インフィニオンが次世代電子デバイスへの有機材料の適用に関する最初の研究成果を発表

2003/12/10 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズの研究陣は、多様な有機材料を分析し、将来的に高品質のシリコンベースのメモリや有機トランジスタおよび回路の製造に適用できる可能性がある広範なプロセスを開発しています。 在来のデポジット法およびフォトリソグラフィによるパターン転写技術を利用すれば、これらのデバイスをコスト効率よく生産することが可能です。イ ンフィニオンの研究陣は米国のワシントンDCで開催された2003年度IEEE国際電子デバイス会議(IEDM、会期:12月8日~10日)で、これらの基礎技術に関する幾つかの論文を発表しました。有 機材料をベースにしたトランジスタ、回路およびメモリが、性能、信頼性および温度挙動に関して示した有望な結果は、将来の電子デバイスに対する有機材料の適用を目指す道程の重要な一里塚となります。

有機材料を用いた電子デバイスは、集積密度とクロック周波数の点では、シリコンベースの集積化に対する直接的な代替とはならないかもしれませんが、超 低コストの生産と高度な柔軟性を達成できる可能性を秘めています。シリコンなどの結晶半導体を用いたIC生産の場合、何週間もかかる、高価な機器を使った多数の連続プロセスを必要としますが、有 機エレクトロニクスはそれより大幅に低いコストで生産できます。従って、有機エレクトロニクスは高い性能が求められない、コストに敏感な用途への応用が考えられます。

インフィニオンは、これまで達成されたことのないレベルの性能を備えた、幾つかの有機デバイスを発表しました。インフィニオンの研究陣が作った薄膜トランジスタ(TFT)は、アクティブ・レ イヤとして有機半導体分子を用いており、1cm2/Vsを超える電荷移動度を達成しています。これらの有機トランジスタは、シリコンベースのデバイスと同様、幾つかの層から成り立っています。すなわち、基板、ゲ ート電極、ゲート絶縁膜、ソースおよびドレイン電極、有機半導体(例えば、ペンタセンや置換オリゴチオフェン)、保護パッシベーション層などで構成されます。インフィニオンはIEDMで、有 機および無機の混成構造と、純粋の有機チップとの両方の開発について報告しました。インフィニオンのコーポレート・リサーチ部門のクリストフ・クッター上席副社長は、「 インフィニオンの最新の研究結果が示しているのは、シリコンベースのチップが不適当と思われる、大量生産され、低コストが極めて重視される用途に、有機ベースICが有望だということです。2 003年度IEDMで発表された性能と信頼性における進歩は、新しい電子デバイスに有機材料を適用するための研究を継続すよう、我々を勇気づけるものです」と、語りました。

高密度不揮発性メモリに有望な有機材料
不揮発性メモリ用として、これまで多くの有機材料や無機材料が分析されてきました。有機メモリは、極めて小さいセル寸法で、単 純な集積化と単純なセル構造を実現する可能性を持っています。無機材料と対照的に、有機メモリ・レイヤの特性は、分子構造を選択的に変えることで、きめ細かく調整できます。しかも有機材料は、多くの場合、真 空蒸着にも、低コストのスピン・コーティング(輪転機による塗布)にも適しています。

インフィニオンの研究陣は、新規の有機メモリ材料を適用した不揮発性メモリについて、セル構造と、その要件を述べました。この技術で作られたメモリセルは、すでに有望な信頼性データを示しています。コ ンダクタンス・スイッチング作用を示す有機メモリ材料に関して、今回初めて、1年以上の記憶保持データが示されました。更なる研究では、この材料は寸法20nm以下にまで微細化できる可能性が示されています。こ の有機記憶材料は、不揮発性メモリ用として魅力的な候補です。

革新的なDRAM集積方式を可能にするポリマー材料
伝統的なシリコン集積方式は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコンなど、少数の材料をベースとしています。これらの材料しか使わないとすると、集積の選択肢は限定されます。在 来の半導体プロセスでも使われているレジストは、第四の選択肢となる可能性はありますが、高温処理ができないという制約があります。インフィニオンは、相反する長所を兼備した、熱 的に安定な新しい有機ポリマーを共同開発し、この有機材料がDRAMトレンチ集積スキームに使用できることを実証しました。この新集積方式では、理想的なギャップフィル特性、良好な平坦性、4 50℃を超える高温安定性を備えた、ある有機スピンオン・ポリマーの改良版を用いています。140nmルールで製造された256M DDR DRAMチップの試験用サンプルは、高い歩留まりを示しています。こ の方式は、新開発材料を用いた前工程(FEOL)集積スキームの実用性を実証しています。さらに、この実証された集積スキームは、DRAMトレンチ構造を70nm以下の世代にまで拡張することを可能にします。

低電圧で動作する分子薄膜トランジスタ
有機エレクトロニクスがターゲットとしているのは、高い性能が求められない、コストに敏感なアプリケーションです。伝統的な有機薄膜トランジスタ(TFT)の 最大の問題の一つは動作電圧が高いことで、しばしば20Vを超えます。有機TFT ICの動作電圧を下げて消費電力を低減するには、新しい非常に薄いゲート絶縁膜が必要です。

インフィニオンは、高電子移動度の有機半導体(ペンタセン)と、非常に薄い(2.5nm)SAM(自己組織化単分子膜)ゲート絶縁膜を使用した、新しい分子TFTを開発しました。有 機トランジスタ用ゲート絶縁膜の分野におけるこのブレークスルーによって、トランジスタの動作電圧を1Vまで下げることが実現され、サブスレショルドのスイング(揺れ)は 100mV/decadeにまで低減しました。チャネル長5μmのトランジスタについて測定された相互コンダクタンスは0.01μS/μmでした。この値は、こ れまでに報告された有機半導体デバイスの相互コンダクタンスとして最大です。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCPR200312.021