インフィニオンがEUVリソグラフィ技術を適用して次世代チップ構造を実証

2002/11/12 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、同社研究陣がEUVリソグラフィ(極紫外線露光技術)によって描画したレジスト・マスクを用いて、シ リコンウェハ上に絶縁薄膜パターンを作成することに成功したと発表しました。この研究成果は重要な一里塚であり、先進チップ金属配線の基本構造となるナノ・レベルの溝の作成にEUV露光とプラズマ・エ ッチングを適用することで、マイクロチップの極限寸法をめざす2000年代の10年間のシュリンクロードマップ(構造幅縮小)がいよいよ現実となりつつあることを示しています。

インフィニオンは、ウェハ・エッチングのためのEUVリソグラフィを、米サンディア国立研究所(本部:リバモア)で実施しました。パターンは、研究用のEUV露光装置を使って、シ プレイ社から供給された厚さ120nmの実験用レジストに描きました。同社研究陣は、これらのパターンを、解像度を落とさずに、レジストの下に置かれた絶縁薄膜に転写することに成功しました。プラズマ・エ ッチング法を用いて絶縁薄膜に刻まれた溝の幅は、約60nmにまで微細化されました。

作成されたナノ・レベルの溝は、チップ金属配線のためのベース構造となります。いわゆるダマシン技術(ダマスク刀剣の装飾のために使用された象嵌技術にちなんで名づけられた方法)では、そ の溝を金属で埋めます。次に、その埋め込み構造を覆う余分な金属をCMP(化学機械研磨)によってすべて除去することにより、微細な金属配線が出来上がります。こうしたできた金属配線は、先 進的なICの高速インターコネクト用に利用されています。

インフィニオン研究陣の成果は、EUV薄膜イメージングと集積化の実現可能性を実証するものであり、50nm以下の構造へ向けての重要な一歩を記します。これにより、65nm技術ノードに対しては、ダ マシン溝パターンを規定するためのEUV露光ツールが提供されれば、既存のプラズマ・エッチング用ツールとプロセスをパターン転写に使えることが立証されました。ITRS(国際半導体技術ロードマップ)は、こ のノードが2007年から量産段階に達すると予想しています。ITRSは、2016年までの道のりとして、将来世代のチップのために必要な技術や材料への要求をまとめたものです。しかし、いまや、半 導体メーカーのタイムスケジュールは、ITRSのスケジュールよりも切迫しています。

インフィニオンのゼンケ・メアガルト(最高技術責任者=CTO)は、「次世代リソグラフィは重要な課題であるだけに、当社は高度に洗練されたその技術の開発に多くの資源を費やしています。パ ターン規定にEUVリソグラフィを用いて、今日すでに、65nm金属配線用の基本構造を作れることが実証されたことは、2 010年代の10年間にまでおよぶ当社の意欲的なシュリンクロードマップにおける重要なステップとなります。これにより、顧客企業には、より高性能で、コスト効率がより高く、し かも超高密度のチップを提供できるようになるでしょう」と、語りました。

リソグラフィは、マイクロエレクトロニクス製品の生産に不可欠の技術です。ICの構造寸法が微細化するにつれ、リソグラフィ技術は精緻化されてきました。伝統的な光学技術は、使 用される光源の波長よりもはるかに小さい構造寸法の転写が必要となる時、その終局段階を迎えるでしょう。従って、たとえ多額の費用をかけて在来技術の向上をはかったとしても、現 行の光学手法では物理的限界に突きあたると考えられます。それは、次世代チップの課題に応えるには、別の技術が開発されなくてはならないことを意味します。

構造寸法60nmないしそれ以下のチップ世代を製造するためのリソグラフィ・ツールの開発が、目下、精力的に進められています。EUVリソグラフィ技術はその有力候補であり、伝 統的な光源よりはるかに短い、波長13.5nmの極紫外線を使用します。

AMD、IBM、インフィニオン、インテル、マイクロンおよびモトローラの各社が結成した半導体チップメーカーのコンソーシアム「EUV-LLC」は、サ ンディア国立研究所を含むいくつかの米国の国立研究所でEUVリソグラフィ技術の共同開発を進めています。レジストからその下に置かれたシリコンウェハ層にパターンを転写するためのプラズマ・エッチング処理は、ミ ュンヘンのインフィニオン研究開発部門の試験施設「NanoLab」で、今日の最先端の半導体製造装置を用いて、それに何らの変更を加えずに、実施されました。なお、当リリースで報告された当研究成果は、ド イツ連邦教育研究省が後援しているプロジェクトに基づくものです。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

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INFCPR200211.020e

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  • Infineon Demonstrates Next Generation Chip Structures: A First Step Towards Manufacturing Future Chip Features with Next Generation Lithography
    Infineon Demonstrates Next Generation Chip Structures: A First Step Towards Manufacturing Future Chip Features with Next Generation Lithography
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