高周波通信ICで数々の世界記録を樹立:インフィニオンがISSCC 2002で研究成果を発表

2002/02/06 | マーケットニュース

今週開催されたIEEE国際固体素子回路会議(ISSCC 2202)で、独インフィニオンテクノロジーズは高周波通信ICの分野でいくつかの世界記録を発表しました。インフィニオンの技術報告書によると、 0.12μm-CMOS(金属酸化膜半導体)プロセス技術を適用して25GHzスタティック周波数デバイダ(分周回路)、25Gbpsマルチプレクサ(多重回路)、51GHz-VCO(電圧制御発振器)と いう性能新記録を達成したほか、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)プロセス技術を適用した45GHz周波数マルチプライヤ(逓倍回路)という新レコードも打ち立てました。

今回の発表は、先進的な回路設計技術と先端的な製造技術を組み合わせることで、CMOS およびSiGeプロセス技術の周波数限界突破を目指したインフィニオンの技術開発の成果といえます。こ れらの成果は、高速化と集積度向上をもたらし、最終的に、先進通信システムのコスト低減に寄与します。

インフィニオンテクノロジーズの技術統括執行役員(CTO)兼取締役ゼンケ・メアガルトは、「今回の研究成果は、半導体業界におけるインフィニオンの実力を証明するものです。当 社の世界30カ所の研究開発拠点とそこで働く5,000人余りの研究スタッフは、たゆまない技術革新の流れを生み出すために不可欠な存在です」と、語りました。

世界的な権威を持つ半導体技術会議であるISSCC(2月3から7日までサンフランシスコで開催)で発表されたインフィニオンの報告書は、現在超高速データ通信に用いられているGaAs( ガリウム砒素)やInP(インジウム燐)チップを、低コスト・高集積度・広帯域のメリットを持つSiGeチップで置き換える戦略を加速している同社の姿勢を示すものです。高 周波CMOS-ICプロセス技術の開発は、現在SiGeチップが必要とされている用途に対し、より小型・低コストのチップ製造を可能します。

高速通信向けICについて報告した当レポートの概要を以下に紹介します。今回発表されたインフィニオンの先駆的な研究成果を応用した最初の実用製品は、2003年初めまでに発表できる見通しです。

CMOS技術を用いた25GHz周波数デバイダと 25Gbpsマルチプレクサ
周波数デバイダは、高速データ通信システムの周波数合成やクロック/データ回復に使われる基幹部品です。データ・マルチプレクサは、複数のシリアル・データストリームを束ねて、1 本の高速通信データストリームに変換するのに使われます。こうした機能を実現するには、以前は多くの場合、高速化が可能なBiCMOS技術やIII-V族化合物半導体技術が用いられていました。しかしながら、生 産コスト低減、歩留まり向上、チップ集積度向上というメリットを兼ね備えるCMOS技術が適用できれば、はるかに経済的です。インフィニオンの研究陣は、0 .12μm標準CMOSプロセス技術の高速化ポテンシャルを最大限に引き出せる回路設計に挑みました。その結果、2:1スタティック周波数デバイダで最大動作周波数25GHz、2 :1マルチプレクサで最大スループット25Gbpsという新記録を樹立しました。この記録的な性能値は、高速CMOSシステム統合に新しい道を切り拓くものです。

CMOS技術を用いた51GHz-VCO
最新のデータ通信システムは40Gbps領域のスループットで動作しますが、現在、業界では80Gbpsを超える速度への取り組みがなされています。こうした超高速スループットは今日、GaAs、I nP、SiGeなどの素材をベースにしたICを使わないと達成できません。現在報告されている低コスト・高集積度CMOS-ICのスループットは、最高10Gbpsです。今回、インフィニオンの研究陣は、自 社開発した低コストの0.12μm標準 CMOSプロセス技術を用いて、データ通信システムの基幹部品のひとつであるVCOの製造に成功しました。このチップは、インダクタが集積化され、C MOSとして記録的な51GHzという周波数で動作します。しかも、消費電力は1mW(供給電圧1V時)と、世界最小値です。これらの研究成果は、高 スループットのCMOS型シンテムオンチップの開発に新しい基盤をもたらします。

SiGe 技術を用いた45GHzアクティブ周波数マルチプライヤ
周波数マルチプライヤは、通信システムの周波数変換を担います。インフィニオンが開発した45GHzのSiGeアクティブ周波数クワドルプラ(4倍周回路)は、シ リコン技術を使ったものとしては最高の高周波数を誇ります。従来のGaAsやInPベースのクワドルプラにとって代わる、低コストかつ強力な技術といえます。新 開発のクオドルプラの3dB帯域幅は24~45GHzをカバーしますが、これはCMOS型の新記録です。また、最大利得+7.3dB(44GHz動作時)を達成しています。こ の超高速マルチプライヤの将来的な用途としては、28GHzおよび38GHzのLMDS (American Local Multipoint Distribution Systems)の ような無線ブロードバンドサービス、42GHzのMVDS (European Microwave Video Distribution Systems)、40.5GHzの衛星通信システム、2 4~45GHzのポイント・ツー・ポイント・マイクロ波通信システム、無線リレーシステムなどがあげられます。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

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INFXX200202.032e