今知っておきたい、エレクトロモビリティについて

エレクトロモビリティには明るい未来があります。この技術によって、環境にやさしくて静かで効率的な車両が実現するでしょう。電子パワートレインのメリットを活用するためには、まだいくつかの課題を解決する必要があります。しかし、ブレークスルーが起こるでしょう。

気候変動、石油不足、大気汚染。モビリティは将来的にCO2ニュートラルにならなければなりません。電気自動車やハイブリッドカーは、内燃機関を搭載した車に比べて、排気ガスの排出量が少ないです。電気自動車は、再生可能エネルギーから電力を得ている限り、それを可能にする重要な手段となります。IEAの予測では、2030年には電気自動車の市場シェアは約30%となり、道路を走る電気自動車の総数は3,400万台になると言われています。しかし、電気自動車への切り替えは、実際にはどのような意味を持ち、どのような結果をもたらすのでしょうか?

エレクトロモビリティとは?

エレクトロモビリティあるいはe-モビリティとは、電気自動車、電動アシスト自転車(pedelec)、電動オートバイ、電動バス、電動トラックを利用することです。これらすべてに共通する特長は、完全にまたは部分的に電気で駆動され、エネルギー蓄積手段が車両上にあり、そのエネルギーを主として電力網から供給されることです。電動自動車は、静粛、効率的、低排出であり、今のところ主に都市部で利用されています。都市部での配送サービス、タクシー、カーシェアリングに適しているからです。

ハイブリッド車は、2種類のパワートレインテクノロジーを組み合わせています。電気駆動の場合には、通常は走行距離が短くなりますが、内燃機関を使えば、長距離であっても問題なく移動できます。ハイブリッド車は、惰性走行中またはブレーキ時に電気を回生しますが、コンセントから充電することもできるので、プラグインハイブリッドと呼ばれます。ハイブリッドは、自動車が完全電動化されるまでの橋渡しをする技術だと考えられています。

今、なぜエレクトロモビリティが重要なのでしょうか?

排ガスは、気候や環境に重大な影響を与えています。多くのCO2が大気中に放出され、その結果として地球はますます温暖化しています。IPCC (気候変動に関する政府間パネル) の調査によると、全世界のCO2排出量の24%を交通が占めています。電気自動車が、その流れを食い止めます。ガソリン車やディーゼル車と違って、電気自動車は走行時にCO2を排出しません。しかし、電気自動車が本当の意味でCO2ニュートラルと言えるのは、バッテリーおよび供給される電気が再生可能エネルギーで作られる場合のみです。

低排出車も大気状況の改善につながるため、特に大都市圏で、住民の健康に良い影響があります。都市での人口増加が見込まれています。国連の「World Urbanization Prospects(世界都市人口予測)2014」によれば、2050年には、世界人口の約70%が都市部に住んでいると予測されています。

内燃機関は、消えていく運命にあります。ガソリンや軽油の原料である石油などの化石燃料は、限りある資源だからです。その資源がいつまで持続するかというのが議論の的になっています。「Statistical Review of World Energy(世界エネルギーの統計レビュー) 2017」の調査では、世界中で既知の石油埋蔵量は、現在の消費レベルが続くとすれば、約50年分だということです。パワートレインの転換を実現するために、多くの国では、電気自動車購入を奨励しています。たとえば、ノルウェーでは、多額の補助金を出しています。

電気自動車はどのようにして動くのでしょうか?

電気駆動装置の設計

電気エネルギーは、充電式バッテリーに蓄えられます。インバータという装置が、バッテリーの直流を、電動モータ駆動に使われる交流に変換します。この変換効率が良好であれば、バッテリーをフル充電した車は、より長い距離を走行できます。最終的に、電動モータが電気エネルギーを機械エネルギーに変換します。電動モータは、電気エネルギーによって磁界を発生します。その引力と斥力により、回転運動が起こります。

電気自動車のその他の主要部品として、DC-DCコンバータがあります。それは、バッテリーの高電圧(100~400Vまたはそれ以上)を電子部品で使われる低電圧(12V、場合によっては48V)に効率的に変換します。

電気自動車の充電方法と充電時間は?

電気自動車を走行できる状態にするためには、電源コンセントから充電しなければなりません。ドイツe-モビリティ協会の調査によれば、電気自動車所有者の80%は、家庭のコンセントから充電しています。その場合、車種やバッテリーによって違いはありますが、少なくとも8時間かかります。しかし、すべてのコンセントが、長時間にわたって大電流を流せる設計になっているわけではありません。自宅に電源ボックスを取り付ければ、この問題が解決され、約4倍の速度で充電できるようになります。公共の交流(AC)充電スタンドでバッテリーを充電するには、それと同じくらいの時間がかかりますが、直流(DC)急速充電スタンドであれば、約1時間ですみます。その理由を説明します。電気自動車のバッテリーは、直流で充電されますが、公共の電力網で供給される電気は交流です。まず、自動車のインバータは、それを変換する必要があります。したがって、ACスタンドでの充電は、DCスタンドよりも時間がかかるのです。後者であれば、充電前に、すでに直流に変換されているので、それを自動車のバッテリーに直接供給するだけです。このDC急速充電スタンドは、高性能の充電が可能ですが、コストが高いので今のところあまり多く設置されていません。いずれの充電スタンドでも、充電には特別なケーブルが必要です。充電の所要時間は、超大電力充電器や高性能バッテリーなどの効率的な技術のおかげで、近いうちに20分またはそれ以下にまで短縮されるでしょう。

電気自動車はどれだけの電気を消費するのでしょうか?

電気自動車の電力消費量は、100km当たりのキロワット時(kWh)で表されます。軽量な超小型電気自動車では、100km当たり7kWhと少ない電力消費量です。サブコンパクト車およびコンパクト車では、100km当たり約11~13kWhの電力消費量です。高級ブランドの電気自動車は、100kmあたり28kWhを消費することもあります。しかし、大容量のバッテリーを搭載することで、最大600kmの走行が可能なものもあります。

現在までのエレクトロモビリティ開発

エレクトロモビリティは、最近の流行のように思われていますが、厳密に言えば、現代の発明ではありません。1867年の昔、すなわち内燃機関が登場するよりも前に、ヴェルナー・フォン・ジーメンスは、パリの万国博覧会でダイナモの原理による発電機を展示しました。この発明のおかげで、いつでも必要なときに状況に応じた発電が低コストでできるようになりました。その結果、日常生活で、産業で、そして乗り物で、電化が進みました。

電動モータ付きの最初の車は、19世紀末に発表されました。ベルギー人のカミーユ・ジェナツィの電気自動車は1899年に記録を樹立しています。あらゆる路上走行車両で初めて、時速100kmを達成しました。19世紀末以来、電車や路面電車は、架空電線または給電用レールからエネルギーを供給されています。1900年時点の数値が示すように、電気自動車は、20世紀初頭には、まだ広く使われていました。米国の道路走行車両の22%が内燃機関、40%が蒸気機関、38%が電気で駆動されていました。当時の内燃機関には欠点がありました。車両を起動するためには、かなりの労力を費やしてクランクを回さなければなりませんでした。ガソリン駆動が他の種類のパワートレインに取って代わり始めたのは、1911年に電動スターターが発明されてから後のことです。

それ以来、電気自動車は、ニッチな存在に格下げされましたが、完全に消滅したわけではありませんでした。1990年代中頃に、ハイブリッドモデルのトヨタプリウスが発売されました。2008年には、高速道路や長距離の走行に適した最初の電気自動車として、カリフォルニア州からロードスターが登場しました。

ご存じでしたか。最初の自動車は、電気自動車だったのです。

ご存じでしたか。最初の自動車は、電気自動車だったのです。

1881年に、フランスの技術者ギュスターヴ・トルーヴェが、世界初の、電動モータとバッテリー付き三輪車を発表しました。時速10kmで走行可能で、当時としては速すぎて危険だと思われていました。ベンツによる最初の内燃機関自動車が登場するのは、1886年になってからでした。

今日の電気自動車の速度は?

変速機がないので、あらゆる電気自動車は、ガソリン車やディーゼル車と比べて、より安定して迅速に加速することができます。しかし、その最高速度はどれくらいでしょうか。小型の電気自動車は120km/hまで出すことができます。アメリカのスポーツカーは時速300km以上で走ることができます。世界最速の電気自動車のひとつは、クロアチアのメーカーであるリマック社のNeveraモデルで、時速400km以上で道路を「轟音」をたて駆け抜けます。

現在の電気自動車の走行距離は?

現在の電気自動車の大部分は、1回の充電で150kmから350kmを走行できます。これは、都市部での利用に理想的です。500km以上走行できるのは、今のところ高級ブランドのモデルだけです。しかし、走行距離はさまざまな要因に左右されます。外気温が低すぎたり高すぎたりすると、あるいは、ラジオやエアコンの使用によっても、バッテリーが消耗します。加速や減速を繰り返すことも、走行距離の低下につながります。

エレクトロモビリティはすでにどの程度使われているのでしょうか?

エレクトロモビリティは世界的に進歩しています。ドイツ自動車工業会によると、ドイツでは2020年に39万5,000台の電気自動車とプラグインハイブリッド車が販売されました。この点で、ドイツは世界第2位です。トップランナーは中国で、2020年に125万台の電気自動車およびプラグインハイブリッド車が販売されています。3位は米国 (30万2,000台)、4位はフランス (18万6,000台) となっています。

ノルウェー:世界の先駆者

ノルウェー:世界の先駆者

ノルウェーは、エレクトロモビリティのロールモデルです。2017年に、世界で初めてハイブリッド車と電気自動車の登録台数が、内燃機関自動車の登録台数を超えました。これは大幅な助成策の効果です。ノルウェー政府は従来の自動車に重い税金を課しているのに対して、クリーンな自動車を購入したときには、税金がかかりません。その他の特典として、自動車税が軽減され、有料道路と国営フェリーが無料で利用できます。2025年以降、ノルウェー国内で販売できるのは、ゼロエミッション車だけになります。

電気自動車だけでなく、日常的な利用に適した電気モーター搭載の商用車を発売するメーカーが増えています。例えば、メルセデスのe-VitoやルノーのMaster Z.E.は、すでに2018年に市場に参入しています。

エレクトロモビリティのメリット

電気自動車は、私たちの移動方法に変化をもたらしています。それは、環境にやさしいという理由だけではありません。電気自動車は、同等のガソリン車やディーゼル車よりも高価です。バッテリー価格は過去数年間低下しているものの、その生産コストが高いことが主な原因です。しかし、電気は化石燃料よりも安価です。さらに、電気自動車は、メンテナンスや修理をあまり必要としません。オイルやフィルターの交換は不要ですし、排気装置、タイミングベルト、Vベルトもありません。内燃機関の場合は、約2,500個の部品を製作して組み立てなければなりませんが、電動モータでは250個だけです。電気自動車は、ネット経由のソフトウェア更新(SOTA)が、迅速にできます。しかし、それは、コネクテッドカー、すなわちインターネットに接続した自動車であれば、すべてあてはまります。

電気自動車で使われるリチウムイオンバッテリーは、サービス寿命が長く、エネルギー密度が高く、何度も繰り返して充電できます。8~10年で充電能力が低下しますが、それは欠陥ではありません。単に蓄積できるエネルギーが少なくなるだけです。今日の電気自動車で使用するバッテリーは、20~60kWhの容量を持っています。

電気自動車のバッテリーは、将来には、スマートグリッドの安定化に利用される予定です。風力発電や太陽光発電が私たちのエネルギー供給の主力になるとすれば、問題があります。電気の需要と供給は、天候によって変化するからです。たとえば、日照量が多いときには、その余分なエネルギーを吸収するなど、インテリジェントな自動車充電テクノロジーを利用します。逆に、自動車で電気を使わないときには、余分な電気を電力網に返すこともできます。自宅の屋根に太陽光発電システムを設置すれば、電気自動車の所有者は、外部の電源への依存度を低減できます。さらに、電源ボックスを付ければ、サービススタンドまで走行する必要がなくなります。自宅に電気を蓄える手段ができるので、日照量が少ないときに備えて、エネルギーを貯めておくこともできます。

SiC(シリコンカーバイド)とシリコンの比較:バッテリーの小型化、大容量化

SiC(シリコンカーバイド)とシリコンの比較:バッテリーの小型化、大容量化

電気自動車の電子回路は、強力かつ高効率でなければなりません。それが走行距離や速度に影響するからです。SiC(シリコンカーバイド)のパワー半導体は、この分野で新たな基準を定めています。SiCは、シリコンよりも高い負荷と厳しい使用条件に耐えられます。さらに、高温環境下においても、より少ないエネルギーで動作します。シリコンベースの製品よりも高いスイッチング速度と低い導通損失により、はるかに高効率かつ小型の電力変換が可能になります。低損失ということは、バッテリー冷却の簡素化にもつながります。効率向上およびバッテリーのヒートシンク削減によって、小型化、軽量化を実現します。

電気自動車は高性能で、内燃機関自動車よりもはるかに高効率です。電気パワートレインの場合、供給されるエネルギーと利用されるエネルギーの比率は、約90%になっています。この数値は、ガソリンエンジンの場合35%、ディーゼルエンジンの場合45%しかありません。残りのエネルギーは、たとえば熱として失われます。その他のメリットとして、直ちに高トルクが得られるので、電気自動車は、停止状態から迅速に加速することができます。また、ブレーキ時にインバータを使ってエネルギーを得て、そのエネルギーをバッテリーに供給できます。この効果を回生と言います。電気自動車は、一部の国や都市で特別な権利を与えられています。たとえばドイツでは、ハンブルクおよびシュトゥットガルトで駐車料金が無料になり、ドルトムントでバスレーンを走行可能です。ノルウェーでは、電気自動車の運転手には、さらに多くの特典があります。

強力なバッテリーがまだ高価なので、電気自動車の価格は、内燃機関の同等モデルよりも概して高くなっています。しかし、電気自動車を買うことは、誰にとって価値があるのでしょうか。ドイツのエコ研究所(応用エコロジー研究所)の試算によれば、1年に9,000km走行し、サービス寿命が8年であるとすると、電気自動車を所有する総コストは、従来型駆動装置の車両よりも低くなります。この計算は、同研究所のウェブサイト(英語)で自分で確かめることができます。

エレクトロモビリティの課題

多くのメリットがある一方で、今のところ電気自動車の価格が高いという以外にも、エレクトロモビリティに関連する課題があります。電気自動車は非常に静かです。すなわち、特に都市や主要道路で、騒音が大幅に少なくなるということです。歩行者や自転車利用者は、まずそれに慣れる必要があるでしょう。電気自動車が低速で走行していると、非常に静かなので、音が全く聞こえないかもしれません。したがって、2019年7月以降EUで新しく開発されるモデルは、車両接近通報システム(AVAS)を装備する必要があります。20km/h以下の速度では、ガソリン車やディーゼル車と同じような電子音を発生しなければなりません。電気自動車がそれより速く走行するときには、タイヤによる騒音が聞こえるはずです。2021年7月以後、EU内のすべての新しい電気自動車およびハイブリッド車には、AVAS装備が義務づけられます。

電気自動車が本当の意味でゼロエミッションであると言えるためには、その電気は、石炭火力発電などではなくて、再生可能エネルギーから生成される必要があります。また、バッテリーの製造もCO2ニュートラルでなければなりません。再生可能エネルギーの利用は、ドイツ政府の目標でもあります。再生可能エネルギーは、「エレクトロモビリティが環境および気候に対してそのメリットを完全に発揮する」ための唯一の方法である、とエネルギー転換に関する調査報告書で述べています。国際クリーン交通委員会(ICCT)によれば、気候への影響に関して、電気自動車による温室効果ガスに対する気候への影響は、遅くとも3年のうちにディーゼル車またはガソリン車と同程度になると見込まれています。費用がかかり資源集約的になっているバッテリー生産プロセスが、より環境にやさしくなれば、そのメリットはさらに大きくなるだろう、とICCTは述べています。

エレクトロモビリティの魅力は、バッテリーによって左右されます。バッテリーでどのくらいの距離を走れるのか、コストはどれくらいかかるのか、重量はどれくらいなのか。こうした点に改善の余地があります。より高い効率と性能を実現するためには、新しい技術や、半導体材料であるSiC (シリコンカーバイド) の要素が必要です。経営コンサルティング会社のデロイトが行った調査によると、現在の電気自動車は航続距離が短いため、購入を躊躇している人が多いようです。しかし、私たちの多くは、普段の生活の中で、すでに問題なく電気自動車を利用しています。連邦環境省によると、ドイツ人は車を使う日の80%以上で平均走行距離が40km以下です。平均的なアメリカ人の1日の移動距離は、秋には31.5マイル (50.6km) 、冬には26.2マイル (42.1km) です。ノルウェー人の数値は、1日平均約47.2kmです。

他の回答者からは、欧州の充電ステーションのネットワークがまだ改善されていないことが批判されました。現在、322,783カ所の公共充電ステーションがあるものの、その分布は偏っています。充電ステーションの数が多い上位5カ国は、オランダ (82,263台)、ドイツ (47,076台)、フランス (45,990台)、そしてイギリス (33,832台)、ノルウェー (19,119台) です。これらの国々は、欧州における充電ステーションの70%以上を占めています。一方、中国では現在、約80万台の公共充電ステーションが運営されています。

米国では、大部分の充電スタンドは、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼなど、カリフォルニア州に設置されています。しかし、充電インフラは、今までのところ国ごとにかなりの違いがあり、世界で共通する標準規格はありません。インフィニオンも参加しているチャージング インターフェイス イニシアチブ(Charging Interface Initiative、略称:CharIN)では、その状況を変えるため、効率的なコンバインドチャージングシステム(CCS)を開発して、共通の国際基準にしようとしています。

インフィニオンのエレクトロモビリティへの貢献

インフィニオンは、「easier, safer and greener」という理念のもと、メーカーやサプライヤーと協力して明日の自動車を創造しています。そして、成功を収めています。インフィニオンのパワーチップは、2020年に最も多く販売された完全電気自動車およびプラグインハイブリッド車25台のうち17台の電気ドライブトレインに搭載されています。

しかし、電気自動車やプラグインハイブリッド車が、従来のパワートレイン車よりもはるかにエネルギー効率が良いとしても、まだ改善するべき点がかなり残っています。電力損失の最小化、充電容量の最大化、そして全般的性能の向上という課題があります。インフィニオンは、さまざまなシステム向けの広範囲にわたるパワー半導体製品を提供しています。これにより、ドライブや電子回路のコストを軽減し、同時にエネルギー効率を向上させることができます。一般的には、エレクトロモビリティがさらに普及すれば、半導体の需要は急速に増加するでしょう。インフィニオンは、自動車の充電器、インバータ、DC-DCコンバータのような将来の新開発製品には、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の利用がますます増加すると考えています。

インタラクティブな自動車の図で、エレクトロモビリティにおけるインフィニオンの技術分野をご覧ください。

メインインバータ

これは、電気自動車のドライブトレインにおける主要コンポーネントであり、バッテリーとモータの間のエネルギーの流れを制御するものです。インバータの電力段は、損失を最小化し、温度効率を最大化するように設計されています。インバータを通じて、ブレーキ時のエネルギーをバッテリーに送り返すので、車両の走行距離は、インバータの効率と密接に関係しています。

詳細技術情報

DC-DCコンバータ

電気自動車の電子部品は、さまざまな電圧レベルを必要とします。DC-DCコンバータは、高電圧バッテリーを12V電源のシステムに接続できるようにします。設計者は、この変換にあたって、効率向上とスペース削減を目指しています。

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補助インバータ/コンバータ

電気自動車では、エアコン、電動パワーステアリング、PTCヒータ、オイルポンプ、冷却ポンプなどが電動化され、電源システムに組み込まれています。今のところ、このような補助システムは、高電圧バッテリーからの貴重な電力で動作しているので、設計者は、エネルギー効率向上のため、パワーオンデマンドソリューションを検討しています。

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車載充電器

電気自動車の電子システムは、電源をバッテリーに依存しています。車載充電器ユニットは、そのバッテリーを通常のコンセントから充電できるようにするものです。しかし、国によって電圧や電流レベルが異なっているため、システム設計者は、充電器ユニットに対して、設計の柔軟性、より高い電力密度、より小さいフォームファクタを求めています。

詳細技術情報

エレクトロモビリティの分野において、インフィニオンは、BMW (i3およびi8)、ヒュンダイ、中国のスタートアップ企業NIOのようなパートナーと密接に協業しています。NIOは、出力480kWのES8などの電気自動車をミュンヘンで生産しています。その車両および他のさまざまな電気自動車で、インフィニオンの製品が多数使われています。

迅速な充電、長い走行距離

電気自動車については、より迅速な充電、より長い走行距離を実現するテクノロジーに対する要求が高まっています。この2つは、電気自動車が世間に認められるための重要な判断基準になっています。インフィニオンは、内部電源および直流充電装置向けの半導体を提供しています。新しい充電スタンドでは、インフィニオンの半導体を利用して、充電時間を20分に短縮しようとしています。急速充電の実現には、SiC(シリコンカーバイド)による新しいテクノロジーが不可欠です。

アクティブなバランス充電のようなイノベーションにより、バッテリー容量、走行距離、サービス寿命がすでに10%以上向上しています。しかし、電気自動車の効率向上のためには、それ以外にもさまざまなアプローチがあります。たとえば、必要なときだけバッテリーがエネルギーを供給する、エアコンや暖房システムをできるだけ高効率にする、という方法があります。特に、電気自動車の充電に関しては、柔軟性の高い切り換え構造が求められます。要するに、国ごとに異なるさまざまな電圧や電流に対応できる充電器でなければならないということです。インフィニオンは、広範囲にわたる強力でエネルギー効率の良い製品と最適なノウハウを提供して、この問題や類似要件の解決に貢献します。

未来の電気自動車

エレクトロモビリティは大いに有望だという予測がありますが、現状のシェアが小さいことに加えて、技術的観点からも、まだ揺籃期にあります。エレクトロモビリティが期待に応えられるようになるためには、車両とバッテリーの価格低下、充電ネットワークの拡大とインテリジェント化が実現して、さらに電気自動車のエネルギー効率が向上しなければなりません。エネルギー効率の点では、特に多くのことが実現しつつあります。さまざまな企業や研究者が、バッテリーの性能向上のために絶えず努力を続けています。リチウム塩のかわりに水をベースにした電解液を使った電池の初期試験は、かなり有望だと思われます。特殊な塩の溶液が、水の電気化学的安定性を2倍に高めます。これにより、安全、高効率、低コストの新しいバッテリーテクノロジーが生まれるかもしれません。

より良いバッテリーができれば、利用者を駆り立てる走行距離の拡大および充電時間の短縮という2つの重要なことが実現します。エレクトロモビリティが世間に認められるためには、充電スタンドネットワークの普及が不可欠です。電気自動車のメーカーが増えて、バッテリーの価格が低下すれば、数年のうちに電気自動車のブレークスルーが起こるでしょう。物理学者でエレクトロモビリティ専門家のリヒャルト・ランドールは、「2022年までに、世界中の新車の少なくとも10台に1台は、電気自動車になるだろう」と予測しています。

電気自動車以外に考えられる選択肢:水素自動車

電気自動車以外に考えられる選択肢:水素自動車

水素自動車も、同様に電動モータで駆動されます。しかし、バッテリーではなく燃料電池を使い、水素と酸素の化学反応により電気を発生します。排出ガスはありません。副産物として蒸気が出るだけです。現時点での課題は、水素は、自然界には単独で存在しないため、多大なコストをかけて水や天然ガスから生成しなければならないことです。

最重要点がすぐわかるQ&A

エレクトロモビリティあるいはe-モビリティとは、電気自動車、あるいは電動アシスト自転車、電動オートバイ、電動バスを利用することです。これらすべてに共通する特長は、エネルギーは主に電力網から供給され、車載するエネルギー蓄積手段で、完全にまたは部分的に電気で駆動されることです。

電気エネルギーは、充電式バッテリーに蓄えられます。インバータという装置が、バッテリーの直流を、電動モータ駆動に使われる交流に変換します。この変換の効率が良好であれば、バッテリーをフル充電した車は、より長い距離を走行できます。最終的に、電動モータが電気エネルギーを機械エネルギーに変換します。電動モータは、電気エネルギーによって磁界を発生します。その引力と斥力により、回転運動が起こります。

電気自動車のその他の主要部品として、DC-DCコンバータがあります。

電気自動車は環境にやさしいということがメリットです。バッテリーの生産と充電が、再生可能エネルギーによって行われれば、有害排ガスを出しません。電気自動車は、メンテナンスや修理をあまり必要としません。内燃機関のように、摩耗する部品を多数使っているわけではありません。内燃機関の場合は、約2,500個の部品を製作して組み立てなければなりませんが、電動モータでは250個だけです。電気自動車では、ソフトウェアの更新も迅速にできます。

電気自動車で使われるリチウムイオンバッテリーは、サービス寿命が長く、エネルギー密度が高く、何度も繰り返して充電できます。自宅の屋根に太陽光発電システムを設置すれば、電気自動車の所有者は、外部の電源への依存度を低減できます。さらに、電源ボックスを付ければ、充電スタンドまで走行する必要がなくなります。電気自動車は高性能で、内燃機関自動車よりもはるかに高効率です。電気パワートレインの場合、供給されるエネルギーと利用されるエネルギーの比率は、約90%になっています。この数値は、ガソリンエンジンの場合35%、ディーゼルエンジンの場合45%しかありません。

電気自動車は低速時には非常に静かなので、歩行者や自転車利用者には音が聞こえないかもしれません。したがって、将来は、20km/h以下の速度では、人工的雑音を発生しなければならなくなる予定です。電気自動車が本当にゼロエミッションであると言うには、その電気は再生可能エネルギーで生成しなければなりません。電気自動車の走行距離については、まだ改善の余地があります。電池が理想的な動作をしていません。しかし、大部分の自動車所有者は、現時点でも、たいていの外出に電気自動車を問題なく使えているはずです。多くの国では、1日当たりの平均走行距離は、50km以下でしかありません。その他の問題は、充電スタンドのネットワークがまだ十分整備されていないことです。電気自動車については、より迅速な充電、より長い走行距離を実現するテクノロジーに対する要求が高まっています。インフィニオンは、車両の内部電源および直流充電装置全般向けの半導体を提供しています。新しい充電スタンドでは、インフィニオンの半導体を利用して、充電時間を大幅に短縮しようとしています。

多くの人が、内燃機関は、消えていく運命にあると考えています。現状の技術を前提にすれば、電動パワートレインが近い将来、内燃機関に取って代わるはずです。しかし、そうなるためには、車両とバッテリーの価格低下、充電ネットワークの拡大とインテリジェント化が実現して、さらに電気自動車が市販できる程度にエネルギー効率が向上しなければなりません。さまざまな企業や研究者が、バッテリーの性能向上のために絶えず努力を続けています。これにより、利用者にとって大きな二つの誘因、すなわち走行距離拡大および充電時間短縮が実現します。さらに、充電スタンドのネットワークは、拡大し続けています。

更新:2021年7月

電源ボックス

電源ボックスは、家庭用の「給油」スタンドです。これは家の壁に取り付ける箱で、電気自動車を迅速かつ容易に充電できる特別なソケットが付いています。

スマートグリッド

スマートグリッドとは、インテリジェントな電力網です。中央制御によって、電気の発生、貯蔵、消費を完全に調整して、グリッド内の電力変動を均等化します。