インフィニオンテクノロジーズが4バンドVDSLチップセットを発表

先進通信システム用ICの先導プロバイダである独インフィニオンテクノロジーズは本日、4バンドVDSLファミリとして、2種類のチップセットを発表しました。「4bVDSL」チップセットは、標 準に完全準拠したATM over VDSLをサポートします。「PoVDSL」チップセットは、業界初のPacket over VDSLソリューションです。これらのチップセットは、DSLAM（ DSLアクセス多重装置）、スイッチ、CPE（顧客構内装置）などの用途に最適化されています。インフィニオンは、3月4～6日にコロラド州デンバーで開催されるFS-VDSL会議で、業 界初の機能を持つ両チップセットについて報告する予定です。

インフィニオンのクリスティアン・ヴォルフ（有線通信グループ担当副社長兼アクセス事業ユニット・ゼネラルマネージャ）は、「同じ銅線上で高速インターネットアクセス、高品質ビデオストリーミング、音 声の3つを統合したサービスを提供するという市場ニーズに応えるため、通信会社は、真のBroadband over Copperソリューションを熱心に探してきました。新しい4バンドVDSLファミリは、技 術のブレークスルーを実現した製品です。標準に準拠したVDSLソリューションが商業ベースで提供されるのは初めてで、ATM over VDSLとPacket over VDSLがサポートされるのも初めてです。それに加え、Packet over VDSLソリューションの中で、インフィニオンの定評あるEthernet over VDSL技術「10BaseS」が、標 準に準拠した4バンドVDSLと統合されたことは、Ethernetを銅線ローカルループに適合させていくための重要ステップとなります」と、語りました。

標準に基づいた4バンドVDSLの発展は、特定の設計に制約されない、マルチベンダソリューションへの開かれた環境を確立するでしょう。新たに採択されたVDSL標準は、回 線あたり最大3本のビデオチャネルと、高速インターネットアクセスを可能にし、従来の音声サービスはそのまま維持されます。

4バンドVDSLチップセット・ファミリは、インフィニオンが2バンドVDSLチップセットの世界的な設置と大規模なテレコムフィールド試験で培った膨大な経験を基に開発されました。新ファミリは、E TSI、ANSIおよび最近拡充されたITU VDSLの各標準に完全準拠しています。「PoVDSL」チップセットは、ITU標準の定義をクリアしているうえ、パ ケット転送インターフェイス上に完全なイーサーネットMIIレイヤ機能を備えています。

インフィニオンの4バンドVDSLソリューションには、必要なすべての機能がチップセットに集積化されているので、外付け部品を大幅に減らせます。その結果、設計が簡単になり、シ ステム全体の省スペース化とコスト低減がはかれます。

4バンドVDSLチップセット・ファミリは、インフィニオンの既存の2バンド・チップセットをベースとして設計され、下位互換性を備えています。「4bVDSL」と「PoVDSL」も、2バンド・タ イプと同様、FDD（Frequency Division Duplexing）技術を使用し、広く用いられているQAM（Quadrature Amplitude Modulation）技 術をベースにしています。新ファミリは、非対称方式のFSAN Plan 998と、対称方式の FSAN Plan 997の両方をサポートしており、標準および非標準の2、3、4 バンド周波数割付けスキーマに対応できます。

4バンドVDSLチップセットについて
このチップセットは、エンベデット・メモリ、マイクロプロセッサ、アンチエイリアシング・フィルタ、利得アンプ、DCXO（Digital Controlled Crystal Oscillator）、A/D変換、D/A変換などの機能をすべて搭載した、オール・イン・ワン型の回路となっています。両チップセットとも、高速チャネルと低速チャネル、スリープ・モードとウェイクアップ・モ ード、パワー・バックオフ、ブラインド・アクイジション、チャネル・イコライゼーションの各機能を完全サポートします。コントローラと柔軟なソフトウェアが組み込まれているので、モ デムをスタンドアロンVDSL PHY（物理層）として動作させることも可能です。

ATMベースのチップセット「4bVDSL」は、デュアル・レイテンシUTOPIAインターフェイスに加えてPCMインターフェイスを備え、同 じツイストペア線を使用して最大4本のE1/T1/J1回線を伝送することが可能です。PCM伝送は、ATMトラフィックとパラレルに行われます。「4bVDSL」は、RFC-1483モードでも動作できるので、 ATM上でイーサーネット・トラフィックのカプセル化が可能です。

「PoVDSL」チップセットは、MIIインターフェイス（IEEE 802.3準拠）を備え、ITU-T G.993.1標準に準拠したPTM-TC（HDLC）をサポートします。PCM転送は、P TMトラフィックとパラレルに行われます。「PoVDSL」により、インフィニオンのEthernetサービスの幅が一段と広がります。用途に応じて標準準拠の2、3、4 バンドのPHYまたはMACとして使い分けることができます。さらに、何10万本にものぼる既存の「10BaseS」VDSLポートを、下位互換性によってサポートできます。

4バンドVDSLチップセット・ファミリの評価用サンプルは、2002年第2四半期から供給開始の予定です。また、世界中の有力システムベンダに採用されている既存の2バンドATM VDSLチップセットについては、引き続き商業ベースの供給を行います。

インフィニオンテクノロジーズ（Infineon Technologies AG）は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度（9月決算）の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。