インフィニオンがシステム・イン・パッケージへ向けてチップ・スタッキングの新技術「SOLID」を開発

2002/08/12 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、ICチップを積み重ねて接続およびパッケージングを行うための、革新的で費用効果の高い方法を開発したと発表しました。この成果は、「システム・イン・パッケージ」ソ リューションへ向けた大きな前進です。ハンダ付け法を用いた新しいチップ・スタッキング技術「SOLID(Solid-Liquid Interdiffusion=固体液体相互拡散)」は、極 めてコンパクトで低コストのシステム・ソリューションの実現を可能にし、新しいIC製品の市場到達時間の短縮を促進します。

チップ・スタッキング技術(もしくは3D集積技術)は、先進電子システム設計の効率および信頼性の向上をはかりながら高い集積レベルを達成するための代替的な方法です。シ ステムを形成するチップ相互間の密接な接続を実現するため、従来から、いくつかの方法が採用されています。チップを積み重ねるために従来から用いられてきた接着技術やワイヤボンディング技術にくらべ、イ ンフィニオンの新技術「SOLID」は、パッケージ内の電気接続部のサイズを大幅に縮小し、動作効率の向上と全体コストの低減に寄与します。

インフィニオンのゼンケ・メアガルト(技術統括執行役員=CTO)は、「インフィニオンは、チップの設計と組立において、2つの相補的な技術の組み合わせを図っています。システム・オン・チップは、多 くの機能を単一のチップダイに集積する技術です。システム・イン・パッケージは、複数のチップを接続して単一のコンパクトなソリューションにまとめる技術です。両方のアプローチを活用することによって、幅 広いコストおよび性能パラメータの中から最適なソリューションを提供することができます」と述べました。

個別デバイスの最適性能を得るために異なるチッププロセス技術や回路アーキテクチャを使用する場合などは、オンチップ集積化は物理的に不可能だったり、コスト的に適さないことがしばしばあります。「 SOLID」技術は、このような異種チップの接続に関する問題を解決し、チップ同士の高速通信と緊密な統合を実現します。スタッキング技術は、ミクスト技術(ロジック機能、メモリ機能、センサ、バイポーラ・プ ロセス、CMOS、異世代、ウエハ・サイズなど)の組み合わせによる性能の最適化を可能にすると同時に、個別チップに対する標準プロセスの適用によってコストを低減します。

インフィニオンでは先ず、この3D集積技術を、チップカード用のコントローラに適用します。スマートカード、無線通信、各種の携帯機器など、実装スペースや電力の制約があるシステムでは、高 集積のシングルチップシステムを回路基板上で接続することは、技術的あるいは経済的に無理なことがあります。複雑なICは、時に1,000以上ものピンないしボールを備えたパッケージにハウジングされ、チ ップを動作させるために、これらを電気的に接続しなければなりません。多層基板上の他のデバイスと接続を行うためのレイアウト作業は、非常に手間がかかります。さらに、GHzレベルの周波数では、長 いトラックや大きいハンダ接合部に起因する寄生作用によって、電気信号の品質が損なわれることがあります。3Dチップ技術の非常に短い接続距離と狭い電極ピッチは、多くのアプリケーションにおいて、基 板スペースの縮小、信号干渉の低減、コストの低減、消費電力の低減、高速化、基板レイアウトの簡素化など、幅広い利点をもたらします。

SOLIDについて 
「SOLID(Solid-Liquid Interdiffusion)」は、個別のチップを積み重ね、恒久的に接合するための、新しいハンダ接続法です。たとえば、マ イクロコントローラとメモリのシステム・イン・パッケージを作る場合、2つのチップのうち一方(フリップ・チップ)を裏返しにして、他方と対面配置します。メタリゼーションのため、各 チップの表面に薄い銅の層が形成されます。この銅メタリゼーション層は、チップ同士を接続するための小さい内部電極パッド(10μm)を備えています。さらに、下になるチップの端には、組 み合わされたチップをワイヤボンディングによってパッケージと接合するためのボンドパッドが設けられます。この銅メタリゼーション層は、ジャンパや他の受動素子(コイル、ストリップ、遅延線など)の 集積化にも利用できます。銅メタリゼーション層を形成した後、非常に薄いスズのハンダ層(3μm)が2つのチップの間に形成されます。2つのチップは、3 気圧下で270℃から300℃の低温プロセスを用いてハンダ付けされ、恒久的に接続されます。プロセス温度が300℃以下と比較的低温であるにもかかわらず、生成される合金は融点が高く、非常な高温( 600℃以上)にも耐えます。

「SOLID」技術では、チップは銅メタリゼーション層上の内部電極パッドを介して電気的に接続されます。電極ピッチは、BGAパッケージのボール(150μm)や 在来のスタッキング法のボンドパッド(100μm)と比較して、非常に狭くなります(20μm)。寄生誘導や寄生容量が極めて低レベルなので、高い信号速度が可能となり、同時に、高い信号品質が保持されます。

縦方向にチップを積み重ねる場合、チップカードのような特定のアプリケーションでは、所定の厚さを超えてはなりません。このため、インフィニオンでは、対 面配置に用いられるウエハの厚さを現行の120μmから60μmへ低減しました。この「チップ・サンドイッチ」構造は標準のチップハウジングに適合し、ハウジングに要する材料およびコストは50%節減されます。「 SOLID」技術は原理的には何層かを設けることが可能ですが、インフィニオンでは先ず、2個のチップないし2枚のウエハの重層化を行います。

インフィニオンでは、「SOLID」技術をベースとした最初の製品として、チップカード用のコントローラの生産を来年に予定しています。3D集積技術を採用することで、新コントローラは、在 来の製品に比べてメモリ容量をかなり大きくできるなど、明白な長所を持てるはずです。「SOLID」技術は、移動通信アプリケーションにも有望です。個 別の高信頼デバイスをコンパクトで電力効率の良いシステムにまとめあげることを要求される多くの組込み制御アプリケーションが、この革新的なチップ・スタッキング技術の市場となる可能性を秘めています。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCC200208.133e

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  • Infineon Presents SOLID, A World First 3D Chip Integration Technology - "Chip-Sandwich" Offers Way Out of the Wiring Crisis
    Infineon Presents SOLID, A World First 3D Chip Integration Technology - "Chip-Sandwich" Offers Way Out of the Wiring Crisis
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