生体認証決済カード: 小型パッケージでセキュリティおよび利便性を提供

生体認証は既にスマートフォンでは標準になっています。現在、マイクロチップ技術の進歩により、急速に非接触型決済での指紋認証の採用が、カード保有者の間で普及しつつあります。インフィニオンのシニア マーケティング マネージャーのファン ルー ルーバックは、生体認証とセキュアエレメント技術が、どのように進化し、どのように信頼性の高い決済を消費者の指先で実現するのか、考察します。

指紋の科学

指紋鑑識学である指紋識別学は、イギリスの首都ロンドンを管轄する警察組織スコットランドヤードで、1901年に最初に採用されてから、法執行機関によって個人を識別するのに使われてきました。指先の皮膚が作るアーチ、ループ、渦巻きといった独特のパターンは個人を識別する手段となり、現在では、非接触型決済カードに、より高いレベルの利便性と信頼性をもたらしています。

キャッシュレス社会へと向かう世界的な傾向により、非接触型決済に対応した非接触型POS端末へと切り替える小売業者が増えています。 ABIリサーチ[1]の楽観シナリオでは、個人決済取引における、さらに便利で安全な生体認証に対する需要に応えるため、2025年までに最大で1億4000万枚の生体認証決済カードが発行されると予想されています。

出典: ABIリサーチ -生体認証決済カードの開発、プロジェクト、市場機会(2022年第2四半期)

非接触型決済では、本人確認を行うのにさまざまな機能を用いることができますが、銀行と顧客の両方で急速に普及しているのが指紋認証です。今日、ほとんどの国では、非接触型決済に取引限度額を設定することで、盗難や詐欺による被害を軽減しようとしています。フランス、ドイツ、スペインでは、非接触型決済は少額の50ユーロなどに制限されていますが、詐欺師はカード会社に通知が行き、カードがキャンセルされるまで、複数購入することが可能です。指紋認証機能付きの非接触型決済カードは、このように低い取引限度額を設定しなくても、詐欺師が資金を不正に使うことを各段に難しくします。生体認証機能付きの非接触型カードは、さらに便利で信頼性の高いユーザー体験への道を開きます。

しかし、その恩恵はカード保有者にとどまりません。加盟店は、(既に非接触決済で使用されているPOS端末など) 既存インフラを「取り外して置き換える」ことなく、指紋認証によるカード決済を導入できます。つまり、指紋認証機能付きの支払いカードが消費者に広まり、どこで買い物をしても、すぐに受け付けられるようになります。決済スキームは、ネットワークを通じてより多くの決済処理ができるようになり、カードメーカーは、すでに確立されている生産プロセスにほぼ全面的に依存することができるため、立ち上げ時間を短縮し、安定した生産コストを維持できます。

では、非接触型決済カードの指紋認証を実現するには何が必要でしょうか?

[1] 出典: ABIリサーチ -生体認証決済カードの開発、プロジェクト、市場機会(2022年第2四半期) 

生体認証イノベーションを実現する統合コンポーネント

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生体認証機能を搭載した決済カードは既に存在しますが、現在のソリューションでは複数の部品が必要です。

  1. 指紋照合、保存、ペイメントアプリケーションを管理するセキュリティコントローラー
  2. 指紋画像を取り込む指紋センサー
  3. 指紋画像を抽出するマイコン
  4. カードシステムへのエナジーハーベストを管理する電源

こうしたシステムは、デュアルインターフェース決済カードに比べて、複雑で部品コストが高くつくのが普通です。加えて、こうしたカードはセンサーやISOモジュールなどへの接続が複数回必要となるため、生産コストがきわめて高く、壊れやすくなります。

標準的なデュアルインターフェースカード同様に、生体認証機能付き非接触型決済カードの簡単な製造の実現のために、セキュアエレメントと指紋センサーを単一のモジュールに統合しました。非接触型決済カードの指紋認証における革新は、このコンポーネントの統合から始まります。

指先に便利さと信頼を

指紋認証で支払いをする女性

インフィニオンのSECORA™ Pay Bioソリューションは、インフィニオンのセキュア エレメントと、Fingerprints™ Cards AB社の指紋センサーを一つのパッケージに統合しており、カードアンテナと半導体間の配線接続が不要です。システム オンチップおよびシステム イン モジュール技術の進歩により、電源や指紋センサーなど、マイクロチップ機能をすべて単一のモジュールに統合できるようになりました。

このシステム統合により、バッグやポケットの中で誤ってカードが曲がってしまった場合などにも、カードの堅牢性や長期信頼性が大幅に向上します。また、量産時の複雑さも軽減します。その結果、既存のカード生産プロセスをベースにした、コスト効率が良く、拡張可能なプラグアンドプレイのターンキー型生体認証非接触ソリューションの生産が実現します。

SECORA™ Pay Bioは、ユーザーエクスペリエンスの向上のみならず、EMVレベル1準拠の基準を満たすよう設計されています。カードシステムの優れた生体認証性能により、次のようなことを実現しています。 

  • 他人受入率 (FAR: False Acceptance Rate、誤って別人を本人と認識してしまう確率) は0.01%未満
  • 本人拒否率 (FRR: False rejection rate、本人の認証がエラーになる確率) は3%未満
  • 決済スキームの要件に完全に準拠
  • 決済取引の平均所要時間は1秒未満

SECORA™ Pay Bioは、非接触決済のブームを支えながら、カード保有者に高いレベルのセキュリティと安心感を提供し、ユーザーにとって新たなレベルの利便性と信頼性を実現する力を持っています。