インフィニオンが年次株主総会:厳しい市場環境下で競争力改善にむけて多面的取り組み

2002/01/22 | ビジネス&フィナンシャルプレス

2000会計年度(9月30日決算)に好決算をみせた独インフィニオンテクノロジーズは、2001会計年度には一転して、史上最悪の半導体不況に世界景気悪化が加わった影響を多大に受けました。特 に中軸であるメモリ製品と通信製品の市場で価格下落と需要減退が響きました。2001年度は販売量、販売額ともに著しい低下となりました。ただし、非 メモリ製品は厳しい市場環境の中で販売量が10パーセントの伸びをみせて、健闘しました。株式上場後2回目となる定例株主総会の場でインフィニオンテクノロジーズのウルリッヒ・シューマッハ社長兼最高経営責任者( CEO)は、「半導体市場が未曽有の逆風に見舞われた中で、当社は経費削減計画「インパクト」(これはすでに成果をあげています)や投資計画縮小など多様な手段で、果敢にそれに対応しました。イ ンフィニオンは健全な資金力をバックに、現在の危機を乗り切り、体力を強化できる力を十分に持っています」と、表明しました。

2001暦年は市場規模が推定30パーセント以上の落ち込みとなりましたが、現在、メモリチップや移動通信では明るい兆候も見え始めています。し かし持続的な市場回復の兆しはまだはっきりとは認められません。

シューマッハ社長は、「2001会計年度には厳しい環境下にあって、当社は通信、自動車エレクトロニクス、メモリ製品などの中核分野で市場シェアを伸ばすことに成功し、そ れらのセグメントでは市場リーダーにランクされています。技術、戦略、企業運営のいずれの面からみても、当社はそれらのダイナミックなターゲット市場で来るべき景気回復への備えが十分にできています」と、語 りました。

また2001年度ドイツ・イノベーション賞の受賞は、インフィニオンが世界の技術リーダーの一角を占めていることを立証しました。受賞した2種のパワー半導体は、たとえば家電製品の消費電力を30%も 低減できるものです。「これで当社は明白な技術的リードを確立しました。その成功はひとえに、インフィニオンを常に技術開発の先駆者にしようとする社員一同の傑出した献身の成果です」と、シ ューマッハ社長はコメントしました。

2001会計年度業績
2001年度は半導体市場の落ち込みの結果、売上高は前年度比22%減の56億7,000万ユーロにとどまりました。EBIT(利払い前・税引き前利益)は 前年度の16億7,000万ユーロの黒字から10億2,000万ユーロの赤字に転じました。純欠損額は5億9,100万ユーロで、前年度の11億3,000万ユーロの純利益から暗転しました。1 株あたり損益は前年同期の1.83ユーロの利益から0.92ユーロの赤字に後退しました。シューマッハ社長によると、この数字はメモリ製品を中心とする価格急落や在庫調整、多 くの非メモリ製品で生じた設備過剰に伴う経費が圧迫要因となったものです。

第1四半期業績
現会計年度第1四半期(2001年10~12月)決算では、売上高が約10億ユーロと前四半期に比べて5パーセント減となりました。純欠損額は3億3,100万ユーロで、1 株あたり欠損は0.48ユーロでした。メモリチップの力強い需要増と移動通信分野の緩やかな回復がプラス材料でしたが、伝統的な通信ビジネスで需要減が続いて、その減少分を十分に補い切れませんでした。E BITでは、メモリ市場の激しい競争に加えて、非メモリ分野でも価格圧力の増大が負担になりました。

経費削減計画「インパクト」
半導体史上の最悪期を乗り切るためのインフィニオンの決意を示すものが、2001年7月に導入した経費削減計画「インパクト」です。この計画は、インフィニオンの競争力維持を目的としています。シ ューマッハ社長によると、インパクト導入後5カ月足らずで、すでに5億ユーロを超える流動性改善効果をあげました。購買、ITサービス、間接費、営業とマーケティング、ロ ジスティクスなどで大きな経費削減に成功しました。削減幅の70%以上は人件費とは無関係の領域で達成したものです。

インフィニオンはまた、困難な市場環境に対応するため投資計画の調整に踏み切りました。現在、投資は主要なイノベーション、中核的な技術資産および系統的な生産性向上に絞り込まれています。そ の代表例が、ドレスデン工場での300mmウエハ生産です。一方、遺憾ながら労働力調整にも手をつけざるを得ず、世界全体で約5,000人の人員削減が必要になりました。す でに世界全体で4,400人余りの従業員と間で解雇の話がまとまっています。

戦略的な照準:通信
ターゲット市場が厳しい環境にある中で、インフィニオンは主要分野で市場地位の防衛に成功するとともに、技術とコスト面のリーダーシップを一段と強固にしました。有線通信、無 線通信、セキュリティ&チップカードICの3事業グループで構成される通信分野は売上全体に占める構成比が2001会計年度に42%に達し、前年度の31%から大きく拡大しました。競 争上の優位を広げるために、インフィニオンはテレコミュニケーション分野で買収の可能性を探っています。また柔軟性のある資金力を確保するために、総額約10億ユーロの転換社債の発行に踏み切りました。

2001会計年度に戦略的発展と未来市場へのアクセスを目指して行った買収では、ブロードバンド通信と光通信網の分野に照準を合わせました。伝 送速度40Gbpsの超高速光通信における当社の市場リーダーシップは、カタマランコミュニケーションズ社の買収により一層強化されました。有線通信では、イ ンターネット活用の先進的なソリューションの拡充をはじめ、光通信、高速ブロードバンド通信およびインターネット接続の分野でインフィニオンは依然として技術のパイオニアとしての地位を保持しています。

移動通信分野では、インフィニオンはGSM方式のシステムサプライヤのリーダーであり、また、次 世代移動通信システムGPRSやUMTSで急成長を遂げるためにますます重要性を増している携帯電話向け総合ソリューションを提供できる数少ないプロバイダのひとつです。また、短 距離エリアの高速無線通信技術として台頭しているBluetooth市場の革新的な先導者でもあります。

さらに、スマートカードICでもインフィニオンは世界的な市場リーダーとして、インターネット接続、エレクトロニックバンキング、eコマースやmコマースなどの方面で技術トップの地位にあります。そ の切り札が革新的なセキュリティ・認証ソリューションで、これはインフィニオンがオンライン・セキュリティ、認証システム(個人ID)、生体認証などの新しい成長市場を開拓するための武器となります。セ キュリティ標準でのインフィニオンの重要な立場を裏付けた典型的な例が、2001年11月に米国国防総省から獲得した、セキュリティ・スマートカードをベースにした職員用身分証明カードの大口注文です。

戦略的な照準:自動車および産業
自動車&産業グループにとっては2001会計年度は成功の年といえ、約25パーセントの売上増を達成しました。この数字は、インフィニオンが自動車および産業用エレクトロニクスで欧州トップ、 世界第2位の座にあることを裏付けるものです。インフィニオンは成長するテレマティックス市場向け包括システムのノウハウと総合ソリューションを持っており、優位に立っています。その豊富な技術資産をバックに、 イ ンフィニオンはさまざまな事業グループが培ったノウハウを融合できるのが強みです。たとえば、移動通信や自動車エレクトロニクスなどでのノウハウをインフォテインメントやナビゲーション、マ ルチメディアシステムなどの用途に活かすことができます。

戦略的な照準:メモリ製品
メモリ製品グループの売上全体に占める割合は、2001会計年度には28パーセントに低下しましたが、技術とコスト面の世界的リーダーとして、インフィニオンはこの分野では非常に強い立場にあります。 意欲的な構造幅縮小(シュリンクロードマップ)に加えて、300mmウエハ技術がその要となっています。これにより、インフィニオンは、世界の半導体業界の中で、サ イズが最も大きいウエハ上で最小のチップ製造を行えるメーカーとして君臨しています。この技術はチップの製造コストを約50%も低減します。このコスト優位をさらに系統的に強化して、競 争上の優位を一段と広げる方針です。同時に、インフィニオンは急成長を遂げている、市場変動が少ないサーバやネットワーク・ストレージ市場への取り組みも強化しています。

2002会計年度の見通し
経済の先行きに不透明感が強く、厳しい市場環境が続く現状では、現会計年度の数字を予測するのは困難です。シューマッハ社長は、「前向きの兆候が現れていますが、持 続的な市場回復を裏付ける十分な材料はありません。しかしながら、当社は慎重ながらも楽観的な姿勢を崩さずに、将来を見つめていきます」と、語りました。

一部のDRAMメーカーの攻撃的な価格政策によりメモリ製品市場では集約化が進みました。2002会計年度の第1四半期にメモリ価格は持ち直しましたが、まだ採算点には程遠いのが実情です。イ ンフィニオンは2002暦年前半にビット需要の増加とそれに伴う在庫水準の適正化がみられるものと予想しています。ただし、メモリ製品の本格的な価格回復が訪れるかどうかは、メモリ市場での集約化の進展や、P Cおよびインフラ市場の需要の活力次第だとみています。

移動通信については、需要落ち込みの後を受けて、2002暦年の前半に緩やかな回復に向かう兆しがみられます。とりわけ新世代の携帯電話方式であるGPRSの導入がカンフル剤となっています。世 界経済の持続的悪化が通信インフラ投資の削減を招きました。それは依然としてインフィニオンの有線通信グループにとって痛手ですが、当面は事態好転が望めない状況にあります。自動車&産業グループも、世 界経済減速のために景況が鈍りそうです。一方、セキュリティ&チップカードICグループでは、生体認証システムなどの先進的なセキュリティ・ソリューションへの需要増大を背景に、セ キュリティICやスマートカードICに長期的に大きな将来性が期待されており、また、移動通信市場の回復が見込まれることも好材料です。

シューマッハ社長は、「当社は現在の厳しい環境に持ちこたえられる十分な流動性と柔軟性のある資金力を持っています。半導体産業は中長期的には非常に有望です。半導体市場は過去40年間に年平均14% の成長を遂げてきました。今後も情報化時代の経済・社会の近代化を担う原動力となるはずです」と、見解を示しました。

年次株主総会の議題
インフィニオンは世界の半導体市場での競争力を一層強化するために、長期的に柔軟性のある資金力を確保する必要があります。半導体産業はきわめて投資集約型です。その点を踏まえて、今 回の株主総会では、新株1億7,500万株の発行による授権資本金の充実(単発的競売またはトランシュにより、2007年1月までに資本金を総額3億5,000万ユーロ増資)について株主の承認を仰ぎます。

同時に、2007年1月までにオプション債と転換社債合わせて総額40億ユーロを発行する案件も議決にかけられます。

また、シーメンス社の出資比率引き下げに伴い、監査役の人事異動も行います。今回の株主総会終了を以って、フォルカー・ユング、ハインツ・ヨアヒム・ノイビュルガー、クラウス・ワイリッヒの3名( 以上シーメンスから派遣)とエーベルハルト・ラウフが監査役から退き、代わりにシュテファン・イエンツ、カール・ハインツ・ミドゥンスキー、ペーター・ミハシュ、マルティン・ウ ィンターコルンの4名が新監査役に任命される予定です。

今回の株主総会に関するニュースリリースとプレゼンテーションについては次のURLでご覧いただけます:
http://www.infineon.com/annual2002/

留意点:当リリースには、インフィニオンの経営陣による推測や見積もりに基づく前向きの声明が含まれています。それらの予測声明に込められた期待は現実的なものであるにしても、実 現は必ずしも保証できません。予測には、現実の結果が予測声明とはっきり異なってしまうリスクや不確実性がつきものです。現実との乖離を生む可能性のある要因としては、経済・ビジネス環境の変化、為 替や金利の変動、競合する製品の登場、新しい製品やサービスの不人気、事業戦略の変更などがあげられます。インフィニオンには、今回の予測声明をアップデートする計画や考えはないことをお断りしておきます。

Information Number

INFXX200201.027