インフィニオンテクノロジーズが世界初のSiCショットキダイオードを発売

2001/02/05 | マーケットニュース

独インフィニオンテクノロジーズは、半導体メーカーとして世界で初めて、シリコンカーバイド(SiC)をベースとしたショットキダイオードを発売します。SiCショットキダイオードは、S i技術やGaAs技術による従来のパワーダイオードと比較して、スイッチング損失を大幅に低減し、スイッチング周波数を高めることを可能にします。さらに、S iショットキダイオードよりも大幅に高い動作電圧範囲をカバーできます。新しいSiCショットキダイオードによって、スイッチング周波数を高め、小型で高信頼なスイッチング電源を実現することが可能となります。例 えば、パソコン、サーバ、携帯電話基地局などの電源に好適です。ダイオードのスイッチング損失が低いため、複雑な共振スイッチング回路やスナバを使用することなく、スイッチング周波数を高めることができます。

SiCショットキダイオードを適用することによって、スイッチング電源のシステムコストを低減することができます。ダイオードのスイッチング周波数を高めることができるので、小型で安価な受動部品( インダクタ、コンデンサなど)が使用できます。さらに、スイッチング電流が下がり、全体のスイッチング損失も下がるので、スイッチとしてのパワーMOSFETも、小型で廉価なものを使用できます。こ うしたことから、スイッチング電源の小型化と高信頼化がはかられます。

シリコンカーバイド(SiC)は、高電圧パワー半導体にとって理想的な素材です。ショットキバリアが高い、降伏電界強度が10倍、銅に匹敵する熱伝導率などの特性を持っています。この結果、漏 れ電流が低減され、オン抵抗が下がり、高い電流密度が得られます。ショットキダイオードで実現可能な阻止電圧は、Siでは約200Vまで、GaAsでは約250Vまでなのに対し、S iCでは300Vから3,500Vの範囲をカバーすることが可能です。スイッチング電源や力率改善回路に対して、高電圧化の新しい可能性を提供します。

インフィニオンテクノロジーズのラインハルト・プロス(自動車&産業事業部シニアバイスプレシデント兼ゼネラルマネージャ)は、「インフィニオンのパワー半導体分野における広範な経験と、先 進的なプロセス技術が、新ダイオード開発の基盤となりました。このダイオードは、高性能スイッチング電源分野に対し、すぐれた小型化ソリューションを提供します。インフィニオンのSiC技術により、ほ とんど無損失で非常に高速なスイッチングダイオードが実現されます。システム全体として、損失が低減するだけでなく、信頼性が向上し、コストが低減します」と、語りました。

インフィニオンのSiCショットキダイオードは、600V系列として4Aと6Aの製品、300V系列として10Aと2×10Aの製品が供給可能です。外形はTO-220と、表 面実装型のTO-263があります。サンプル供給はすでに2001年1月から開始されています。量産開始は2001年4月の予定です。SiCショットキダイオードの10,000個購入時の単価は、6 00V/4A製品が3.27米ドル程度、300V/10A製品が7.20米ドル程度となる見込みです(消費税別)。インフィニオンのSiCショットキダイオードについての情報は次のURLをご参照ください:
http://www.infineon.com/sic

参考:力率改善回路とSiCショットキダイオード
能動方式の力率改善回路として、基本的に2種類のアプローチがあります。非連続電流モード(DCS=Discontinuous Current Mode)と、連続電流モード( CCM=Continuous Current Mmode)です。連続電流モードは、非常に高速のダイオードを必要としますが、多くの利点を提供します。発生する最大電流は、非連続電流モードと比較して、ほ とんど半分になります。従って、システムの受動部品およびパワースイッチは、より小型に設計できます。さらに、電磁波障害防止フィルタが小さくて済み、低負荷時にもシステムが安定になります。しかし、連 続電流モードは、従来のダイオードや超高速Siダイオードを使用した場合、逆回復によって発生する損失のために制約を受けます。これに対してSiCショットキダイオードは、逆回復を示さないので、連 続電流モードへの適用に理想的です。ダイオードの逆回復電流は、強制的にパワースイッチ(力率改善回路の構成要素のひとつ)を通して流されます。逆回復電流が無くなれば、よ り小型で安価なパワーMOSFETで済ませることができます。さらに、回路の負荷が低減されるので、システム全体の信頼性が向上します。  力率改善回路では、ダイオードの逆回復電流が、ス イッチング損失の大きな要素をなしています。ダイオードの降伏電圧を高めると、逆回復電流も増加すると考えることができます。このため、従来は、共振スナバないし補助パワースイッチを使用しない場合、最 大スイッチング周波数は100kHz以下に制限されていました。スイッチング周波数を高めることができれば、受動部品(インダクタ、コンデンサなど)の点数と寸法を低減でき、システム全体のコストが下がります。

Information Number

INFAI200102.019