VLSIシンポジウムにおいてインフィニオンがMRAMおよびFeRAMと高誘電率絶縁膜の開発成果を発表

2003/06/13 | マーケットニュース

今年度のVLSIシンポジウムでインフィニオンは、先進的な半導体技術の開発成果をまとめた論文5件を発表しました。3つの論文で、2種類の不揮発性メモリ技術、すなわち、磁性メモリ(MRAM)と 強誘電体メモリ(FeRAM)の新しい開発成果を紹介し、2つの論文で、代替素材としての高誘電率(high-k)絶縁膜を新しいプロセス技術に統合する研究の最近の成果を報告しています。各論文の表題と要約を、 以下にご紹介します。

論文13-1 - 高密度チェーン構造 FeRAMのためのビット線/プレート線リファレンス・レベル・プリチャージのスキーム
(インフィニオンと東芝の共同論文)
当論文は、チェーン構造FeRAM(Ferro-electric Random Access Memory)の チップアーキテクチャをさらに最適化する鍵となる回路的特徴を述べています。このアーキテクチャは、スタンバイ時の電力損失を超低レベルに抑えながら、小さなチップ領域で高いメモリ密度を実現可能にします。こ の新機軸の回路は、信号マージンと製品歩留まりを大幅に向上させるとともに、製品の信頼性を大きく高めます。その回路の特徴には、ゲート酸化膜のストレスを低減させるための3レベルのプレート線駆動スキームと、信 号マージン向上のための静電容量平衡スキームなどが含まれます。このFeRAM回路スキームは、東芝とインフィニオンが共同開発した32Mbチェーン構造FeRAMチップ上で実現されました。

論文2-4 - 高性能不揮発性メモリ向けの0.18μmロジック・ベースMRAM技術
(インフィニオンとIBMの共同論文)
当論文は、わずか1.4平方μmという世界最小のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)セルを用いた、128Kb MRAMの製作について述べています。この不揮発性メモリチップを、3層の銅配線層と1T1MTJ(1 Transistor, 1 Magnetic-Tunnel-Junction)アーキテクチャを用いて、 標準0.18μmロジック・ベース・プロセスで製作しました。テスト・アレイによる反復書き込みサイクルでは、6億3,000万回の書き込みサイクルにわたって劣化が生じない、卓越した耐久性を示しました。

論文16-4 - 未来の汎用メモリ向けの高速128KビットMRAMコア
(インフィニオンとIBMの共同論文)
当論文は、相補型リファレンス・セルとコンフィギュラブルな負荷デバイスを利用した、シンメトリカル高速センシング・アーキテクチャについて述べています。前 記論文で紹介された128KビットMRAM試験用チップの測定値の外挿と回路評価から、非常に高速のランダムアクセス時間(ランダム・アレイ読み取りアクセスタイム5ns、ラ ンダム書き込み動作の書き込みパルス幅5ns以下)の実現を期待できます。この結果は、MRAM技術による 1T1MTJアーキテクチャの高い性能を物語っています。

論文12A-1 - MOSFET内の反転電荷の直接測定;代替ゲート絶縁膜におけるキャリア移動度測定への適用
(インフィニオン、IBM、IMEC、ルーヴェン・カトリック大学、国際セマテック、ダルムシュタット工科大学半導体技術研究所の共同論文)
ゲート絶縁膜に代替素材を用いたMOSFETでは、スケーリング(構造幅縮小)にともなって、キャリア移動度が大幅に低下する現象が見られます。在来の測定技術を、キャリア移動度を測定し、そ の移動度が低下する原因を探るため、ゲート絶縁膜に代替素材を用いたFET(電界効果トランジスタ)に適用しても、信頼性は得られません。測定中に起きる強い電荷トラッピングが障害になるからです。
 当論文では、nチャネルFET内の真の反転電荷を測定する新しい代替手法として、反転電荷ポンピング法(Inversion Charge Pumping=ICP)を紹介しています。こ の方法により、在来のゲート酸化膜を持つFETと、二重層ゲート絶縁膜(SiO2/HfO2)を持つFETのキャリア移動度が正確に測定されました。nチャネルMOSFETにおける電荷トラッピングと純固定電荷( net fixed charge)は、キャリア移動度を大きく低下させる主因ではないことが実証されました。この新しい測定方法およびキャリア移動度と電荷トラッピングに関する測定結果は、未 来世代CMOSチップ技術に代替絶縁膜材料を適用する上で大きなステップとなります。

論文12A-3 - 高誘電率絶縁膜スタックにおけるしきい値電圧の不安定性に関する動力学:界面酸化膜の役割
(インフィニオン、IBM、IMEC、国際セマテック、ルーヴェン・カトリック大学の共同論文)
未来世代チップの構造幅縮小にともなう高い性能要件を満たすため、在来の二酸化ケイ素に代わる高誘電率(high-k)絶縁膜の研究開発に大きな努力が傾けられています。S iO2/HfO2二重層ゲート絶縁スタックでは、しきい値電圧の不安定性が見られますが、その原因は、ゲートスタックの先在欠陥のチャージとディスチャージによって説明できることがすでに示されています。
当論文では、HfO2(酸化ハフニウム)のしきい値電圧の不安定性は、HfO2バルク欠陥における電子のトラッピングとデトラッピングの動力学によって条件付けられるということを実証しています。こ の理由から、測定される不安定性のレベルは、ゲート漏れ、電界、格子温度、使用される測定手順のタイミングなどに大きく依存します。さらに、界面酸化膜の厚さも、H fO2欠陥のチャージとディスチャージのメカニズムに影響を与えることが示されました。界面酸化膜が薄くなると、電子トンネル現象による電荷トラップが、不安定性に関与してきます。将 来のCMOSプロセスに高誘電率(high-k)絶縁膜を適用する上で、しきい値電圧の不安定性が障害とならないよう、HfO2層バルクの電荷トラッピング特性をコントロールする必要があります。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFCPR200306.088