ある研究では、グリーン水素製造による電力需要は、現在 (2023年) 約2500 GWであるのに対し、2050年までに4500 GWにまで増加すると予測しています。既存産業のCO2排出量を削減する水素を原料にしたグリーン水素や、新たなエネルギー貯蔵・輸送方法の開発が、この飛躍的な成長を加速させると予測されています。

現在、水素製造のほとんどが化石燃料に大きく依存しているため、二酸化炭素 (CO2) 排出の大きな要因となっています。カーボンニュートラルな水素製造を目指そうとする環境的、政治的、経済的圧力が高まっています。水電解は将来、水素製造において重要な役割を果たすことでしょう。また、エネルギーシステムの構築方 法にも影響を及ぼすと思われます。水電解は、現在、世界の水素生産量の2％程度を占めるにすぎませんが、 風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用することで、環境に優しい水素を製造しています。

水電解には、高レベルで安定した直流電流が必要なので、電力変換システムは水素電解プラントに不可欠です。グリーン水素電解プラントは、風力発電所や太陽高パネルからの電力を、直接でも送電網経由でも使用できなければなりません。また、こうした電源からの入力を電力変換する際には、水素を経済的に製造できる安定した出力電力が必要です。

本書では、水電解に必要な電力変換システム (PCS) に焦点を当てる前に、水素市場の成長を促す要因について簡単に考察します。AC-DC変換およびDC-DC変換のトポロジーとともに、典型的な水電解プラントの構成例を紹介します。パワー半導体の世界的リーダーであるインフィニオンの包括的な製品ラインナップは、 PCS設計者に幅広い選択肢を提供します。本書の最後ではインフィニオンの製品と機能の概要を紹介します。