なぜ将来の船舶は電動化されるのでしょうか

大きな崖や滝に囲まれた深く青い海に、船が静かに浮かんでいます。ここノルウェーのフィヨルドでは、世界が止まっているように見えます。しかし、その静けさは幻想にすぎません。ディーゼルエンジンが起動してクルーズ客船が動き始めると、大きな音が響きます。のどかな風景を乱すものは、騒音だけではありません。船舶は、大量の排出ガスを発します。

排出ガスは、高い山々の間に何日もたまっていて、悪臭を生み、地域住民の健康を脅かします。そこで、ノルウェー政府は、汚染源となる船舶を早期にフィヨルドから締め出して、環境にやさしいモデル、たとえば電気推進システムの船舶に置き換えたいと考えています。将来は、電気推進船が、雪に覆われた山の付近を静かに無公害で通り過ぎていくようになるでしょう。

従来の船舶推進システムが論議を呼んでいるのは、ノルウェーだけではありません。国際海事機関によれば、世界中の温室効果ガス排出量の約2.5%を海運が占めます。海運により、毎年10億トンのCO2が発生しています。ハンブルクやロッテルダムなどの港町に住む人々は、特にその影響を受けています。電気またはハイブリッド推進システムが、その解決策になるでしょう。しかし、この変革は、本当に実現するのでしょうか。

なぜ船舶が電動化されているのでしょうか?

国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によれば、世界の商品の約80%を船舶が運んでいます。大洋を越える輸送は、2022年まで毎年3.8%増加すると見られています。しかし、船舶は大量の排出ガス、たとえば硫黄酸化物、窒素酸化物、すす粒子、細塵、さらには二酸化炭素(CO2)を発生します。IDTechEx Oneの市場調査員の計算によれば、1隻の大型船は、自動車7万台分のCO2、200万台分の窒素酸化物、250万台分の細塵および発がん性粒子を排出します。その結果として、世界中の窒素酸化物の15%を船舶が排出しています。そのため、船舶は、港町でのきわめて深刻な汚染源になっています。

大部分のコンテナ船、クルーズ客船、石油タンカー、貨物船は、重油を燃料としています。そして、その消費量は莫大です。世界中で9万隻の船舶が、毎年3億7,000万トンの燃料を消費し、2,000万トンの硫黄酸化物を排出しています。これに対して、内航海運では、燃焼時の有害性が重油よりも低い舶用ディーゼル油が燃料として使われています。さらに、有害な窒素酸化物の排出も少なくなっています。排出ガスは、環境に対して悲惨な結果をもたらします。世界の気候が変化し、海洋は酸性化しています。小児喘息や若年死亡などの健康リスクがあります。

従来のエネルギーを今まで通りに使い続けていれば、問題はさらに悪化するでしょう。大気汚染は、2050年までに少なくとも50%増加し、最悪の場合には、最大250%増加するおそれがあります。欧州議会による調査でも、2050年には、世界中のCO2排出量の約5分の1が海運により発生すると見られています。これにより、地球温暖化が2%を大きく下回るように抑制するというパリ協定の目標達成が危うくなります。

排出ガスを削減する方法

2018年4月に国際海事機関は、排出ガスの大幅な削減を決定しました。同機関に加盟する173ヵ国は、2050年までに、船舶からのCO2排出量を少なくとも2008年と比べて半減しようとしています。2018年3月から、すべての船舶の燃料消費量、すなわち排出ガス発生量の記録が義務づけられました。2020年以降は、硫黄含有量が0.5%以下の燃料しか使えません。現在の制限値は、その7倍です。

この野心的な計画を成功させるためには、考え方を変える必要があるでしょう。しかし、排出量を削減するために、どのような選択肢があるでしょうか。さまざまな可能性があります。たとえば、自動車と同じように、船舶に触媒コンバータを搭載する案も考えられます。これにより、有害な窒素酸化物を窒素と酸素に分解するとともに、すす粒子フィルタで微粒子を除去します。あるいは、きわめて汚染度の高い重油のかわりに、舶用ディーゼル油を使うこともできるでしょう。舶用ディーゼル油であれば、硫黄含有量が大幅に少なくなりますが、はるかに高価です。さらに、この2つの選択肢には、重大なデメリットがあります。いずれも、内燃機関、すなわち化石燃料を前提としていることです。しかし、ディーゼル油の原料となる鉱油は、現在の消費傾向が続けば、あと50年で枯渇する可能性があります。

したがって、他のエネルギー源、たとえば液化天然ガス(LNG)、水素、電気エネルギーのほうが、より高効率でクリーンになります。電気推進システムが持続可能だと言われているのは、陸と空だけではありません。多くの場合、石油に代わる環境にやさしいエネルギーは、内航海運に適していますが、遠い将来には外航船にも使われるようになるでしょう。バッテリ推進のメリットとして、電気は、石油、特に舶用ディーゼル油よりもずっと安価だということがあります。このため、IDTechExのアナリストは、完全電気推進船およびハイブリッド船の世界全体の売上高が増加すると見ています。その数値は、2027年までに200億ドルに達するでしょう。

船舶は長年にわたって「半電動」でした

船舶は、数千年にわたって風を動力としていました。しかし、19世紀初め以降、その役割は、次第にエンジンがとって代わりました。蒸気機関およびタービンの発明に続いて、20世紀には、さまざまな形態のディーゼルエンジンも使われるようになりました。これらのエンジンは、化石燃料、すなわち、ディーゼル油、重油、軽油を燃やします。昔から、この種の駆動方式は機械的です。ディーゼルエンジンがシャフトを駆動し、シャフトが船舶のスクリューを回します。そのエンジンまたは発電機が、船上のすべての電気システムで使う電気を発生させます。

しかし、数年前から多くの船舶は、部分的に電動化されるようになってきました。今では、外航船の80%がディーゼル電気推進システムを利用しています。ディーゼル発電機で発電して、その電気で電動機を駆動します。その電動機が船舶のスクリューを回します。この方式には、多くのメリットがあります。燃料を5~20%節約できます。また、電動機は、構成部品が少ないので、故障しにくく、摩耗や劣化も少なくなります。これは、エネルギー損失低減と効率向上につながります。しかし、これは、まだハイブリッド推進システムではありません。ハイブリッドと言えるのは、ディーゼルエンジンが作動していなくても、少なくとも一定時間航行できる場合だけです。この場合のエネルギーは、船舶に搭載したバッテリから供給されます。将来は、電動機へのエネルギー供給は、他の手段、たとえば、充電式バッテリ、液化天然ガス(LNG)、太陽光発電によって行われる可能性もあります。

世界初の電気推進船

世界初の電気推進船

世界初の電気推進船は、1839年にロシアのサンクトペテルブルクの運河で試運転されました。これに続いて、1886年には、シーメンス・ウント・ハルスケの試験船「エレクトラ(Elektra)」が完成しました。これは、ドイツのベルリン市が地域の公共交通用としてテストされました。この船は25人乗りで、時速14kmでシュプレー川を航行しました。しかし、技術が十分に発達していなかったので、バッテリが重すぎたため、開発は、それ以上進められませんでした。その25年後、電気推進船「アクムラートル(Akkumulator)」が、ドイツのバイエルン州にあるケーニヒス湖を航行しました。これもシーメンスが建造したものでした。この船は、38人乗りで、満充電の鉛蓄電池で最大100kmを航行できました。この考え方は成功しました。電気推進のプレジャーボートは、今でもケーニヒス湖を航行しています。1908年から1945年まで、電気推進フェリー「ゴーデスベルク・ニーダードレンドルフ(Godesberg-Niederdollendorf)」がドイツのライン川を航行しました。スウェーデンでは、「ハムンフェリアン(Hamnfärjan)」というフェリーが、1913年にマーストランドとコエンの島々の間で電気推進システムを使って運行を開始しました。

電気推進船はどのようにして動くのでしょうか?

内燃機関から無公害の推進システムへの変化には、さまざまな技術が関与しています。乗用車、商用車あるいは航空機で見られるように、ハイブリッド技術は、純粋な電気推進システムを実現するのがまだ難しい場合の暫定的なソリューションです。

どのような技術がすでに実現されているでしょうか。

    • ディーゼル電気推進:ディーゼル発電機で発電します。その電気が電動機を駆動し、その電動機が船舶のスクリューを回します。
    • ハイブリッド推進:内燃機関の他に、バッテリが船上に搭載されています。最大出力が必要なときには、短時間、追加でバッテリを作動させることができます。また、たとえば、ディーゼル発電機からの余分なエネルギーをバッテリに充電することもできます。これにより、ある程度の時間は、電気だけを使って航行可能です。
    • 完全電気推進:船上には内燃機関が搭載されていません。すべてのエネルギーは、バッテリから供給されます。

一部の内航船、主にフェリーやプレジャーボートは、すでに電気だけを使って航行しています。航行する距離が短いため、小さなバッテリを使えるからです。また、いくつかの造船会社は、ハイブリッドのクルーズ客船を計画しています。しかし、世界の大洋を航行する大型の貨物船については、電気推進はまだまだ遠い将来の話です。外洋で長距離を航行する船舶で使うためには、今のバッテリでは、効率が不十分であり、また重すぎます。

充電式バッテリのたゆみない開発

電気推進システムが船舶で「使う価値がある」ようになるには、バッテリの効率を大幅に改善しなければならず、この分野での研究開発が行われています。ロールスロイスは、「SAVe Energy」という電気推進船向けの新しいバッテリシステムの開発を完了し、2019年には販売を開始する予定です。同社は、2010年からエネルギー貯蔵システムを開発および製造していますが、今までは、バッテリを外部のサプライヤーから購入していました。水冷式のSAVe Energyは、高効率であり、特に柔軟性が高く、完全電気推進船またはハイブリッド船でも、そしてフェリー、クルーズ客船、貨物船でも使用できるということです。このシステムは、液化天然ガスまたはディーゼルエンジンと併用することも可能で、排出ガスを削減できます。最初のSAVe Energyは、ノルウェーの海運会社プレストフィヨルド(Prestfjord)に納入される予定です。ロールスロイスは、その販売数量が急増すると見込んでいます。2019年の1年間だけで、それ以前の8年分以上のバッテリを海運会社に納入する予定です。

代替推進技術

これ以外にも、ディーゼルに代わる環境にやさしい方式があります。たとえば、液化天然ガス(LNG)を使えば、燃焼時の汚染物質や二酸化炭素の排出量がより少なくなります。しかし、LNGにもデメリットがあります。一つには、LNGに適したインフラを港にも船舶にも整備しなければなりません。その一方で、ガスも化石燃料であるため、無限に入手できるわけではありません。さらに、生産から船舶での利用までの過程でガスが流出することがあり、これは、メタンスリップと呼ばれています。ドイツの自然および生物多様性保護連合(NABU)によれば、メタンは、地球温暖化に対してCO2の25倍の影響があり、温室効果の大きな原因となるとのことです。現在、外航船5万隻のうち200隻がLNGを燃料としているか、または、その準備中です。2018年末には、アイーダクルーズのアイーダノヴァ(Aida Nova)が、LNGを燃料とする最初のクルーズ客船として登場する予定です。その他の海運会社も、LNG推進システムを使ったクルーズ客船を計画中です。米国に本社があるロイヤルカリビアンは、将来、2隻のクルーズ客船を燃料電池で航行させることを計画しています。これらの船は、LNGを燃料としています。

技術グループのABBおよび燃料電池メーカーのバラードも燃料電池の開発を進めていますが、こちらは、LNGを使用しないクリーンな推進システムです。その燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換します。このエネルギーが電動機を駆動します。ここでは燃焼はなく、排出ガスも発生しません。ABBおよびバラードは、この既存技術を大型船にも使えるようにしたいと考えています。3MWの電力すなわち4,000馬力の出力がありますが、このシステムは、同程度の出力の内燃機関よりも大きくならない見込みです。最初は、大型客船での利用を目指しています。しかし、今のところ、このプロジェクトについて信頼できるスケジュールは、発表されていません。バラードには他の計画もあります。2021年には、世界初の水素推進の外洋フェリー「ハイシーズIII(HySeas III)」が、カナダ製の燃料電池を使ってスコットランドの2つの島の間を航行する予定です。

ソーラーボートも航行しています。双胴船「ソーラーウェーブ(SolarWave)」と「トゥラノール・プラネットソーラー(Tûranor PlanetSolar)」は、船に搭載した太陽電池からエネルギーを得ています。「トゥラノール・プラネットソーラー」は、2012年に、世界一周をした最初の太陽電池船です。その航海には585日かかりました。

重要な課題

将来、電気推進船が普及するためには、克服するべき重要な課題があります。それは、電気を蓄えるバッテリの効率を大幅に向上する必要があることです。今のところ、バッテリのエネルギー密度は、まだ低すぎます。すなわち、サイズと重量に対して、バッテリが十分なエネルギーを蓄えられないということです。大型の外航船は、1回の充電で長大な距離を航海しなければなりません。これに必要なバッテリは、まだ大きくて重すぎます。

さらに、港にもそれに適した充電インフラが必要です。クルーズ客船は、停泊中でもホテル設備を稼働させるために常に電気が必要なので、岸壁での電気供給がすでに問題になっています。多くの場合、客船は、原動機と補助電源装置で発電しており、汚染物質を排出しています。電気を港から直接購入すれば、はるかに環境にやさしくなるでしょう。しかし、このような岸壁での電気供給設備は、ほとんど見られません。したがって、港では、充電設備のために多額の投資が必要です。また、バッテリの価格は、多くの海運会社にとって、まだ高すぎます。ドイツにある海事技術および輸送システム開発センターのDSTによれば、バッテリは、電気推進船で最も高価な部品です。

しかし、フェリーや内航船であれば、電気推進システムは、今でも実現可能です。このような船舶は、頻繁に接岸するので、接岸するたびにコンテナに入ったバッテリを交換するか、または短時間充電して、さらに、夜間に完全に充電することができます。

稼働中の電気推進船およびハイブリッド船

いくつかのハイブリッド船および完全電気推進船がすでに稼働しています。それはどこにあるのでしょうか。そして、どれだけの距離を航行できるのでしょうか。

フェリーおよびクルーズ客船のハイブリッド技術

ドイツとデンマークの間を結ぶ「渡り鳥コース(bird flight line)」の4隻のフェリーは、すでにハイブリッド技術で航行しています。内燃機関と電気推進システムの組み合わせによって推進します。海運会社によれば、これによりCO2排出量は最大15%減少しています。ノルウェーのネーロイフィヨルドの「ビジョンオブザフィヨルド(Vision of the Fjords)」もハイブリッド船です。推進用の電気は、ディーゼル発電機およびバッテリから供給され、その容量は、600kWhです。バッテリは、船が航行している間に、ディーゼルエンジンからの余剰エネルギーによって充電され、接岸中は、水力発電によるクリーンな電気で充電されます。この船は、バッテリからの電力によって3時間航行可能です。

ノルウェーの海運会社フッティルーテンの探検船「ロアールアムンセン号(MS Roald Amundsen)」は、最初のハイブリッド推進探検船として、2019年に就航する予定です。この船は、リチウムイオン電池を使っており、電力で少なくとも30分航行することができます。乗客にとってのメリットは、ノルウェーの沿岸を、また、その後は南極の氷山の付近を、ガスを排出せず完全に静かにすべるように航行することです。

完全電気推進のフェリーおよびコンテナ船

今のところ完全に電気で推進されるのは、内国航路を航行するフェリーおよび小型客船が中心となっています。これらの船舶は、短距離を航行して頻繁に接岸します。したがって、エネルギー蓄積装置を迅速に再充電することができます。ノルウェーでは、2015年から、世界初の自動車フェリーの定期便が運航しています。全長80mの「アンペール(Ampere)」が、ソグネフィヨルドのラヴィクとオッペダールの間を、1日に34往復しています。1回に6kmを航行し、ほとんど無音で排出ガスもありません。このフェリーは、シーメンスおよびノルウェーの造船会社フィエルストランド(Fjellstrand)によって開発されました。リチウムイオン電池のパッケージが船内および両港に設置されています。1個の電池は、自動車用バッテリ1,600個分の容量があります。フェリーのバッテリは、それぞれの港で10分間停泊する間に一時的に充電され、さらに、夜間に完全に充電されます。この電気は、水力発電所から供給されます。アンペールは、軽量アルミニウムでできているため、11tのバッテリを搭載しているにもかかわらず、従来の自動車フェリーの重量の半分しかありません。これにより、年間数百万リットルのディーゼル油を節約でき、運航コストを約80%低減できています。そのCO2排出量は、従来のフェリーの約5%しかありません。

また、2018年の春から、完全電気推進フェリーがドイツのモーゼル川を航行しています。「ザンクタマリアII(Sankta Maria II)」は、乗客45人と自動車6台を運びます。電気の一部は、15個の太陽電池モジュールで発電され、2個のバッテリブロックに蓄積されます。その容量は、252kWhです。これにより、フェリーは6.5時間航行することができます。電気推進フェリーは、他の川でも航行しています。ドイツのヴィッテンにあるルール川では、2隻の電気推進船が利用されており、また、ベルリンでは、2014年から4隻の太陽電池船「フェーアベーア1~4(FährBär 1 to 4)」がシュプレー川を航行しています。アムステルダムでは、2025年までに、市内の運河で、すべてのディーゼル推進の客船およびフェリーの運航を禁止しようとしています。

中国は、世界初の完全電気推進コンテナ船を実現しました。最初は、中国南部の珠江で試験運用しています。この船は、わずか80kmしか航行できないので、内国航路だけで利用する計画です。1,000個のリチウムイオン電池を搭載し、26トンの重量で、2,400kWhの容量があります。ノルウェーも電気推進コンテナ船を開発しています。2020年には「ビルケラン(Birkeland)」が、化学メーカーであるヤラ(Yara)の工場からブレヴィク港まで、化学製品や肥料の運搬を開始する予定です。同社は、現在、この輸送にトラックを利用しており、1年間に約4万回走行しています。この船では、120個のコンテナを運搬可能です。

オランダの、ポートライナー社(Port-Liner)も完全電気推進貨物船を建造中です。この船は、ロッテルダム港を含む内国航路を航行する予定です。1回のバッテリ充電で34時間航行可能です。バッテリは、港で容易に交換できるコンテナに収容されています。したがって、即座に充電できる必要はありません。ポートライナーは、オランダおよびベルギーでの利用のために、今後数年で15隻の電気推進船を建造する予定です。

電気によるノルウェー旅行

電気によるノルウェー旅行

ノルウェーは、道路や空だけでなく水上でも、エレクトリックモビリティのパイオニアです。2015年から、世界初の電気推進フェリーの定期便が運航しています。2018年中頃に同国政府は、2026年以降、国内のフィヨルドを航行できるのは、ハイブリッドまたはバッテリ推進システムのフェリーおよび船舶に限るという法律を制定しました。これは、海運会社にとって大きな課題となります。たとえば、有名なガイランゲルフィヨルドには、毎年30万人の旅行者がクルーズ客船で訪れています。

しかし、ノルウェーでは、電気推進船について壮大な計画があります。ウルステイン(Ulstein)造船所は、海運会社カラーライン(Color Line)向けに、世界最大のハイブリッド推進客船を建造中です。この船は、最大2,000人の乗客を乗せてノルウェー南部を航行する予定です。船がサンデフィヨルドの港に近づくと、ディーゼルエンジンを停止させます。船は、電気を使って1時間航行することができます。フッティルーテンは、ロールスロイスと契約を締結しました。この契約により、最大9隻のクルーズ客船をディーゼルからハイブリッド推進システムに転換する予定です。運輸会社のフィヨルド1(Fjord1)は、2020年から7隻の電気推進フェリーの運航を計画しています。

インフィニオンは電気推進船にどのように貢献しているのでしょうか?

将来、より多くの商品や旅客が、電気推進船で輸送されるようになるでしょう。そうすると、パワー半導体デバイスに対する需要が高まります。これに関連して、インフィニオンは、水上についてもエレクトリックモビリティの開発を進めています。船舶は、パワートレインにパワー半導体デバイスを使わなければ、電気で航行できません。さまざまなメーカーが、インフィニオンのコンポーネントを使ったコンバータをシステムやエンジンに利用しています。そのコンバータは、バッテリから供給される直流をエンジンで使用する交流に変換します。

電気推進船およびハイブリッド船でブレークスルーが起こるためには、より高効率で軽量のバッテリが必要です。エネルギー密度は、過去30年間で大幅に増加しましたが、大型船が長距離を航行できるだけのエネルギー供給にはまだ十分ではありません。インフィニオンは、この課題の解決に貢献します。システムの効率向上により、バッテリユニットが小型軽量になっています。バッテリバランシングという技術により、バッテリ利用状況を改善できます。すなわち、より高効率で動作するようになります。バッテリバランシングにより、バッテリの容量および寿命は、10%以上増加します。

しかし、充電インフラおよびバッテリ充電高速化技術の開発は、きわめて重要です。ここでも、インフィニオン製品が貢献します。たとえば、SiC(シリコンカーバイド)のような革新的な材料によって、充電時間を大幅に短縮できます。SiCは、シリコンよりも高い負荷と電圧を扱うことができ、また、電力損失が少ないので、システムでの実装スペースも小さくてすみます。

概要

気候変動、法令、コスト。今後数年のうちに、海運は、環境にやさしい推進システムに変わらなければならないでしょう。したがって、これからは、ますます多くの電気推進フェリーや客船が現れるでしょう。しかし、船舶は、数十年にわたって使われます。一般的に、貨物船は30年、内航船は45年、客船はさらに長期間にわたって運航されます。すなわち、海運会社が船舶を更新するまでには、ある程度の時間がかかります。EU内だけでも、7,300隻の貨物船が使われています。オランダの電気推進船メーカーのポートライナーは、そのすべてが電気推進船に置き換えられるまでには、少なくとも現状のペースであれば、約50年かかると見ています。専門家の予測によれば、完全電気推進の外航船が実現するのは、少なくとも今から20年後になるでしょう。より良好に動作する代替推進システムができれば、その実現が早くなります。バッテリのエネルギー密度が増加し、また、バッテリの効率が向上すれば、将来は、多くの船舶が静かで環境にやさしい方式で航行しているでしょう。

すなわち、将来は、電気が船舶のスクリューも動かすようになるでしょう。しかし、開発は続きます。その次には、船長が乗船する必要がなくなるでしょう。このための具体的な計画が既に存在します。ノルウェーの企業であるヤラのコンテナ船、ビルケランは、まもなく少人数の乗組員で運航を開始し、さらにその後は 無人運航になる予定です。コロンブスから550年も経過していない2030年には、最初の大型鋼船が、自律運転かつ電気推進で、将来に向けて海に乗り出しているでしょう。

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