インフィニオン、耐量子暗号技術の研究を加速

2020/03/06 | マーケットニュース

2020年3月4日、ミュンヘン(ドイツ) 

量子コンピュータは、センシティブな個人データの暗号化に現在使用されているRSAやECC*などの暗号化システムを無効化するおそれがあります。その結果として、モバイル通信、IoT(モノのインターネット)、パブリックドメインにおけるデジタル通信およびデータ交換の機密性が脅威にさらされるかもしれません。この重大な課題に対処するため、大手業界プレイヤーやインフィニオン テクノロジーズなどのセキュリティのエキスパートに加えて、研究機関が2件の新たな研究プロジェクトに着手しました。プロジェクトの目的は、チップベースの耐量子セキュリティ機構の開発です。いずれのプロジェクトも、ドイツ連邦教育科学研究技術省の助成を受けており、以下のテーマに重点を置いています。 

産業用制御システムとスマートカードの長期的なセキュリティ

Aquorypt」プロジェクトは、組込みシステム用の耐量子暗号技術の適用可能性と実装について調査します。プロジェクトチームが、十分なセキュリティレベルを持つ手順を評価し、これをハードウェアとソフトウェアに効率的に実装します。この研究結果を活用して、産業用制御システムやスマートカードを用いたセキュリティアプリを保護できる可能性があります。これらの組込みシステムのセキュリティ要件はほぼ同じですが、技術的な制約に違いがあります。産業用制御システムは短い時間的制約の中で稼働し、長い寿命を特徴とします。対して、デビットカードやクレジットカードなどの、スマートカードを用いたセキュリティアプリは、少ない記憶容量と低い演算能力での対応が求められます。 

医療機器の組込みシステムの長期的なセキュリティ

PQC4MED」プロジェクトは、医療機器の組込みシステムを対象に体系的アプローチを採用しています。すなわち、量子コンピュータがもたらす脅威に対抗するには、ハードウェアと関連ソフトウェア両方を通じて、暗号化手順の交換を可能にしなければなりません。現在検討されている様々な耐量子署名や暗号化手法を評価し、見本として実装を行っています。医療技術分野のユースケースに基づき、このソリューションを検証する予定です。 

継続的な研究とイノベーションを通じたセキュリティ市場の形成

最新の タレスの「データ脅威レポート」によると、調査した企業の72%が、量子演算能力が今後5年以内に自社のデータセキュリティ オペレーションに影響を及ぼすと考える一方、27%がこれを来年の脅威とみなしています。このことから、量子コンピュータの登場に対応して企業が暗号化技術を向上させる必要性が示されます。コネクテッドビークル、産業用ロボット、モバイル通信、その他多くのアプリケーションなど、ほぼあらゆる分野で、将来も利用できる堅牢性あるセキュリティソリューションが求められています。 

ドイツの半導体メーカーであるインフィニオンは、2017年以来、耐量子暗号技術の開発の最前線に立ってきました。インフィニオンは、耐量子暗号技術New Hope および SPHINCS+の開発と標準化に貢献しています。どちらも、米国国立標準技術研究所(NIST)が開始した国際標準策定プロセスに含まれています。このプロセスでは当初、69件の暗号方式が提案され、現在は26件が残っています。NISTの第3回検討会は2020年6月に開始され、耐量子計算機暗号(PQC)の基準案は最短で2020年までに策定される見込みです。 

New Hopeは、Ring-Learning-with-Errors (Ring- LWE) 問題に基づく鍵交換プロトコルです。これは、NISTのセキュリティ強度カテゴリーで最も高い5を達成し、バックドアや、いわゆる「all-for-the-price-of-one」攻撃から効率的に防御します。SPHINCS+ は、従来のセキュリティ仮説に基づくステートレスなハッシュベースの署名方式です。 

インフィニオンは常に、米国のNISTに加えて、国際標準化機構(ISO)、欧州電気通信標準化機構(ETSI)などの国際団体のオープンな業界基準の開発と適用に取り組んできました。 

詳しくは www.infineon.com/pqcおよび www.infineon.com/cybersecurityをご覧ください。 

*RSA – リベスト・シャミア・エーデルマン暗号; ECC – 楕円曲線暗号

Information Number

INFDSS202003-035j

Press Photos

  • Infineon has been at the forefront of post-quantum cryptography development since 2017 and contributing to the development and standardization of the cryptographic schemes New Hope and SPHINCS+.
    Infineon has been at the forefront of post-quantum cryptography development since 2017 and contributing to the development and standardization of the cryptographic schemes New Hope and SPHINCS+.
    Infineon_Post-Quantum-Cryptography

    JPG | 1.1 mb | 2126 x 1378 px