のもと、アライアンスはWi-Fi 6規格を策定しました。

Wi-Fi 6は、製品の性能を向上させる新しい機能を複数提供します。信頼性やサービス品質 (QoS) は家庭でのより多くの接続製品を可能にし、消費電力の削減はバッテリー駆動の製品のバッテリー寿命を向上させます。これらのKPIは、高信頼性、長距離通信、低消費電力を必要とする製品にとって重要なポイントです。6 GHz帯の混雑していないクリアな周波数帯が最近Wi-Fi 6Eとして承認され、IoT製品がより高い信頼性と低消費電力で接続できるようになりました。

図1: Wi-Fiバージョン間の定量的および定性的な違い

新たに登場した規格や、レガシー アプリケーションおよび最先端ソリューションとの差異を考慮すると、製品ファミリーが進化するごとに再設計を行うことなく、Wi-Fi 4から5または6や6Eまで、継続的に製品を開発できる柔軟性を備えた技術を検討する必要があります。Wi-Fiでは、ある世代から次の世代へのポータビリティが不可欠です。Wi-Fi 4は利用が終了されるわけではありません。Wi-Fi 5も終了しませんし、6も終了とはならないでしょう。現在設計されているWi-Fi製品は、Wi-Fiが5から6、さらにその先へと進化し続けるなかで、将来提供されるWi-Fiへのソフトウェア ポータビリティとそれらの製品との一貫したインタフェースを提供することを考慮する必要があります。悪質な業者からの脅威が増すなか、セキュリティの向上にはWi-Fi 6Eにアップグレードすることが求められます。インフィニオンは、このセキュリティをさらに高いレベルまで高めています。

Wi-Fi 6は、前世代と比較して待機電力を50%削減することができます。家庭、自動車、工場など、ほとんどのユースケースにおいて、バッテリー ライフの大幅な向上を実現します。さらにWi-Fi 6では、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2のように他のネットワーク技術を統合して使用できるようにもできます。このような共存ソリューションを開発し、クラス最高のユーザー エクスペリエンスを提供できる企業は世界でも数少なく、インフィニオンはその一社です。インフィニオンは、Wi-Fiを組み込んだ独自の差別化製品を設計・提供し、システム設計におけるコスト削減を強力に支援します。

さまざまな選択肢の中から最適な製品を提供できたり、各カテゴリーで最適なものを提供できるパートナーを選択することも同様に重要です。数十年にわたる経験と数十億台のデバイス出荷に基づく実績を持つインフィニオンは、完全認証済みのWi-Fiソリューションを提供しているため、求められる性能を確実に実現するインフィニオンのこのWi-Fi 6E認定ソリューションを信頼して利用いただくことができます。信頼できるIoTパートナーとしてトップ8の評価を得ているインフィニオンにとって、設計を簡素化し市場投入までの時間を短縮するための投資は、複雑で高度に統合されたICベースのソリューションを提供するインフィニオンのシステム アプローチに不可欠な要素です。

すべては未来のために

Wi-Fi 4からWi-Fi 5そしてWi-Fi 6、そして最新のWi-Fi 6Eまで、規格がアップグレードされると性能や待ち時間、バッテリー寿命、通信距離、スループット (速度) が改善され、ユーザー エクスペリエンスが向上します。これらの改善点とエンドユーザーからの要望は、新製品にWi-Fi 6Eを実装する大きな動機となるでしょう。Wi-Fiの改良において強い経験を持つインフィニオンは、ユーザーが期待する性能とそれに見合うセキュリティを備えた究極のWi-Fiユーザー エクスペリエンスの実現に向け今後も取り組んでいきます。

著者: インフィニオン マーケティング担当副社長、シド ショー (Sid Shaw)