インフィニオンが標準CMOS技術による世界最高速の6ビット全並列型ADC回路を開発

2004/06/21 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、6月15~19日にハワイのホノルルで開かれた2004年度VLSI技術および回路シンポジウムにおいて、最先端の半導体技術に関するいくつかの発表を行いました。そ の一つが、標準CMOS技術によるサンプリング速度4GS/sの6ビット全並列型(フラッシュ型)アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)です。革新的なチップ設計により、標 準CMOSプロセスで製造された6ビットADCとして最高速度を達成し、容易にコスト効率よく他の回路と集積化できます。

ハードディスク装置のリードチャネルなど、今日の多様なシリアル通信アプリケーションにおける高いデータ伝送速度は、デジタル信号処理回路に依存しています。これらの回路は、シ ステムのアナログ部とデジタル部をインターフェイスするため、高速ADCを必要とします。ADCとデジタル信号プロセッサ(DSP)を低コストで生産し、さらにモノリシック集積化を可能にするため、こ れらの回路を標準CMOS技術で実現することが望まれます。

VLSI 2004においてインフィニオンは、0.13μm標準CMOS技術で実現したサンプリング速度4GS/sの高性能6ビット全並列型ADC(出力8ビット)を発表しました。入 力オフセット電圧が比較的大きい255個の小面積コンパレータを使用し、その出力信号を、フォールトトレラントなThermometer-to-Binaryコンバータ( 温度計のような直線目盛から二進数への変換器)によって平均化しています。また、クロック供給用にオンチップの低ジッタVCO(電圧制御型発振器)を使用しています。供給電圧1.5Vの単一電源で動作し、消 費電流は990mWです。

従来のnビット全並列型ADCでは、コンパレータ部の出力に完璧なバブルフリーの(温度計における気泡のような誤差要因が無い)Thermometerコードを発生するため、入 力オフセット電圧が小さい2n-1個だけのコンパレータを使用しています。要求される低い入力オフセット電圧を確保するには、コンパレータ相互間のデバイスミスマッチ作用を低減するため、大 面積の能動デバイス領域を使用しなければなりません。

こうした従来のアプローチと対照的に、直線性6ビットの新しいインフィニオンADCは、能動デバイス領域の小さい255個のコンパレータを使用しています。その結果、入力オフセット電圧は現実に高くなり、コ ンパレータ部の出力にはバブルフリーなThermometerコードは得られませんが、小型化されたコンパレータによって動作速度が最大になるよう最適化をはかることができます。コ ンパレータ部の出力におけるデバイスのミスマッチに関連した誤差は、最高速度で実行可能なデジタル領域での平均化によって補償できます。コンパレータ出力は、分 解能8ビットの出力を備えたフォールトトレラントなThermometer-to-Binaryコンバータに接続されます。

高速ADC(サンプリング速度1GS/s以上)では、所望の分解能を得るために、クロックの発生と分配が重要な課題となります。クロック信号の不安定性(ジッタ)は システムの分解能の低下に直接的につながるので、ジッタをできるだけ低く抑えなければなりません。入力周波数1GHzにおいて、6ビットADCは、ジッタ1ps以下でクロックする必要があります。このため、新 しいADCは、低ジッタのLCオシレータをオンチップで内蔵しています。このオシレータは、周波数4GHzのコンプリメンタリな正弦波信号を供給します。

新しい全並列型ADCの測定結果では、所期の機能が完全に達成されていることが明示されました。標準のデジタルトランジスタだけしか使用していないので、アナログプロセスを追加することなく、A DCをDSPの中に容易にモノリシック集積化できます。さらに、高周波クロック信号はオンチップで発生され、単一電源の1.5V供給電圧しか使用していません。ADCとDSPを組み合わせることで、デ ジタル較正が容易に実現できるので、システムの分解能向上をはかることができます。今回発表したADC回路は、次 世代通信機器の要求に適合した強力なミクストシグナルデバイスを実現する上で重要な一里塚となります。

VLSI 2004シンポジウムにおけるインフィニオンのその他の発表

  • ブートストラップ型書き込みドライバを備えた16MビットMRAM
  • サブ40nmのトライゲートチャージトラッピング型不揮発性メモリセル
  • 垂直キャパシタ構造を持つ高スケーラビリティの小型3次元 FeRAMセル
  • 64MビットFeRAM用の面積0.61平方μmのダブルプラグチェーンセル構造
  • 線形アナログCMOS回路における1/fノイズリダクション用の回路設計アプローチ
  • 0.13μm CMOS技術によるISM/WLAN用の17GHzフロントエンド回路
  • 将来のCMOSへ向けたマルチゲート型トランジスタとメモリセル(招待論文

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCPR200406.068