ESSCIRC 2003においてインフィニオンが高性能通信向け回路開発の成果を発表

2003/09/18 | マーケットニュース

インフィニオンテクノロジーズの今回のニュースアラートでは、9月16日~18日にポルトガルのリスボンで開催されたESSCIRC 2003におけるインフィニオンの発表の概要をご紹介します。E SSCIRCは、固体電子回路に関する最近の進歩について発表と討論を行うフォーラムであり、欧州で毎年開催されています。ESSCIRC 2003における発表のメインテーマとなったのは、ア ナログおよびデジタル回路、高周波および通信回路、ミクストシグナル回路、マイクロシステム、データ変換器です。

今年のESSCIRCでは、インフィニオンは先進半導体技術の開発成果を軸に、6件の論文と1件のポスターを発表しました。表題と要約を、以下にご紹介します。

50_出力の5.3 GHz完全集積型SiGeバイポーラ・パワーアンプ(2.4V、0.3W)
この論文は、先進的な0.35μm SiGeバイポーラ技術によって実現した、4.8~5.7GHz用の高周波パワーアンプを紹介しています。この平衡型2段プッシュプル・パワーアンプでは、2 個の集積化トランスを、入力の平衡不平衡変成器(Balun)およびステージ間のマッチング用に用いています。さらに、3本のコイルが、出力のLC平衡不平衡変成器と高周波チョーク用として内蔵されています。従 って、このパワーアンプは、外付け部品が一切不要です。5.3 GHzにおいて、供給電圧1.0V、1.5V、2.4V時に、それぞれ、出力電力17.7dBm、21.6dBm、25dBmを達成しています。対 応する電力効率(PAE)は、15.6%、22.4%、24%です。小信号利得は26dBです。

0.13_m CMOS技術による低電力分周器としての50GHz直接注入同期発振器トポロジー
この論文は、よく知られているLC発振器のLCタンクに直接結合されるMOSスイッチをベースとした、注入同期発振器(Injection Locked Oscilator)の トポロジーを紹介しています。この直接注入同期スキームにより、極めて低い入力容量とすぐれた高周波特性が達成されました。直接同期の性能が、0 .13μm標準CMOS技術で作成した2つの試験回路によって検証されました。この発振器のうち一つは、消費電力が僅か3mWで、50GHzを同期範囲80MHzで2分周します。Q 値がより低いもう一つの発振器は、消費電力が同じく3mWで、42GHzを同期範囲1.5GHzで2分周します。

シグマ・デルタ変調ループを備えたダイレクトコンバージョン方式のGSM 用シングルチップ4バンドCMOSトランシーバ
この論文は、新しいシグマ・デルタ変調器アーキテクチャを採用した、標準0.13μm CMOS技術による完全集積4バンドGSMトランシーバについて述べています。このデバイスは、全 帯域にわたる位相誤差が1.6°以下でGSM仕様を満足します。完全集積されたVCOは、周波数4GHzで動作し、正確な周波数は10ビット精度で設定できます。送信側の出力電力は8dBmで、位 相雑音が低いため、送信SAWフィルタは不要です。受信側は57dBの一定した利得を持ち、14ビットADC内蔵のベースバンド・プロセッサに適しています。48ピンVQFNパッケージに格納されたこのチップの、 全帯域にわたる位相雑音の標準値は3dB以下です。消費電力は、トランジット・モード時が210mW、レシーバが250mWにすぎません。

CMOS デバイスのディスタンス・ミスマッチとペア・マッチングの比較
この論文は、0.13μm CMOS技術を適用したレジスタとトランジスタに関して、ディスタンス・ミスマッチとペア・マッチングの比較について述べています。デ バイスのミスマッチは各デバイス間の空間的距離に依存することを、統計的な勾配パラメータ(gradient parame-ter)を用いて解説しています。チ ャネルの短いトランジスタや幅の狭いレジスタを使用する場合、ミクストシグナルICの性能に関して、この勾配パラメータを考慮する必要があります。この勾配パラメータは、チャネル長など、デ バイスのクリティカルな幾何パラメータの増加関数(increasing function)です。この論文は、ディスタンス・ミスマッチとペア・ミスマッチの量的比較を示しています。その結果は、回 路シミュレータのための基本的なインプットとなるもので、回路設計の際の指針となります。

0.13_m CMOS技術による分解能11ビット、帯域幅15MHzのシグマ・デルタADC
この論文では、0.13μm CMOS技術で作られた、広帯域の連続時間シグマ・デルタADCを紹介しています。アクティブ・ブロックを構成するのは、通 常のしきい値電圧のデバイスだけです。この回路は、ビデオや無線基地局などの広帯域アプリケーションをターゲットとしています。この四次アーキテクチャでは、オ ペアンプとRC回路網をベースとしたループフィルタと、4ビットの内部量子化器(Quantizer)を採用しています。このコンバータはクロック周波数300MHzで動作し、1 1ビットのダイナミックレンジを達成し、帯域幅は15MHzです。供給電圧1.5V時の電力損失は70mWです。

0.13_m CMOS 技術による20Gbps、82mWの1段 4:1マルチプレクサ
この論文は、0.13μm CMOS技術で作られた、高速で低消費電力の完全集積4:1マルチプレクサを紹介しています。この回路には、4つのデータストリームを1段で多重化する、新 しいアーキテクチャが採用されています。デューティ比25%のパルスが入力をセレクトし、それらの入力がMUX出力時に現れます。ゲート数が少ないので、低消費電力設計が可能です。また、タ イミング条件が緩和されるのが、1段MUXトポロジーのもう一つの長所です。このMUXは、DCから最大20Gbpsまで動作し、消費電力は僅か82mWです。

0.13_m CMOS 技術によるUMTS用10ビット、3mWの連続時間シグマ・デルタADC
このプレゼンテーションは、UMTS用の分解能10ビットの連続時間マルチビット・シグマ・デルタADCについて述べています。電 力効率のすぐれた三次マルチビット変調器が実現されました。すなわち、フィードフォワード・アーキテクチャと量子化器を採用することより、損失電力をマッチングするダイナミック・エ レメントを低減することができます。この0.13μm CMOS技術によるシグマ・デルタADCは、クロック周波数104MHzで動作し、信号帯域幅2MHzにおいてピーク信号対雑音比(SNR)6 0dBを達成し、供給電圧1.2V時の低消費電力は僅か3mWです。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCPR200309.125