運転支援から自動運転へ

自動運転のメリット

ますます多くの人が都市に移住し、ますます多くの商品が道路上を輸送されています。自動運転の乗用車や輸送車は、都市化とグローバル化に関連して生じる課題を解決します。

自動運転は、先進運転支援システムあるいはADASと呼ばれることもあります。自動運転によって、交通量の減少、燃料消費と排出ガスの削減が実現し、駐車場にまつわる問題も過去のものとなります。完全自動運転車が実現すれば、運転者は、移動時間を、たとえばリラックス、仕事、電話会議、オンラインショッピング、新聞の閲覧など、他の目的のために自由に利用できます。

自動運転車の電子システムの反応速度は0.1秒であり、人間が1.4秒かかるのに比べて、はるかに速くなっています。他の車両やインフラとネットワーク化することで、潜在的な危険状態を早期に検出し、先を見通した運転が可能になります。マッキンゼーの調査によれば、現在の交通事故の約90%は、運転者の過失が原因となっています。自動運転車であればこれを防止できる可能性があります。

国際的な6段階の分類方式で自動化レベル3に相当する最初の車が、すでに市場に出ています。レベル0とは、支援システムが全くない車両のことです。

自動化の度合いは、1から4に向かって高くなり、運転者から支援システムに委譲されるタスクの数が増えていきます。レベル5は、完全自動運転を意味しており、あらゆる周囲環境、あらゆる状況で無人運転が可能になります。このレベルでは、いかなるときでも、運転者が車を制御する必要はありません。専門家の予測によれば、レベル5に分類される最初の自動運転車は、2025年ごろまでに量産可能になると見られています。

自動運転を実現する技術

自動運転車が自律的に道路上を通行するためには、さまざまな基本機能を備えていなければなりません。周囲の状況を認識し、収集した情報を使って適切な判断を行い、それに従って動作しなければなりません。

周囲状況の認識

自動運転車は、周囲の状況を検出するためのさまざまな種類のセンサーを装備しています。超音波センサーは、駐車などの状況で障害物を検出します。レーダーセンサーは、遠距離にある車両や歩行者を検出し、自車両の動きに対するその速度や位置を計測します。ライダー(LIDAR)センサーは、目に見えないレーザー光で周囲をスキャンして、高精度な周囲の3D画像を生成します。カメラシステムによる画像センサーは、物体の色や質感など、画像パターンと呼ばれる重要な視覚情報を取得します。このようなセンサーは、適用対象分野ごとにそれぞれ個別の特長を備えています。しかし、センサーフュージョンと呼ばれるプロセスを使って、さまざまなセンサーからの情報を結合することによって初めて、正確で完全に近い、信頼できる周囲の画像を生成できるようになります。

通信する車両

自動運転車の周囲画像は、他の車両や交通インフラからの情報を利用して増強することもできます。また、車両は、特別な車載用Wi-Fiから第5世代移動通信システムにいたるまで、さまざまな通信チャネルを通じてネットワークに接続されています。この通信形態は、V2X(車車間通信)と呼ばれており、車両が、他の車両やインフラまたは交通管制システムから交通情報を受信して、その情報を使って制御できるようになっています。このようにして、運転者は、走行経路上の事故、道路凍結、故障車両、渋滞の最後尾などの危険な状況について、それが車両上のセンサーの検出範囲外の事象であっても、警告を受信することができます。

インテリジェントな判断

センサーが提供する膨大な情報を処理するためには、高性能なマイクロコントローラやマイクロプロセッサを使用する必要があります。この場合、さまざまな情報を可能な限りリアルタイムで計算すると同時に、きわめて高度な安全関連規格や要求事項に適合しなければなりません。最終的には、車両の安全運行のために、その判断が重要になってきます。また、多くの専門家は、車両が人間の助けを借りずにインテリジェントに動作するためには、人工知能が重要だと考えています。自動運転車は、機械学習機能を使って、すでに収集して処理したデータから新しい知識を生成し、常に知識ベースを拡充していきます。この自律的な学習を使わなければ、理論上可能なさまざまな状況について、論理的な対応をプログラムで実現するという課題は、まず解決できないでしょう。

ハッカーの攻撃に対する保護

しかし、車両の通信インターフェイス数が増加するということは、サイバー攻撃の入口となる可能性が拡大することにもなります。そのため、車両内部についても、また、車両とクラウド間(V2X)についても、通信チャネルの保護が必要になります。この保護は、ハードウェアトラストアンカーを利用しており、主として、保護されたキーストアおよび暗号化処理のためのハードウェアアクセラレータで構成されています。それは、マイクロコントローラに一体化されたハードウェアセキュリティモジュール(HSM)として、または個別の(ディスクリートの)セキュリティモジュールとして実現されています。

車載セキュリティへのインフィニオンの貢献

車載セキュリティ

モビリティの将来を左右するのは、コネクテッドカーです。未来の自動車は、フルインターネットアクセスが可能で、他の車両とのメッシュ通信をサポートし、道路インフラと交信して、今よりもずっと便利で直感的でユーザー中心の運転体験を実現しているでしょう。

しかし、システムの複雑度が増大すると、処理したり共有したりするデータの量も増大します。このように車両内部および外部との通信レベルが拡大することにより、サーバー攻撃のリスクが高まります。不正操作やハッキングの攻撃は、秘密情報、さらには道路の安全を脅かす可能性があります。

インフィニオンは、セキュリティ マイクロコントローラの世界市場で15年連続して首位に立ち、さらに車載分野で40年以上の経験を持っており、拡大するセキュリティ課題を対処ために十分な知見があります。インフィニオンは、市販品の中でもきわめて幅広い範囲にわたるセキュアエレメント、さらには盗難、偽造、改ざんを防止するセキュリティモジュールを内蔵したマイクロコントローラなどを提供しています。

インフィニオンの車載用セキュリティに関する「ディスカバリー」ストーリーでは、車の安全安心に対するインフィニオンの貢献をご紹介します。

機能安全

しかし、安全確保の問題は、データに限られるものではありません。システムが故障したときに人間のオペレータが介入できないのであれば、技術自体の信頼性がとくに高くなければなりません。そのための要求事項や手順は、機能安全という概念のもとにまとめられており、道路走行車両の開発および製造での要求事項については、ISO 26262で規定されています。自動運転機能に特化して設計された半導体は、機能安全に対応する車両の基礎となるものです。その半導体は、堅牢で信頼性が高いというだけでなく、データ処理中にそれ自体を監視するようになっています。

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自動化拡大の5つのレベル

運転者は、縦方向の誘導(速度維持、加速、制動)および横方向の誘導(操舵)に責任を持ちます。運転に介入するシステムは存在せず、単なる警告システムだけがあります。

システムが車両の縦方向または横方向の誘導を引き受けることができますが、運転者は常にその他の操作を対応します。

特定のアプリケーションについて、運転者は、縦方向および横方向の誘導をシステムに引き渡せます。運転者は、いつでもすぐに車両の制御権を取り戻せる状態でなければなりません。

システムは、システムの限界を独自に認識します。運転者は、車両の縦方向および横方向の誘導を永続的に監視する必要はありません。しかし、運転者は、システムに要請された場合は、一定の余裕時間内に運転を交代できる状態を保っていなければなりません。

運転者は、特定のアプリケーション(道路状況、速度範囲、環境条件)について、運転タスク全体をシステムに委譲できます。

あらゆる道路状況、あらゆる速度範囲、あらゆる環境条件において、車両が完全に自律的に運転タスクを実行できます。

更新:2017年12月