インフィニオンが遺伝子発現解析用のバイオチップと解析システムを供給

2003/03/26 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、遺伝子発現解析用の新しい統合システムソリューションに関する情報を公表しました。これは、遺伝子ハイブリダイゼーション技術と光学評価技術を用いて、生 化学解析の時間とコストを大幅に低減できるのを最大の特長としています。

新システムは「MetriGenix 4D Array System」で、インフィニオンが米国のパートナー、メトリジェニックス社(MetriGenix, Inc.)と共同開発した「 フロースルーチップ(Flow-Thru ChipTM)」技術が、その中枢部分を成しています。このシステムは、薬剤開発やその関連分野に従事している研究者にとって、使いやすく、信頼できるツールです。マ イクロ流体システムにおける試験や解析向けの、このユニークなプラットフォームは、他の市販バイオチップシステムに比べて、大きな利点を発揮します。例えば、プローブと標的の結合能の向上、均 一なハイブリダイゼーション・キネティクス、試料の大きさと分量の低減、出力データの信頼性と再現性といった点で優れています。この総合システムには、遺伝子ハイブリダイゼーションおよび検出ステーション、ソ フトウェア、アッセイ(効力検定)用バイオチップをはじめ、他の試験用消耗品も含まれています。インフィニオンが欧州諸国、メトリジェニックスが米国その他地域で、それぞれ販売を受け持ちます。

インフィニオンは、既存の半導体技術のさらなる開発を推し進めた結果、バイオテクノロジー分野で利用されるコスト効率のよいチップベースのソリューション生産を実現しました。メ トリジェニックスのようなパートナーの専門ノウハウと組み合わせることで、当社は、革新的な技術を用いた総合システムソリューションを提供できます。この革新技術は、薬剤開発を簡素化、改善、加速するのみならず、 ひいては医療診断やその関連分野向けのより廉価な新技術の開発にもつながります。

製薬会社は現在、1つの新薬の開発と試験段階に平均12~15年を費やしています。その過程が短縮できればできるほど患者への治療成功のチャンスが高まるので、イ ンフィニオンの新チップと試験システムは医薬品業界に大きく貢献します。この新チップをベースとした解析手段を使えば、製薬業界は新薬開発期間を1~2年短縮できるものと見込まれます。ブロックバスター薬( ポピュラーで広く使われている医薬品)の場合、市場投入までの期間を1年短縮するだけで、5億ユーロもの増収につながる可能性があります。

様々な利点を持つチップ構造
フロースルーチップはシリコン製の小さなサンプル基板であり、その上で数百の分子レベルの遺伝子試験を同時に行えます。特殊なエッチング・プロセスを用いて、直径10μm、深さ500μm( 0.5mm)のマイクロチャネルが、チップ表面に1cm2あたり約100万本形成されています。フロースルーチップ上では、マイクロチャネルは、プローブ分子1個につき約100本ずつあてがわれます。チ ップ単体としては、代表的には、100~400個のプローブ分子または遺伝子断片(スポット)に対応する構成となります。プローブ分子は、マイクロチャネルの表面に、各チャネルの長さ全体にわたって、結合します。 このため、フラット表面型のバイオチップと比べると、結合能は100倍も高まります。スポットの大きさとスポットの形態はこのマイクロチャネルの構造によって決まるので、プ ローブを試験エリアにどう配置するかが一律になるのも、フロースルーチップの長所です。

メトリジェニックスは、各種の遺伝子プローブを、自社のプローブ設計プログラムを使って設計しています。現在提供できる各種試験は、オリゴヌクレオチド・プローブをベースにしています。これは、オ リゴヌクレオチド遺伝子断片なら、スプライス・バリアントや、互いに緊密な関係にある遺伝子と調整機構が異なる遺伝子との差別を考慮することにより、特定遺伝子を対象とした設計ができる、と いうことが知られているからです。

フロースルーチップのマイクロチャネル構造は、現在使われているプレーナ構造バイオチップ技術と比べて、試験時間の迅速化をもたらします。試験は、標 識化された標的物質で作られたハイブリダイゼーション溶液を、チップ内に「フロースルー(通過)」させることによって行います。ハイブリダイゼーションはマイクロ流体システムによって起こり、試 料の大きさが小さくても、ハイブリダイゼーションは均一になります。直径10μmのマイクロチャネル内を標識化された標的物質が通り抜けるため、標的物質が、それと符号するプローブに近づく可能性が高まります。こ のため、フラット表面型の試験法では18時間以上かかるハイブリダイゼーションの所要時間は、4時間に短縮されます。

この「4D Array System」は、製薬会社やバイオ企業が手がける、バイオ研究や薬剤スクリーニング、遺伝子診断、医療診断などに利用されます。システムは、バ イオチップとハイブリダイゼーション・ステーションおよび検出ステーションで構成されます。また、バイオチップは、試験物質や試薬を送達するための流体ウェルをハウジングしたカートリッジ内に収納されています。

「4D Array」で提供される各種試験のターゲットとなるのは、研究用マイクロ流体工学的アレイの最大のアプリケーション分野である発現と発見(expression and discovery)です。研究者は、心血管系疾患、中枢神経障害、腫瘍(しゅよう)、自己免疫疾患の4つの主要分野の製品にアクセスできます。加えて、研 究者がターゲットを特定の関心分野に絞り込めるよう設計された、カスタムアレイ(Custom Array)も用意できます。「MetriGenix 4D Universal 96 array」は、SNP( 1塩基変異多型)とゲノタイピングをターゲットとしています。

展 望
バイオチップは、その基幹技術とは別に、評価方法が光学式か電子式かによっても区別されます。インフィニオンとメトリジェニックスが共同開発した「4D Array System」の ような光学式のバイオチップシステムとマッチング方式解析システムは現在、すでに販売されています。インフィニオンは、電子式DNAチップも開発していますが、これは2~3年以内に市場に投入される予定です。イ ンフィニオンの第3の技術である「ニューロチップ(Neuro-Chip)」は研究段階にあります。

インフィニオンにとって、ヘルスケア産業における最も重要の将来トレンドの一つが、治療と診断のコンバージェンス(融合)です。ここでは、極 力短時間に適切な患者に適切な薬を適切な用量で投与するという仕事をこなすための解決策として、特に電子式バイオチップが重要な役割を果たすようになるでしょう。医 師が診療所で特定の個人に適った診療を行うためには、小型で費用効果が高く、扱いやすい診断解析デバイスが必要です。例えば、う つ病に苦しむ患者一人のために適切な薬を見つけるのに今なお平均6カ月もかかっている事実を踏まえると、バイオチップが活躍できるチャンスは明白です。バイオチップなどの新しい診断法は、近い将来に、医 療管理を大いに選択的かつ効率的にすることができるでしょう。

インフィニオンのバイオチップ活動に関する詳細は、下記URLをご参照ください:
http://www.infineon.com/bioscience

備考:「Flow-Thru Chip」と「4D Array System」はメトリジェニックス社(MetriGenix, Inc.)の登録商標です。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています

Information Number

INFXX200303.060E (D)

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  • Dr. Thomas Klaue. Vice President Business Development, Infineon Technologies AG.
    Dr. Thomas Klaue. Vice President Business Development, Infineon Technologies AG.
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  • The Flow-Thru-Chip(TM) is a "Mini-Lab" on silicon. A special manufacturing process developed by Infineon is used to etch about a million pores with a diameter of one tenth of a human hair within a surface of only one square centimeter. Flow-Thru-Chip(TM) is a trademark of MetriGenix, Inc.
    The Flow-Thru-Chip(TM) is a "Mini-Lab" on silicon. A special manufacturing process developed by Infineon is used to etch about a million pores with a diameter of one tenth of a human hair within a surface of only one square centimeter. Flow-Thru-Chip(TM) is a trademark of MetriGenix, Inc.
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  • The Flow-Thru-Chip(TM) is a "Mini-Lab" on silicon. With a surface of only one square centimeter the chip can simultaneously analyze the reaction of up to 400 known genes to a specific substance. The chip is safely contained in a cartridge through which the substances to be analyzed are delivered to the chip. Flow-Thru Chip(TM) is a trademark of MetriGenix, Inc.
    The Flow-Thru-Chip(TM) is a "Mini-Lab" on silicon. With a surface of only one square centimeter the chip can simultaneously analyze the reaction of up to 400 known genes to a specific substance. The chip is safely contained in a cartridge through which the substances to be analyzed are delivered to the chip. Flow-Thru Chip(TM) is a trademark of MetriGenix, Inc.
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  • The U.S. company MetriGenix together with Infineon developed the complete Flow-Thru Chip? solution. This consists of Flow-Thru-Chips, a hybridization unit (left) and an evaluation apparatus (right) with an integrated high-sensitivity camera. Flow-Thru Chip is a trademark of MetriGenix, Inc.
    The U.S. company MetriGenix together with Infineon developed the complete Flow-Thru Chip? solution. This consists of Flow-Thru-Chips, a hybridization unit (left) and an evaluation apparatus (right) with an integrated high-sensitivity camera. Flow-Thru Chip is a trademark of MetriGenix, Inc.
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