持続可能なテクノロジーによる気候保護

気候変動は、社会が直面する大きな課題の1つと見られています。気候保護のための大幅な方針変更によってのみ、この傾向を止めることができます。
各国が地球温暖化を最大2度に制限するという内容で、国際法により拘束力のある気候保護協定が2016年に発効しました。

その目標を達成するために、気候変動に関する政府間パネルは、発電、モビリティ、農業、産業プロセス、都市インフラについて根本的な変化が必要だと考えています。効果的な気候保護には、環境にやさしく持続可能なテクノロジーが必要です。

エネルギー効率と再生可能エネルギー

気候保護の成否は、再検討がエネルギー転換の一部として実施できるかどうかによります。実行可能な将来のエネルギー転換は、発電からその消費までを、持続可能で気候にやさしい方法で実施することによってのみ達成できます。その実行に重要な貢献をするのが、マイクロエレクトロニクスです。それは、絶えず増加する世界の人口に対して、効率的で環境にやさしい方法でエネルギーを供給することに役立ちます。電気エネルギーの需要は常に増加しており、将来、従来と同じ程度の化石燃料ではその需要に対応できなくなります。だからこそ、CO2を環境に放出しない再生可能資源の重要性が高まっているのです。1つの手がかりとして、風力発電所や太陽光発電所の利用があります。

石炭、ガス、原子力による発電は、蒸気タービンを使って熱を力学的エネルギーに変換し、さらに発電機を駆動して電気を生み出しています。蒸気タービンは、一定の速度で回転するように調節されていて、発生した電気の周波数が電力網に適合するようになっています。そうすることによって、電気を電力網に供給することができます。風力発電所や太陽光発電所には蒸気タービンがなく、また、風の強さや太陽光の強さが変化するので、一定の発電機出力を確保するために、インバータおよび多数のパワー半導体が必要とされます。その結果として、再生可能エネルギーによる電気を電力網に供給できるようになります。インフィニオンは、パワーエレクトロニクスシステムを提供することにより、この分野で重要な役割を果たしています。

私たちの世界がますます自動化されるにつれて、電動モータは、多くのシステムの中枢部を占めるようになっています。クレーン、ベルトコンベア、ロボットのいずれをとってみても、電動モータが今日の産業環境の重要な部分となっています。したがって、電動モータは、多くの電気を必要とします。電気モーターは、すでに世界の電力需要の40%以上を消費しています。ここに、大きな省エネの可能性があります。モータ速度を電子制御すれば、現在必要とされる出力に正確に適応できるようになり、消費電力を削減できます。この種の可変速モータコントローラには、多数の半導体が必要です。インフィニオンは、最先端の半導体システム分野のポートフォリオと専門知識によって、消費電力削減のためのサポートを提供します。

産業だけではありません。個人の家庭にある家電製品をより経済的にする可能性もあります。その原理は、産業用電動モータと同様です。利用状況や必要なパワーに応じて、モータコントローラで速度を調節するのです。食器洗浄機、洗濯機冷蔵庫に内蔵されたセンサーが、温度、湿度、モータ速度などの数値を計測します。マイクロコントローラが、そのデータを使って理想的な速度を計算します。モータとのインターフェイスとなるパワー半導体は、コントローラの信号を増幅します。その結果として、家庭での電力消費が大幅に削減されます

環境にやさしいモビリティ

ある問題が、環境にやさしい持続可能な生活様式と密接な関連を持っています。それがモビリティです。私たちは、将来、どのようにして動き回るのでしょうか。世界の人口増加および工業化の進展によって、種類を問わず輸送手段に対する需要が拡大することは確かです。飛行機、鉄道、自動車を使って移動したい人が、どんどん増加しています。それと同時に、自動車業界は、車から排出される汚染物質を減少させるための厳しい規制に適合しなければなりません。1つの解決策がハイブリッドおよび電気駆動の自動車です。これらの車両は、汚染物質排出を大幅に削減する一方で、将来にも私たちが移動手段を確保するための一助となります。

電気自動車は、環境にやさしいだけでなく、メンテナンスや修理をあまり必要としません。交換が必要な部品も少なくなります。また、電気自動車のパワートレインは、はるかに高効率です。供給されるエネルギーと利用可能なエネルギーの比率は、従来の内燃機関では最大45%であるのに対して、電気自動車では最大90%まで高めることができます。エレクトロモビリティも、特に商用車分野においては、将来のモビリティの重要コンポーネントです。電気駆動のバス、トラック、建機は、排出ガスがはるかに少なく、低騒音です。

スマートホーム、スマートシティ、スマートカー

モノのインターネット(IoT)およびビッグデータの一部としてのデータ収集、転送、処理は、気候にやさしい生活様式の実現に必要な概念です。これは、私たちの住宅で始まっています。私たちのマンションや家をネットに接続されたスマートホームに変えるためには、IoTが役に立ちます。その結果として、個人の生活でのエネルギー管理を最適化できます。エネルギーを大量消費するものを特定して取り換えることができると同時に、洗濯機や食器洗浄機を予防保全することにより、故障も防止できます。また、玄関を出てスマートシティに向かった後も、これが継続します。

交通データは、ビッグデータによってリアルタイムで分析されます。その結果、交通渋滞が早期に特定されて、コネクテッドカーは、自律的に他の経路を選択し容易に渋滞を回避します。空きのある駐車場を探すことも、あまりエネルギーを使わずにすみます。自動運転車は、インフラに接続しているおかげで、次の空きスペースを見つけて直接そこへ向かうことができるのです。都市のインフラやエネルギーシステムは、IoTおよびビッグデータのおかげで、よりスマートでエネルギー効率の良いものになります。最後に重要なことですが、これは、エネルギーの生成、蓄積、配送にも言えることです。

必ず必要なもの:データセキュリティ

最先端テクノロジーの助けを借りて未来の生活を環境にやさしく持続可能にするために、モビリティ、インダストリー4.0スマートホーム 、および通信全般は、インターネットに接続し、また相互に接続しなければなりません。この種の接続されたインフラに対するサイバー攻撃の増加は、この状況においてセキュリティが重要であることを示しています。データ改ざんやサイバー攻撃から電子システムを効果的に保護することは、今まで以上に重要になっています。個人およびメッセージを送信するデバイスについては、その身元を認証するべきです。データおよびデバイスは、許可されていない変更に対して保護されるべきです(完全性保護)。機密情報は、秘密を守って保管し、認証されたデバイスまたは個人だけが平文で読めるようにするべきでしょう。 インフィニオンのセキュリティソリューションには、それを正確に実現し、さらに、さまざまなアプリケーションに最適化された暗号方式が実装されています。そのソリューションとして、サーバなどITインフラ全般向けのセキュリティチップから、個別のルータやタブレット向までの製品をそろえています。

 

更新:2021年7月