IBMとインフィニオンが現在最高のMRAM技術を発表最高密度の革新的メモリー技術を開発

2003/06/10 | マーケットニュース

IBMとインフィニオンテクノロジーズは、VLSIシンポジウムにおいて、磁気メモリー素子を高性能ロジック・ベースに統合することによって最先端のMRAM(Magnetic Random Access Memory)技術を開発したと発表しました。

今回の発表により、MRAMの製品化がさらに早まる可能性もあります。MRAMは画期的なメモリー技術であり、早 ければ2005年には現行のメモリー技術の一部を置き換えるであろうと考えられています。また、MRAMによって、照明のスイッチのようにすばやく電源を入れたり切ったりできる「インスタント・オン」コ ンピューターが実現する可能性も出てきました。

本日より6月14日まで京都で開催されているVLSIシンポジウムで、IBMとインフィニオンは、高速128KビットのMRAMコアを公開します。このMRAMコアは、0.18μmのロジック・ベ ースのプロセス技術を使って製造されており、これまでに公表されたMRAM技術では最小のサイズになります。この小さなベースによって、セル・サ イズ1.4平方μmという極小のMRAMメモリーに組み込むことが可能になりました。これは、よく目にする鉛筆の頭に付いている消しゴムの約2000万分の1という小ささです。こ の小さなセルの中の磁気構造を的確にパターン化することによって、IBMとインフィニオンの研究者は、メモリーの読み書き操作の制御に成功しました。

電荷の代わりに磁荷を使ってデータ・ビットを格納するメモリー技術であるMRAMは、ポータブル・コンピューティング製品に飛躍的な進歩をもたらす可能性を秘めています。MRAMでは、現 行の電子メモリーに比べて、より少ない消費電力で、より多くの情報を格納し、より速くその情報にアクセスできます。MRAMは、DRAM(Dynamic RAM)の容量の大きさとコストの低さ、SRAM( Static RAM)のスピード、フラッシュ・メモリーの不揮発性、といった現在一般に使用されているメモリー技術の長所を組み合わせています。MRAMでは、電源を切っても情報が保持されるため、P Cのような製品で使用すれば、ソフトウェアが「立ち上がる」のを待つ必要なく一瞬で起動するコンピューターを実現できます。

IBMのMRAM研究は、IBMが他に先駆けて開始し、その後も継続している拡張組み込みDRAMメモリーの開発を補完するものです。拡張組み込みDRAMメモリーは、現在既に製品化されており、従 来のSRAMより優れた特徴があります。

IBMリサーチのサイエンス・アンド・テクノロジー担当バイスプレジデント、T.C.チェン博士は次のように述べています:「MRAMは将来、汎用メモリー技術となる可能性を持っています。こ のたび開発された画期的技術は、MRAM技術が急速に発達しており、今後数年の間にメモリー市場全体を一変させる可能性があるということを物語っています」

インフィニオンのメモリー製品部門CTOであるヴィルヘルム・バインフォグル博士は次のように述べています:「MRAMに代表される不揮発性メモリー技術は、テクノロジー・ライフスタイル・ソ リューションで重要な役割を果たすでしょう。我々は、2004年初頭にはIBMと試作品を共同開発し、この分野におけるナンバーワンの半導体企業になりたいと考えています。I BMとインフィニオンが共同出資しているアルタス・セミコンダクターと共同で、早ければ2005年にもMRAMの生産準備を整えていきます」

MRAMのメリットの詳細
MRAMの不揮発性という特性は、大きな意味を持っています。それは、モバイル・コンピューティング・デバイスでは特に重要な働きがあります。DRAMやSRAMのようなメモリー技術では、格 納されているデータを保持するためには電力を供給し続ける必要があります。電力の供給が断たれると、メモリー内のデータはすべて失われます。たとえば、ラップトップ・コンピューターは、メ モリー内に格納されているソフトウェアのコピーを使って作業します。電源を入れると、ハードディスク・ドライブからソフトウェアの作業用コピーがメモリー内に読み込まれるので、ソ フトウェアにすばやくアクセスできるようになります。電源を切ってまた入れるたびに、このプロセスを始めから繰り返さなければなりません。MRAMを使えば、ラップトップ・コンピューターを、テ レビやラジオなどの電化製品と同じように使用できるようになります。つまり、電源を入れると一瞬のうちに起動して、前回電源を切ったときの状態に復帰します。

不揮発性は消費電力の節約にも役立ちます。MRAMでは、データを保持するのに電力を供給し続ける必要がないため、現行のランダム・アクセス・メ モリー技術に比べてはるかに消費電力が少なくてすみます。その結果、携帯電話やハンドヘルド・デバイス、ラップトップ・コンピューターなど、バッテリー駆動製品のバッテリー寿命を延ばすことができます。

MRAMの高速性は電子製品のデータ・アクセスの高速化につながり、MRAMの高密度特性は記憶容量の増大につながります。

関連画像: http://domino.research.ibm.com/comm/bios.nsf/pages/mramvlsi.html

IBMとインフィニオンのMRAM開発について
IBMリサーチは、早くも1974年には、極小の薄膜磁気構造を他に先駆けて開発しました。1980年代後半には、IBMの科学者によって、薄膜構造の「巨大磁気抵抗」効 果に関する一連の重要な発見がなされました。これらの成果を基にIBMは、世界初のハードディスク・ドライブ用超高感度GMR読み書きヘッドの開発に成功し、データ密度の劇的な増大を実現させました。I BMの科学者は、GMRの素材の多くを変更することによって、MRAMの核となる「磁気トンネル接合」の形成に成功しています。

IBMとインフィニオンは、すでに10年以上にわたって、従来のDRAM(Dynamic RAM)、ロジック、組み込みDRAMなどの技術を含む、新しいチップ技術の共同開発を続けています。2 000年11月には、共同のMRAM開発プログラムを確立しました。IBMの技術とインフィニオンの専門知識とを組み合わせて超高密度半導体メモリーの開発に取り組むことで、両社は、早 ければ2005年にはMRAMの製品化を実現できると確信しています。

IBMリサーチとマイクロエレクトロニクス部門について
IBMリサーチは、6ヵ国、8つの研究所に3,000人以上の科学者およびエンジニアを擁する世界最大のIT研究機関です。IBMはこれまでに、I T業界のどの企業よりも多くの技術革新を成し遂げています。またIBMの初期のMRAM研究は米国国防先端研究庁(U.S. Defense Advanced Research Agency: DARPA)と 共同で行われました。IBMリサーチの詳細については、 http://www.research.ibm.com でご覧いただけます。

IBMマイクロエレクトロニクスは、IBMの世界最大手のITサプライヤーとしての役割の主要な部分を担っており、最新の半導体技術、ASICとインターコネクト技術、製品、サービスを開発、製造、お よび販売しています。そのすぐれた統合ソリューションは、世界中の有名な電子製品ブランドの多くに採用されています。

IBMはチップ業界の革新者であり、様々な先進技術を生み出してきました。例えば、アルミニウムの代わりとして電力効率がより高い銅配線、高速なシリコン・オン・インシュレーター(SOI)、シ リコンゲルマニウム半導体などです。これらを含む革新によってIBMは10年連続で米国特許取得数第1位となっています。IBMマイクロエレクトロニクスの詳細については、 http://www.ibm.com/chips でご覧いただけます。

IBMはIBM Corporationの商標です。

インフィニオンについて

インフィニオンテクノロジーズ(Infineon Technologies AG)は、ドイツのミュンヘンに本社を置き、自 動車および産業分野や有線通信市場のアプリケーションへ向けた半導体およびシステムソリューション、セキュア・モバイル・ソリューション、メモリ製品などを供給しています。米国ではカリフォルニア州サンノゼ、ア ジア太平洋地域ではシンガポール、そして日本では東京を拠点として活動しています。2003会計年度(9月決算)の売上高は61億5,000万ユーロ、2003年9月末の従業員数は約32,300名でした。イ ンフィニオンは、フランクフルトとニューヨークの証券取引所に株式上場されています。

Information Number

INFMP200306.089

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