インフィニオンの8インチ センサチップ、CERN(欧州原子核研究機構)で宇宙の神秘を解き明かす可能性

2016/04/26 | ビジネス&フィナンシャルプレス

2016年4月26日、ミュンヘン(ドイツ)/フィラッハ(オーストリア)

暗黒物質の存在証明に寄与できるものとして、Infineon Technologies Austriaとオーストリア科学アカデミーの高エネルギー物理学研究所(HEPHY)が共同開発した、8インチまたは15cm×10cmの独自センサチップがあります。これら数万個ものシリコン部品は、近い将来、CERNで使用される見込みで、最大6インチ寸法の旧型センサに比べて、より経済的な生産が可能です。さらに、一貫した放射線への耐性が向上しているため、旧世代の製品に比べて経年劣化が抑えられます。予定される実験は、高耐性のセンサなしには、ほぼ実現不可能なものです。

CERNでの実験は、物質の構造と素粒子間の相互作用を分析するものです。その際、陽子は光速近くまで加速され、衝突が行われることで、さまざまな検出器によって特性を再構成可能な、新たな粒子が生み出されます。CERNの実験物理部門責任者のマンフレッド クラマー(Dr. Manfred Krammer)氏は、次のように述べています。「素粒子物理学と宇宙学の世界では、人類が未だ答えにたどり着いていない、未解決の疑問が多数存在しています。こうした領域で新たな進歩を達成するには、新世代の素粒子センサが必要です。インフィニオンのようなハイテク企業との協力により、私たちは必要なテクノロジーを開発できます」


地下100メートルに位置する、アパートほどの高さの実験施設


インフィニオン製センサを採用予定の2つの検出器は、ATLAS(トロイダルLHC装置)とCMS(小型ミューオンソレノイド)と呼ばれるもので、現在も試験中です。素粒子物理学の実験は、超大型カメラによるものです。シリコン検出器は、自らを通り抜けた素粒子を登録します。2つの実験施設の高さはそれぞれ20m(ATLAS)、15m(CMS)で、いずれも地下100メートルに位置しています。両施設はほぼ不眠不休で数年間稼働しており、毎秒4,000万件もの実験を実施しています。双方は現在、最大1,000m2の総面積による、チップ生産の可能性について協議を行っています。

しかし、研究者には、大変な粘り強さが求められます。インフィニオンのパワーマネジメント&マルチマーケット事業部プレジデントのアンドレアス ウルシッツ(Andreas Urschitz)は、次のように述べています。「基礎研究から日常生活を変えるまでには、数世代を要します。これによって、人々が研究分野から離れるようなことは、あってはなりません。キュリー夫人がいなければX線は存在せず、マクスウェルがいなければ携帯電話はありませんでした」。マリー キュリー氏(Marie Curie)は1898年、「放射線」の用語を考案しました。スコットランドの物理学者、ジェームズ クラーク マクスウェル(James Clerk Maxwell)氏が1861年から1864年にかけて説明した電気磁力に関する方程式は、すでに150年前のものとなっています。

CERN向けに開発されたテクノロジーは、10年以内にはがん患者の治療に役立つ可能性があります。複数の研究グループは現在、陽子CT(コンピューター断層撮影)の試験を行っています。この医療分野の撮影法は、CERN向けのチップ技術と同じ基礎とベースとしています。インフィニオンとHEPHYが開発しているような、大型のシリコン検出器は、放射線治療の断面画像の生成にも応用できると考えられます。この結果、腫瘍の位置特定が向上することで、従来型のX線に比べて健常組織への損傷を抑えられます。放射線負荷については、40分の1に軽減される見込みです。

研究の世界では、インフィニオンによるセンサの生産はすでに大きな注目を集めています。商業関連の研究に関する民間の賞としてはオーストリア最大となる、2014年度「Houska Award」の授賞式にて、インフィニオンとHEPHYのプロジェクトは準優勝を受賞しました。

 

インフィニオンについて

 インフィニオンテクノロジーズは、暮らしをより便利に、安全に、エコに革新する半導体分野の世界的リーダーです。明るい未来の扉を開く鍵になる半導体をつくることが、私たちの使命だと考えています。2015会計年度(9 月決算)の売上高は58億ユーロ、従業員は世界全体で約3万5,400人。インフィニオンは、ドイツではフランクフルト株式市場(ticker symbol:IFX)、米国では店頭取引市場(ticker symbol:IFNNY)のOTCQX に株式上場しています。

日本法人サイト: http://www.infineon.com/jp

本社サイト: http://www.infineon.com (英語)

Information Number

INFXX201604-047

Press Photos

  • ウェハ中心部にある寸法15cm×10cmの素粒子ストリップセンサ(著作権:Infineon Technologies Austria AG.)
    ウェハ中心部にある寸法15cm×10cmの素粒子ストリップセンサ(著作権:Infineon Technologies Austria AG.)
    Infineon_Sensorchip_1

    JPG | 1.32 mb | 2126 x 1417 px

  • 寸法15cm×10cmの素粒子ストリップセンサ(著作権:Infineon Technologies Austria AG.)
    寸法15cm×10cmの素粒子ストリップセンサ(著作権:Infineon Technologies Austria AG.)
    Infineon_Sensorchip_2

    JPG | 564 kb | 2126 x 1417 px

  • CMSの実験で使用される世界最大のシリコン追跡検出器の設備(著作権:CERN)
    CMSの実験で使用される世界最大のシリコン追跡検出器の設備(著作権:CERN)
    CERN_1

    JPG | 1.93 mb | 2126 x 1417 px

  • 設置作業時に開かれる、CMSトラッカーのエンドキャップ (著作権:CERN)
    設置作業時に開かれる、CMSトラッカーのエンドキャップ (著作権:CERN)
    CERN_2

    JPG | 1.37 mb | 1545 x 2126 px

  • CMSの内部トラッカー・バレルの前半部 (著作権:CERN)
    CMSの内部トラッカー・バレルの前半部 (著作権:CERN)
    CERN_3

    JPG | 1.57 mb | 2126 x 1423 px